デビュー時から独自のルーツ志向を
突き進むロス・ロボスの
『ハウ・ウィル・ザ・
ウルフ・サヴァイヴ?』
メジャー・シーンと
インディーズ・シーン
ちなみに、83年のビルボード年間チャートとカレッジ・メディア・ジャーナル(以下CMJ)を比べてみると、ビルボードではマイケル・ジャクソンの『スリラー』、メン・アット・ワークの『ワーク・ソングス(原題:Business as Usual)』、ポリスの『シンクロニシティ』、ホール&オーツの『H2O』、プリンスの『1999』、ライオネル・リッチーの『ライオネル・リッチー』などが上位を占めている。CMJでは、U2の『ウォー』、カルチャー・クラブの『キッシング・トゥ・ビー・クレバー』、イングリッシュ・ビートの『スペシャル・ビート・サービス』、デビッド・ボウイの『レッツ・ダンス』、プリンスの『1999』と、意外にも僕が思ってるより大差はなかった。実はメジャーとインディーズに違いが出るのはもう少し後(80年代後半以降)になってからなのだが、CMJではこの年すでにR.E.M.(7位)やヴァイオレント・ファムズ(13位)など、インディーズのアーティストがチャートインしているのは興味深い。
当時、ビルボードで上位に入っているのは、メロディーの美しさ、ハイレベルの演奏技術、ダンサブル(ディスコが流行していたので)な作品が多いように思う。一方、CMJではテクニックは稚拙であってもパンクスピリットを持っていたり、ダイナミズムが感じられたりする作品に注目が集まっていたようだ。要するに、この頃からじわじわとオルタナティブロックの微風が吹き始めていたのである。
スラッシュ・レコードの躍進
イーストL.A(チカーノが多い)のライヴハウスではブラスターズやXの他、ミニットメン、ブラック・フラッグなど、グランジやオルタナティブロックのアーティストと並んで、80年初頭にはロックンロールやテックス・メックスを演奏するロス・ロボスもまた活動していた。
ロス・ロボスの結成
そして、1978年には全編スペイン語のデビューアルバム『ジャスト・アナザー・バンド・フロム・イースト・L.A(スペイン語の原題:Del Este De Los Angeles)』を自主制作でリリースする。余談だが、このアルバムのタイトルはフランク・ザッパが72年にリリースしたアルバム『ジャスト・アナザー・バンド・フロム・L.A』をもじったものである。このアルバムでは本気のメキシコ音楽にチャレンジしており、88年にリリースする『ピストルと心(原題:La Pistola Y El Corazon)』はこの続編とも言えるだろう。