ピーター・グリーン、
ジェレミー・スペンサー、
ダニー・カーワン、
それぞれの個性が楽しめる
フリートウッド・マックの
アメリカ編集盤『英吉利の薔薇』

『English Rose』(’69)/Fleetwood Mac

『English Rose』(’69)/Fleetwood Mac

60歳過ぎのロックファンなら必ず記憶に残っているのが、キング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿(原題:In the Court of the Crimson King)』(’69)とキャプテン・ビーフハートの『トラウト・マスク・レプリカ』(’70)のジャケット。これらの印象深い作品と並んで、大きなインパクトだったのが本作『英吉利の薔薇(原題:English Rose)』のジャケットだろう。面白いのはクリムゾンもビーフハートもジャケットが中身の音楽を想起させるイメージであったのに対して、フリートウッド・マックはその音楽(超ストイックな“どブルース”)とはまったく関係がないところ。今回はピーター・グリーンが7月に亡くなったこともあって、オヤジたちには思い出深い『英吉利の薔薇』を取り上げる。

ブリティッシュブルース全盛期

60年代中頃、ブリティッシュブルースは全英を席巻しており、ヤードバーズやジョン・メイオール&ブルースブレイカーズなどが力作を次々とリリースしていた。ヤードバーズにはクラプトン→ジェフ・ベック→ジミー・ペイジという三大ギタリストが入れ替わりで在籍しており、ヤードバーズを辞めたクラプトンはブルースブレイカーズに移籍、その後のロックの進む道を決定付けた名盤『ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン』(’66)をリリースし、イギリスで最高のギタリストと賞賛されることになる。そして、今度はクリームを結成するためにブルースブレイカーズを抜けたクラプトンの後任に選ばれたのが、フリートウッド・マックの看板ギタリストとなるピーター・グリーンである。クラプトンの後釜ということでのプレッシャーは大きかったと思うが、情感に満ちたグリーンのギタープレイは大いに注目され、イギリス全土にその名を知られることになる。しかし、グリーンはその地位にあぐらをかくことなく、ブルースを極めるためにブルースブレイカーズを脱退する。ブルースブレイカーズよりも泥臭い本物のブルースを目指して、ブルースブレイカーズの主要メンバーを引き抜く格好でピーター・グリーンズ・フリートウッド・マックを結成するのである。

フリートウッド・マック

67年、ピーター・グリーン、ミック・フリートウッド、ジョン・マクヴィー(彼はブルースブレイカーズとの契約が残っていたので、少し後に加入)、グリーンにスカウトされたスライドの名手ジェレミー・スペンサーからなるブルースバンドがここに誕生する。グリーンとスペンサーというタイプの違う最高のギタリストふたりをセンターに据えたパワフルなサウンドは、イギリスの若者たちのブルース熱をますます熱くさせるきっかけとなった。

デビューアルバム『ピーター・グリーンズ・フリートウッド・マック』(’68)は、ポップな要素のない本格的なブルース作品にもかかわらず全英4位まで上昇し、世界的にもその名が知られることになる。同年、2ndアルバムの『ミスター・ワンダフル』(このアルバムのジャケットも意味不明)をリリース後、3人目のギタリストとなるダニー・カーワン(18歳!)が加入する。グリーンはカーワンの才能を大いに認め、加入直後にもかかわらずシングル「アルバトロス」のB面「ジグソー・パズル・ブルース」(2曲とも『英吉利の薔薇』に収録)では彼のオリジナル曲を取り上げリードギターも彼に弾かせている。そして、翌年の69年に、アメリカで独自に編集されたコンピレーションアルバム『英吉利の薔薇』がリリースされる。

OKMusic編集部

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