ライドンの歪んだ叫びが脳を刺激する
パブリック・イメージ・リミテッドの
『セカンド・エディション』

『Second Edition』(’79)/Public Image Ltd
パンクロックの終焉と
ニューウェイブの台頭
もちろん、80年代に入ってもクラッシュやストラングラーズらパンクロックのアーティストたちは活動し続けていたが、大手レーベルに所属するビッグな存在になってしまっていた。社会的認知度が高く、金銭的にも恵まれ、スタジアムでコンサートをするパンクロッカーなど、本末転倒であるとは言えないか。成功を収めた大物パンクロッカーに代わって、ハードコアパンクやスラッシュメタル系のインディーズグループが登場してくるわけだが、その辺についてはまた別の機会に述べたいと思う。
ピストルズ解散後、急速に台頭してきたのはエルヴィス・コステロ、ポリスらに代表されるニューウェイブと呼ばれる勢力で、パンクの香りを漂わせながらもしっかりした演奏技術を持ち、ソングライティングの面でも職人技を駆使するなど、彼らは瞬く間に若者たちを虜にする。ひと口にニューウェイブといっても、実際には多種多様な音楽があるのだが、ニューウェイブ系のアーティストを多く抱えるインディーズレーベルからリリースされれば、それらは全てニューウェイブだと当時のリスナーは捉えていたと記憶している。
パンクロック隆盛のおかげで、大手レーベルと絶対に契約できない演奏技術や表現力の拙いアーティストたちは、各地にできたインディーズと契約し、上手くいけば売れることが可能となった。レーベル側もそれぞれの個性を売りにしてカラーに合ったアーティストを売り出すという、これまでになかった形態のシステムができつつあったのだ。これがパンクロック革命の大きな成果のひとつだ。ファクトリー、ラフ・トレード、チェリーレッド、スティッフなど、多様なインディーズレーベルが設立され、ポストパンク時代がスタートする。