多くのスーパーギタリストに愛された
超弩級ギタリスト、
ロイ・ブキャナンの代表作
『ライヴ・ストック』

『Live Stock』(’75)/Roy Buchanan
熱いロックと冷めたイージーリスニング
通常、グループの場合、それぞれの楽器の担当者はメンバー間のアンサンブルを重視する。それはギターであってもベースであってもドラム、キーボードでも同じである。歌を中心にしたオリジナル楽曲をどう伴奏するかに重きが置かれることが多い。歌がメインに据えられるという意味では、ブルースでもR&Bでもカントリーでも同じである。そのため、各楽器のプレーヤーは、ソロの時を除いて自分のプレイのみが目立つ行為はしない。各楽器は歌と歌のイメージを生かすために、ある時は前に出たり、ある時は後ろに引いたりするのである。
ところがロイ・ブキャナンの音楽は、歌があってもなくても必ずギターがメインである。オリジナル曲であってもカバーであっても、あくまでも彼のギター演奏が主となる。彼のギターが歌手であり、伴奏者でもあるというスタイルなので、彼以外の演奏者は目立たず黒子として存在する。それだけに、ギターを弾く人には注目されてもそれ以外の人にとってはあまり関心が持てない音楽だと言えるだろう。だからこそ、彼の名前が一般的にあまり知られていないのだ。もちろん、こういったインスト音楽は昔から少なくない。しかし、その多くがイージーリスニング的な演奏で、ロックファンにとってはあまり興味が持てる内容ではない。イージーリスニング作の多くが空間の雰囲気作りの役割を持っているので、その性質上あまり熱くなってはいけない。それがイージーリスニングやBGMのあるべき姿なのである。
ミュージシャンズミュージシャン
としての存在
しかし、ロック界で活躍する優秀なギタリストの多くが、一般のリスナーは気づかないロイの飛び抜けたギターテクニックを見逃さなかった。ジェフ・ベックにせよ、スティーブ・ハウにせよ、自分の音楽やギターワークを高めるために、ロイの技術を学び習得しようとした。これが、ミュージシャンズミュージシャンと呼ばれたロイの立ち位置なのである。