ライドンの歪んだ叫びが脳を刺激する
パブリック・イメージ・リミテッドの
『セカンド・エディション』
レゲエ、スカ、ワールドミュージック
もうひとつ、ロンドンではレゲエやスカといったジャマイカ音楽のブームもやってきていた。これはイギリスにジャマイカ移民(ジャマイカはイギリスの植民地であったため)が多いことと、ピーター・ガブリエルらが仕掛けたワールドミュージックの流行もあって、大きな話題となった。特にジャマイカでは60年代からレゲエで使われていたダブ(DUB)の音楽的処理が新しい感覚で捉えられ、ライドンをはじめ、ポストパンクのアーティストたちに大きな影響を与えている。スカの流れは80年代初頭のスペシャルズやセレクターなどに代表される2トーンブームを巻き起こし、日本でもマッドネスがCMに起用されるなど、イギリスだけでなく日本でも大きな広がりを見せた。この後、UB40、スティール・パルス、アスワドなど、ブリティッシュレゲエ・ブームへと広がり、90年代のUKソウルやアシッドジャズのムーブメントにも繋がるきっかけともなった。
パブリック・イメージ・
リミテッドの結成
78年、アメリカツアーの途中で突然ピストルズを辞めたライドンは、ジャマイカに向かい新しいグループのイメージを膨らませていた。ジャマイカ音楽同好仲間でベーシストのジャー・ウォブルと、クラッシュと演奏経験のあるギタリストのキース・レヴィンに声を掛けて、グループ結成を決める。ドラムのジム・ウォーカーはカナダ出身の留学生で、オーディションによって選出され、4人組でグループはスタートする。
78年10月、先行シングル「パブリック・イメージ」をリリースすると大きな反響を呼び、全英チャートで9位まで上昇することになった。同じ年の12月にはデビューアルバム『パブリック・イメージ(原題:Public Image:First Issue)』をリリースする。そのサウンドはピストルズ時代の軽さと違い、硬質なリズムとダブを組み合わせた重厚なポストパンク作品となった。バンドの核はウォブルのベースで、レゲエだけでなくジャズやファンクのバックボーンを持つ彼ならではの技巧的プレイが聴きものとなっている。収録曲にメロディーらしきものはほとんどなく、ライドンのパワフルかつ嘶くようなヴォーカルは前衛的感覚に満ちている。彼の提唱するアンチロック(反ロック)という概念が具体化されたサウンドになっていると言えるだろう。