職人ミュージシャンたちの旨味が
凝縮されたスタッフの『スタッフ!!』

『Stuff 』(’76)/Stuff
フュージョンのタイプ
もう一つは、ソウルやR&Bをベースにした強力なグルーブ感と「味」を感じさせるスタイル。ギターならコーネル・デュプリーやデヴィッド・T・ウォーカー、ベースではチャック・レイニーやゴードン・エドワーズ、ドラムではバーナード・パーディーやスティックス・フーパー、キーボードではリチャード・ティーやジョー・サンプルといった過不足のない技術(めちゃくちゃ上手くてツボを押さえた演奏)で勝負するアーティストたちがいる。
スタッフのメンバー
ドラムの人選
最初、僕はパーディーのパワーを求めてクリス・パーカーとスティーブ・ガッドのツインドラムにしたのかと考えたのだが、実際には当時ブレッカーブラザーズのメンバーとしても活動していたパーカーがツアーで抜ける可能性が高かったために、ガッドをセカンドとしてスタンバイさせていたというのが真相のようだ。パーディーほどのグルーブ感は持ち合わせていないのは確かだが、パーカーは弟のエリックとともに住んでいたウッドストックでは大きな信頼を得ていた優秀なドラマーであり、69年頃にはすでにプロとしての活動をスタートさせている(51年生まれなので、プロデビューはなんと18歳)。71年になるとサイケデリックロックのホリー・モーゼズのメンバーとしてデビューするもののアルバム1枚のみで解散する。その後はウッドストックでポール・バタフィールドのベターデイズに参加し、ロジャー・ホーキンスやアル・ジャクソンのような渋くて重いドラムプレイで大きな評価を得る。
スティーブ・ガッドも当時はまだそんなに知られていなかったが、ジョー・ファレルやボブ・ジェームスといったCTIでのプレイをはじめ、ロック界ではケイト&マクガリグルやハース・マルティネスといった渋いSSW系の作品で、ジム・ケルトナーばりのシンコペーションの効いたプレイを既に披露していたのである。
スタッフはドラムのふたり以外は黒人のプレーヤーであるが、リーダーのエドワーズはシンプルでヘヴィなパーカーとガッドのプレイに惚れこんだのだろう。アレサ・フランクリンやキング・カーティスなど、ニューヨークのスタジオでの仕事が多かったエドワーズ、デュプリー、ゲイル、ティーらの特徴と、マスルショールズ系のような特徴を持つパーカー、オールマイティの技術を持つガッドのコラボレーションで、新しいサウンドが生み出せると考えたのではないか。