70sアメリカンロックの
進むべき道を示したザ・バーズの
『タイトルのないアルバム』

『Untitled』(’70)/The Byrds
フォークロックの誕生
このヒットは当時人気絶頂だったフォークのディランとロックのビートルズの中間を狙ったものと思われがちだが、少し違う。アメリカ西海岸にはすでにビーチボーイズをはじめとするサーフロックが存在し、東部のブリルビルディング系ポップスも根強い人気があった。バーズのプロデューサーであり、音楽通でもあったテリー・メルチャーは、今挙げたような音楽をミックスし新しいジャンルのロックを提示して見せた。ある種、それはプロデューサーの企画ものでもあったのだが、それが結果的に“フォークロック”と呼ばれるようになったのである。
メルチャーはまだ上手に楽器演奏ができないバーズのメンバーをレコーディングから外し、レッキングクルーの面々を録音に使っている(それを僕が知ったのは後のこと…)が、当時はロックグループ以外の録音では日常茶飯事のことであり、メルチャー自身、バーズを当初ポップスグループとして扱っていたはずである。リーダーのロジャー(当時はジム)・マッギンは得意の12弦ギターで、グループからひとりだけ参加しており、彼の12弦ギターのプレイには大きな個性を感じていたようだ。この時のバーズのメンバーはロジャー・マッギン(ギターとヴォーカル)、ジーン・クラーク(ギターとヴォーカル)、デヴィッド・クロスビー(ギターとボーカル)、クリス・ヒルマン(ベースとバックヴォーカル)、マイケル・クラーク(ドラム)という布陣で、マッギン以外はバーズを脱退してからウエストコーストロックの仕掛け人として、それぞれが大事な役回りを演じることになる。