世界最高のギタリストのひとり、
ジョン・マクラフリン率いる
マハヴィシュヌ・オーケストラの
『火の鳥』

『Birds of Fire』(’73)/Mahavishnu Orchestra

『Birds of Fire』(’73)/Mahavishnu Orchestra

ジェフ・ベックは「生きている中では最高のギタリスト」と言い、パット・メセニーは「世界で最も偉大なギタリスト」と語った。ジミー・ペイジにギターを教えていたこともある…それがジョン・マクラフリンである。彼がいなければ、ロックとジャズの風景は今とは違ったものになっていただろう。今回取り上げるマハヴィシュヌ・オーケストラの『火の鳥(原題:Birds of Fire)』は、マクラフリンが中心となって結成されたジャズロックグループの2ndアルバムである。メンバーの超絶テクニックと息苦しいまでの緊張感、そしてスピリチュアルな側面が味わえる傑作だ。今ではジャズロックやフュージョンにカテゴライズされているが、リリースされた当時は当てはまるジャンルが存在しなかったために、プログレとして紹介されることもあった。

ジャズロックの元祖のひとりである
グレアム・ボンド

アレクシス・コーナー、ジョン・メイオール、グレアム・ボンドの3人は、60年代からブリティッシュロック界で活躍する多くのアーティストを育てた、いわば教師のような存在である。クリームのエリック・クラプトン、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカーをはじめ、コロシアムのディック・ヘクストール・スミス、ジョン・ハイズマン、フリートウッド・マックのピーター・グリーン、ストーンズの面々、ロッド・スチュワート、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジらは、3人の師匠のもとで修行(時期はまちまちだが)を積み、それぞれの音楽を見出していく。

3人の中で最も若いグレアム・ボンドは、自身のグループグレアム・ボンド・オーガニゼーションを率いてR&Bやジャズを演奏していた。1963年に結成されたこのグループにはボンドの他、ジャック・ブルース(Ba)、ジンジャー・ベイカー(Dr)、ディック・ヘクストール・スミス(Sax)、ジョン・マクラフリン(Gu)という凄腕のメンバーたちが在籍していた。このグループで彼らは腕を磨き、後にクリームやコロシアムといったロック史に残るグループで活躍することになる。

マクラフリンは1年ほどで脱退し、スタジオミュージシャンとして活動する。また、ベイカーは66年に脱退、代わりにジョン・ハイズマンが加入する。

ジャック・ブルースのソロ作で再会

68年、彼らはまだクリームに在籍していたジャック・ブルースのソロアルバム(というかセッション)の録音のために再会、その時のレコーディングは内容の難解さからかリアルタイムでは発表されず、70年になってから2ndソロアルバム『シングス・ウィー・ライク』としてリリースされた。このアルバムは全曲インストで、内容はほとんどフリージャズといってもよいが、ロックの過激さもしっかり内包しており、アグレッシブかつ切れ味鋭い最初期のジャズロック作品に仕上がっている。

メンバーはジャック・ブルースのほか、ディック・ヘクストール・スミス、ジョン・ハイズマン、ジョン・マクラフリンで、彼らの熟練したテクニックが十二分に発揮されており、ポップ性が全くないだけに今聴いても全く古びていない秀作だ(クリームが好きでこのアルバムを入手した当時の中学生は、難解であるがゆえにこのアルバムのことは語れなかった…はい、僕のことです)。

このアルバムで当時のロックギタリストと比べるとまったく異なるジャズ的なプレイを披露していたのがジョン・マクラフリンである。ジャンルを飛び越えたフュージョン的な演奏が珍しくない現代と違って、60年代に登場したマクラフリンは、当時からすでにカテゴライズしにくい演奏を身上としている珍しいアーティストであった。彼の音楽性はロック、ジャズ、R&B、フラメンコ、インド音楽などさまざまなジャンルに及んでいて、それだけに彼のギタープレイには奥深さが感じられるのである。

OKMusic編集部

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