ファンク系ブルースを生み出した
B・B・キングの
『コンプリートリー・ウェル』

『Completely Well』(’69)/B.B. King

『Completely Well』(’69)/B.B. King

“キング・オブ・ブルース”と呼ばれたB・B・キングは、音楽ファンなら誰もが知るビッグネームである。しかし、ブルースマンとしての彼は、日本やイギリスでは白人に魂を売ったアーティストとして語られることも多い。僕は彼をブルースマンとして捉えることがそもそも間違っているのではないかと考えている。もちろん、キャリアの初期(60年代中頃までか)はブルースマンとして捉えるべきだし、言うまでもなくブルースギターの名手でもある。

しかし、60年代後半からは、白人のオーディエンスが増え、ロックやファンク、ソウルに急接近しており、その姿もまたB・B・キングなのである。彼は今で言うアメリカーナ的なスタンスで捉えるのが正しいと思う。今回取り上げる『コンプリートリー・ウェル』は白黒混合の名うてのミュージシャンをバックに制作された名盤であり、収録曲の「スリル・イズ・ゴーン」は70年のグラミー賞を受賞している。

ブルースは洗練されR&Bや
ソウルへと進化

アメリカ南部で生まれたカントリーブルースがシカゴブルース〜ジャンプブルースへと進化するのは、南部のプランテーションで働く黒人が都会に出て、工場などで働くようになったことと無縁ではない。都会生活で徐々に生活が良くなるにつれ、音楽もまた都会化し洗練されたものになるのが必然だろう。エレクトリック化したブルースは、ジャズやブギと結びついて、より都会的なR&Bへと変貌していき、やがてはソウルやファンクへと姿を変えていくのである。

B・B・キングはそういった黒人音楽の流れの中で、先人たちのエッセンスを吸収しつつ独自のギタースタイルを生み出し、幼少期に経験したゴスペルをもとにしたパワフルなヴォーカルとの両輪で40年代終わりにデビューする。

キング・オブ・ブルース

51年の暮れには「スリー・オクロック・ブルース」が大ヒット、十八番の「エブリデイ・アイ・ハブ・ザ・ブルース」「スイート・リトル・エンジェル」など、次々とヒット曲を生み、若手ブルースマンとして大いに注目を浴びている。56年にリリースしたデビューアルバム『シンギン・ザ・ブルース』は上記のヒット曲を中心に選曲された作品で、ブルースマンとしての彼の代表作のひとつである。

トップスターとなったこの56年には342回のコンサートが行なわれており、彼の肉体的なタフさがよく分かる。この年は54年にデビューしたエルヴィス・プレスリーとラジオで共演(他の出演者にはレイ・チャールズ(26歳)もいる)しており、ふたりでスナップ写真を撮っていることからも、彼は他の多くのブルースマンとは異なり、早い時期から人種を問わず活動していたようだ。

60年代に入ると『ライブ・アット・ザ・リーガル』('65)や『ザ・ジャングル』('67)など名盤を次々とリリース、旺盛なライヴ活動もあって、まさに“キング・オブ・ブルース”の名をほしいままにする。特に『ライブ・アット・ザ・リーガル』での粘っこいギターワークは素晴らしく、僕がこのアルバムを最初に聴いたのは中学生の頃だが、マイク・ブルームフィールドやピーター・グリーン(フリートウッド・マック)らが、いかにB・B・キングの影響を受けているか思い知らされたものだ。

OKMusic編集部

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