圧倒的な名演を収録した
『クリームの素晴らしき世界』は、
70’sロックへの道標となった
アレクシス・コーナーの
ロックを進化させたブルース塾
中でも、コーナーの一番弟子であるグレアム・ボンドはコーナーのブルース・インコーポレイテッドに参加、63年に自身のバンドとなるグレアム・ボンド・オーガニゼーションを結成する。ボンドを支えるメンバーはジンジャー・ベイカー、ジャック・ブルース(後のクリーム)、ジョン・マクラフリン(マハヴィシュヌ・オーケストラのリーダー)、ディック・ヘクトール・スミス、ジョン・ハイズマン(コロシアム)ら強力なアーティストたちで、みんなコーナーの塾に出入りしていたメンバーだ。この少し後、彼らはブリティッシュ・ジャズロックの原型を作り上げることになる。
スーパーグループの誕生
前述したように、ブルースとベイカーはグレアム・ボンド・オーガニゼーションでの同僚であったが、犬猿の仲で知られていた。しかし、ベイカーはクラプトンと新グループをやりたいがゆえ、その申し出を受けている。クラプトンがジャック・ブルースを知ったのは、エレクトラからリリースされたホワイトブルースを紹介するコンピ『ホワッツ・シェイキン』(‘66)用のセッション(パワーハウス名義)で一緒になった時、ブルースのベーステクニックと歌唱力に惚れ込み、彼とグループを組みたいと思っていたのだ。
この3人に共通しているのは、ジャズ的で白熱したインプロビゼーションができるテクニックを持っていたことだ。仲の悪いブルースとベイカーにとって、すでに“神”と呼ばれていたクラプトンとの新グループ結成は、お互いのマイナス部分に目をつぶるぐらいのメリットがあると考えたのだろう。実際、本人たちも自覚していただろうが、このトリオはロックの可能性を大きく広げる結果となった。文字通りのスーパーグループの誕生である。66年当時、クリームに匹敵するほどの実力を持っていたのは、名前が知られているアーティストではジミ・ヘンドリクスぐらいであっただろう。
クリームのアルバム
サイケなジャケットで知られる67年の2ndアルバム『カラフル・クリーム』(全英5位、全米4位)は、ブルースをベースにしながらも時代に即したポップなテイストの「ストレンジ・ブルー」、クリームの人気を決定づけた代表曲「サンシャイン・ラブ」などを収録している。このアルバムではソングライティングとヴォーカルを始めハーモニカやピアノなども使うなど、ジャック・ブルースの存在感は増し、彼の仕切りがベイカーの癇に障ることが増えていく。このアルバムではブルースロックから新たな段階への飛躍が見られるし、ハードロックの影も見え隠れしている。また、ワウやファズといったエフェクターの音が格段に良くなっているのも特筆すべきところだ。