グラスゴー出身で
英フォーク・ロックを代表する
シンガーソングライター、
ラブ・ノークスを今再び

 左『Do You See The Lights?』(’70)、右『Do You See The Lights?(Re-Issue)』(‘08)/Rab Noakes

左『Do You See The Lights?』(’70)、右『Do You See The Lights?(Re-Issue)』(‘08)/Rab Noakes

ラブ・ノークス…。新聞やネットニュースに訃報が載るのは、やぱりそこそこ著名人だからだろう。気がつかなかった。ふと思い出し、久しぶりにPCのライブラリーに入れていた彼のアルバムを聴きながら、新しいニュースなんてないだろうけれど、ひっそりと新しいアルバムが出ていたり?…と期待を込めてネットで名前を検索したら、なんと昨年、2022年11月11日に亡くなっていたのだ。享年75。日本で彼の名前が語られるのは、全盛期の70年代においてもマニアの間でしかなかったから、訃報が知らされないのは仕方ないとはいえ、方々にメールしてみても、同好の仲間さえ関知していなかったのは、さすがに寂しかった。心の中で侘びつつ、買いそびれていたアルバムなど、追悼を兼ねて慌ててオーダーしたりして、その魅力を再確認した。この機会に紹介しておきたい。英国・スコットランドが生んだ庶民派フォークの宝とも言うべきSSW、ラブ・ノークス、今回は彼のデビュー作『ドゥー・ユー・シー・ザ・ライツ(原題:Do You See The Lights?)』(’70)を選んでみた。

スコットランド・グラスゴーを
拠点に活動を始める

ラブ・ノークス(本名はRobert Ogilvie Noakes)は1947年にスコットランドのファイフ州セント・アンドルーズで生まれている。世界的に有名な全英オープン・ゴルフが開催されたことでも知られる町で、世界遺産に登録されている古城や美しい大学街がある風光明媚なところらしい。エジンバラ、グラスゴーといった街に比較的近く、ノークスもいくつか住まいの拠点を変えているが、最終的にはグラスゴーに落ち着き、人生の大半をここで過ごしている。

いつ頃から音楽を始めたのか定かではないが(たぶんティーンエイジャー)、1963年、19歳の時にロンドンに出て、しばらく昼は公務員、夜はフォーク系のクラブで演奏するという生活をしている。時まさにスウィンギング・ロンドン、ブリティッシュロックの勃興機と言うべき、とんでもない時期なのであり、その只中のロンドンで過ごしたわけだが、ビートルズ、ストーンズ、ザ・フー、キンクス…といったバンド熱に浮かされることはなかったのか? それらをやり過ごすことなど不可能だったと思うけれど、一番自分に合った居場所としてフォーク方面に歩を向けたというところが彼らしいというか。3年ほどロンドン暮らしを続けた後、あっさりグラスゴーにもどっている。そして、地元のクラブで根気よく演奏を続けるうちにソロデビューが決まり、アルバム『ドゥー・ユー・シー・ザ・ライツ』がリリーされたのだ。

きっかけになったのは、同郷のアーチー・フィッシャー(英トラッド界の重鎮。ソロの他、実妹らと組んだフィッシャー・ファミリーでもアルバムが出ている)とバーバラ・ディクソン(トラッドからポップスまで歌う実力派。女優としても活躍。ノークスとは彼が亡くなるまで交流があった)のデュオアルバム『スルー・ザ・リーセント・イヤーズ(原題:Thro' The Recent Years)』にノークスが3曲のオリジナルを提供したことだ。そのソングライティングの才にデッカレコードが注目し、フィッシャー、ディクソンに続き、ノークスのソロデビューを決定したわけだった。

ちなみにグラスゴーはエジンバラとならびスコットランドを代表する都市で、音楽が盛んな地域でもある。グラスゴー出身のアーティストと言えば、マーク・ノップラー(ダイヤーストレイツ)、プライマルスクリーム、エディ・リーダー(フェアグラウンド・アトラクションズ)、ベル&セバスチャン、モグワイ、意外なところでマルコム&アンガス・ヤング(AC/DCでメジャーシーンに登場するのはオーストラリアだが)、なんて人がいる。そしてドノヴァン、ペンタングルのバート・ヤンシュ、アーチー・フィッシャー、ジェリー・ラファティーがいる。ハイランド(ブリテン北部)の中心にあって、古くは伝統音楽(トラッド、フォークミュージック)が盛んだが、ルーツロック系、オルタナティブ、ポストロックとさまざまなバンドを輩出している。そんな多様な音楽を受け入れ、ミックスし、新たに発信しているところなど、ノークスの音楽性にも表れているような気がする。

OKMusic編集部

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