フリーの『ファイア・アンド・
ウォーター』は早熟の天才たちによる
ハードロック黎明期の傑作

『Fire And Water』(’70)/Free

『Fire And Water』(’70)/Free

フリーはハードロックの進む道を切り開いたグループのひとつとして知られるが、残念ながら短命に終わっている。オリジナルメンバーでの活動はたった5年であった。彼らが解散した理由は、ひと言で言うと“若すぎた”ことにあると言えるだろう。デビューアルバム『トンズ・オブ・ソブズ』(‘69)のレコーディング時(68年)、最も年長のポール・ロジャースとサイモン・カークがともに19歳、ポール・コゾフが18歳、アンディ・フレイザーはまだ16歳であった。これだけ若くて、個々のパフォーマンス能力も飛び抜けていたわけだから、メンバー間の衝突が多いのは容易に想像できると言うものだ。今回取り上げる3作目の『ファイア・アンド・ウォーター』(‘70)は、彼らの最高傑作というだけでなく、ロック史上に残る作品でもある。

ブリティッシュロックの父、
アレクシス・コーナー

イギリスでブルースを広めたのはアレクシス・コーナーであり、彼が率いたブルース・インコーポレイテッドはグループとしての活動だけでなく、若者たち向けのワークショップも展開し、テクニック的なものからブルースの精神に至るまでの啓蒙を行なっていた。少し年下のジョン・メイオールもまた、コーナーのやり方を踏襲し、若い有能なミュージシャンがいると聞けば、自らのグループ、ブルース・ブレイカーズに迎え入れ修行させていた。コーナーやメイオールは60年代初頭からこういった活動を行なっており、ローリング・ストーンズ、クリーム、レッド・ツェッペリン、ハンブル・パイ、フリートウッド・マック、コロシアムら、のちのブリティッシュロック界のスターたちは、その多くがコーナーのグループかメイオールのグループのどちらかに在籍し、腕を磨いていたのである。

OKMusic編集部

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