ファンク系ブルースを生み出した
B・B・キングの
『コンプリートリー・ウェル』

本作『コンプリートリー・ウェル』
について

このヒットに気を良くしたレコード会社とシムジクは、この路線(ほぼ同じメンバー)で次作のレコーディングを決定、それが本作『コンプリートリー・ウェル』である。まだファンク系のリズムに慣れないのか、彼のギターがリズムに乗り切れていないところが見受けられるものの、決して相性は悪くない。

ベースにはキング・カーティスのバックも務める名手ジェリー・ジェモット、ドラムはドニー・ハサウェイのライヴ盤でもお馴染みの一流セッションプレーヤーのハーブ・ラヴェル、セカンドギターにはニューヨークを代表するギタリストのヒュー・マクラッケン、そしてキーボードにはCSN&Y人脈のポール・ハリスが参加している。エンジニアには、後にザ・バンド、ローリング・ストーンズ、ジェシ・デイヴィスなどを手掛けるジョー・ザガリノがシムジクの要請で加わっているのも興味深いところだ。

収録曲は全部で9曲。「No Good」のような3連のブルースもあるが、ジェリー・ジェモットのファンク的なシンコペーションが新しいスタイルとなっている。「So Excited」「You're Losin' Me」「Cryin' Won't Help You Now」のようなファンク系ブルースは今聴いてもカッコ良い仕上がりで、サザンロック的な感覚も感じられる。10分に及ぶ「You're Mean」はソロを回すだけのジャムセッションで、長尺曲が多かった当時のロックシーンを意識したものであろう。

そして、何と言っても本作の目玉は、彼の代表曲のひとつ「The Thrill Is Gone」である。彼のソウルフルなヴォーカルとドラマチックなギターソロが堪能できる作品というだけでなく、この手のアルバムには珍しいストリングスとソウル風味のエレピが、これまでにないスタイルのブルースを生み出している。この曲はR&Bチャートで3位、ポップチャートでも15位となって、翌年のグラミー賞受賞につながっていく。

本作以降のレコーディング

本作の成功もあって、翌年の『インディアノラ・ミシシッピ・シーズ』はレオン・ラッセル、キャロル・キング、ラス・カンケル、ジョー・ウォルシュらが参加した極めてロック色の濃い作品となっており、こちらも極上の仕上がりである。71年にはアレクシス・コーナー、ピーター・グリーン、スティーブ・ウィンウッド、クラウス・フォアマン、スティーブ・マリオット(ハンブル・パイ)、ジム・ゴードン(デレク&ドミノス)、リンゴ・スターなどなど、豪華なメンバーが参加したロンドン録音の佳作『イン・ロンドン』をリリースしている。そして、72年にはジョー・ウォルシュ、タジ・マハール、ジェシ・デイヴィスらをゲストに迎えた『L.A・ミッドナイト』で、ロック界にもB・B・キングの名前を印象付けることになる。

TEXT:河崎直人

アルバム『Completely Well』1969年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. ソー・エキサイテッド/So Excited
    • 2. ノー・グッド/No Good
    • 3. ユーアー・ルージン・ミー/You're Losin' Me
    • 4. ホワット・ハップンド/What Happened
    • 5. コンフェッシン・ザ・ブルース/Confessin' the Blues
    • 6. キー・トゥ・マイ・キングダム/Key to My Kingdom
    • 7. クライン・ウォント・ヘルプ・ユー・ナウ/Cryin' Won't Help You Now
    • 8. ユーアー・ミーン/You're Mean
    • 9. スリル・イズ・ゴーン/The Thrill Is Gone
『Completely Well』(’69)/B.B. King

OKMusic編集部

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