ゴリゴリの重厚なサウンドで攻める
リヴィング・カラーの
デビューアルバム『ヴィヴィッド』は
ブラックロックの
代表的なアルバムのひとつ

『Vivid』(’88)/Living Colour

『Vivid』(’88)/Living Colour

黒人のロッカーと言えば、誰もがジミヘンやのことを想像するだろう。しかし、今では忘れられそうになっているが、80年代から90年代にかけて登場した優れたブラックロックのグループは多い。シンセポップのチープさとは真逆の、
ヘヴィなサウンドを持ち味にした人力演奏の黒人のみで編成されたグループが登場したのは80年代初頭のこと。ラモーンズの曲にちなんで命名された4人組のバッド・ブレインズである。70年代すでにフュージョングループとして結成されていた彼らはパンクと出会い、その方向を180度転換する。おそらく、パンクロックに影響された初の黒人グループである。「黒人でもパンクやっていいんだ」と考えたかどうかは分からないが、その後ニューヨークを中心に多くの黒人ロックグループが現れている。ブラックロッカーたちの音楽性はパンクとヘヴィメタル、ファンク、スカなどが融合しており、中でも今回紹介するギタリストのヴァーノン・リードが結成したリヴィング・カラーは頭ひとつ抜きん出た存在であった。

ロナルド・シャノン・ジャクソンと
ビル・フリゼル

リヴィング・カラーのリーダーでギタリストのヴァーノン・リードは、80年代初頭のニューヨークで、著名なジャズドラマーのロナルド・シャノン・ジャクソンのグループのメンバーに抜擢され、若手の天才ギタリストとして知られていた。シャノン・ジャクソンの音楽はジャズと言ってもフリーファンク系が中心で、ライヴハウスのニッティング・ファクトリーでライヴをやる機会が多かった。ニッティング・ファクトリーと言えば、パンク、フリージャズ、ワールドミュージックなど、先鋭的なグループならジャンルを問わず出演させるパンクスピリットを持った箱だったから、ヴァーノン・リードもありとあらゆる音楽を浴びるように聴いていたはずである。

ヴァーノンの演奏を聴いて、その才能に惚れ込んだ著名なジャズギタリストのビル・フリゼルは、彼とのデュエットアルバムを制作、この作品は一般には売れなかったがミュージシャンの間で評判となり、ニューヨーク周辺でヴァーノンの名前は高まっていく。フリゼルは天才的な才能を持つギタリストで、スタンダードジャズからブルーグラスまで、ありとあらゆる音楽に精通したまさにアーティスティックな活動を続けている音楽家である。そのフリゼルが共演するということは、20歳をちょっと過ぎたばかりのヴァーノンが本物であることを意味するのだ。

OKMusic編集部

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