ファンク系ブルースを生み出した
B・B・キングの
『コンプリートリー・ウェル』
本作『コンプリートリー・ウェル』
について
ベースにはキング・カーティスのバックも務める名手ジェリー・ジェモット、ドラムはドニー・ハサウェイのライヴ盤でもお馴染みの一流セッションプレーヤーのハーブ・ラヴェル、セカンドギターにはニューヨークを代表するギタリストのヒュー・マクラッケン、そしてキーボードにはCSN&Y人脈のポール・ハリスが参加している。エンジニアには、後にザ・バンド、ローリング・ストーンズ、ジェシ・デイヴィスなどを手掛けるジョー・ザガリノがシムジクの要請で加わっているのも興味深いところだ。
収録曲は全部で9曲。「No Good」のような3連のブルースもあるが、ジェリー・ジェモットのファンク的なシンコペーションが新しいスタイルとなっている。「So Excited」「You're Losin' Me」「Cryin' Won't Help You Now」のようなファンク系ブルースは今聴いてもカッコ良い仕上がりで、サザンロック的な感覚も感じられる。10分に及ぶ「You're Mean」はソロを回すだけのジャムセッションで、長尺曲が多かった当時のロックシーンを意識したものであろう。
そして、何と言っても本作の目玉は、彼の代表曲のひとつ「The Thrill Is Gone」である。彼のソウルフルなヴォーカルとドラマチックなギターソロが堪能できる作品というだけでなく、この手のアルバムには珍しいストリングスとソウル風味のエレピが、これまでにないスタイルのブルースを生み出している。この曲はR&Bチャートで3位、ポップチャートでも15位となって、翌年のグラミー賞受賞につながっていく。