劇場公開を切望。
音楽ドキュメンタリーの大傑作
トーキング・ヘッズの
『ストップ・メイキング・センス』
ブライアン・イーノと組む
ティナ・ウェイマスとクリス・フランツはバンド内のサイドプロジェクトというスタンスでトム・トム・クラブを結成する。アルバム『おしゃべり魔女(原題:Tom Tom Club)』 (’81)もヒットし、大人気となる。『ストップ・メイキング・センス』ではこのトム・トム・クラブのコーナーが設けられていることもショーを楽しいものにしている。
また、デヴィッドのほうもソロ活動をスタートさせ、イーノとのコラボレーションアルバム『マイ・ライフ・イン・ザ・ブッシュ・オブ・ゴースツ(原題:My Life in the Bush of Ghosts)』(’81)を発表している。こちらも引き続きアフロビートを追求した傑作で高い評価を得る。
こうした、わずか3年ほどの間に凄まじいばかりの進化、変遷を遂げたバンドの姿、持てる限りの技量、知性、センス、エンターテイメント性を余すところなく示してみせたのがライヴ・ドキュメンタリーの傑作『ストップ・メイキング・センス』の凄いところだろうか。それを今回は4K版で生のライヴを目にするような鮮明さで楽しめるのだから、これは邦楽、洋楽に関係なく、全ての音楽好き必見の映像作品だと断言しておく。個人的にはそれまでの音楽ドキュメンタリー映像で話題を集めたものとしては、多くの豪華アーティストを招いて行われたザ・バンドのフェアウェル(解散)・コンサートを撮影した『ラスト・ワルツ』(’78年公開、監督マーティン・スコセッシ)があるが、そもそもの撮影手法もコンセプトも違うので比較の対象にすべきではないが、それまで自分が『ラスト・ワルツ』に対して最高の賞賛を送っていたはずなのに『ストップ・メイキング・センス』を見終わった瞬間、その感動があっさり更新されてしまったことを覚えている。それから40年が経ったということなのだが、果たして自分の中で『ストップ・メイキング・センス』に代わる感動の更新はされているだろうか?
全米では配給会社A24を通じて9月22日から劇場公開されている。11月1日現在、日本での劇場公開に関する情報は伝わってきていないのだが、遅かれ早かれ、公開は決まるだろう。信じて待ちたい。
追記:監督はアカデミー賞主要5部門を受賞した映画『羊たちの沈黙』(’91)でメガホンをとったジョナサン・デミ。彼は『ストップ・メイキング・センス』(全米映画批評家協会賞のドキュメンタリー映画賞を受賞)以外にも音楽ジャンルではニール・ヤングの『ハート・オブ・ゴールド〜孤独の旅路』『ジャーニーズ』等も制作している。
TEXT:片山 明