エクスペリメンタルロック、と唐突に言われて、どんな音楽なのかあなたはイメージできますか? この機会に何人かの同世代(シニア)に聞いてみたが、誰も知らなかった。という結果から判断してもピンと来る方はまだまだ少ないのかもしれないが、これも世代間ギャップ? 「エクスペリメンタル=実験的な」という意味に解せられるわけだが、別の言い方だと「アヴァンギャルド」で、これはもう少し分かりやすいか。それが半世紀前ぐらいだと、全部ひっくるめてプログレッシブ(略してプログレ)枠で片付けていたような気がする。
このエクスペリメンタルロックについては以前、当コラムでこのジャンルを代表するバンドとして「ヘンリー・カウ」を紹介する際に解説されているのでぜひお読みいただきたい。
■これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
エクスペリメンタルロックのひとつの完成形となったヘンリー・カウの名盤『不安』
https://okmusic.jp/news/432722定義づけするのも難しいとは思うが、要するにエクスペリメンタルロック(Experimental rock)は通常のポピュラー音楽の形式をあえて逸脱し、メロディー、リズムパターン、さらには楽器形態も既存のスタイルにとらわれず、独自のものを模索したロック、あるいはバンドといえばいいだろうか。数あるプログレッシヴ・ロックの中でも超メジャー級のイエスやEL&P(エマーソン・レイク&パーマー)、キング・クリムゾンなどのバンドがあくまでエレキギター、ベース、キーボード、シンセサイザー、ドラムといったロックミュージックで用いられる楽器編成で、メロディーアスで叙情的、ロックらしいダイナミズムを活かした音楽を展開したのに対し、エクスペリメンタルロックとして紹介されるバンドはクラシック音楽で使われる楽器を多用していたりする。特異な例で言えば、80年代に活躍したドイツのノイズ、インダストリアル系ロックバンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンなどのように電動ノコギリや建設用機材を用いて演奏するバンドもあった。
で、今回ご紹介するのもエエクスペリメンタルロックを代表するバンドとされるサード・イアー・バンドの『天と地、火と水(原題:
Third Ear Band (a.k.a. Elements))』(‘70)で、彼らの2作目となるアルバムだ。