ライドンの歪んだ叫びが脳を刺激する
パブリック・イメージ・リミテッドの
『セカンド・エディション』
本作『セカンド・エディション』
について
サウンドは前作同様、ウォブルのベースがメインではあるが、レヴィンのノイジーなギターは前作以上のキレがあるし、ライドンのヴォーカル(というか、語りと叫び?)にも磨きがかかっている。ドラムのジム・ウォーカーはすでに脱退してしまっており、3人のゲストドラマーにプラスしてレヴィンやウォブルまでもが駆り出されている。過渡期的な時期なのだろうが、あまり散漫な印象はない。むしろ、グループの一体感が増しているように感じるのだが、それがライドンのリーダーシップによるものかどうかは定かでない。
収録曲は全12曲。アルバム全編にわたって繰り広げられる土着的なダンスリズムと、ダブやシンセによる前衛的で捉えどころのない雰囲気は、それまでのロックにはない、まったく新しいスタイルを生み出している。ピストルズ時代とは打って変わってポップな要素を極力排除し、アンチロックを掲げるライドンなりのアバンギャルドなダンスミュージックに仕上げたと言えるかもしれない。アメリカのポストパンク作品に『ノー・ニューヨーク』という秀逸なコンピレーションアルバムがあり、その周辺にいるアーティストを“ノーウェイブ”と呼ぶが、ライドンの目指すものもコンセプト自体は近い感覚であり、本作『セカンド・エディション』もまた、後進のアーティストたちに大きな影響を与えた衝撃作だ。
本作リリース後、残念なことにジャー・ウォブルが音楽性の違いから脱退し、次作の『フラワーズ・オブ・ロマンス』(‘81)ではベースレスとなる。しかし、ライドンの凄みは枯れることなく、ますますアンチロックを極めている。『フラワーズ・オブ・ロマンス』は本作と並ぶ傑作で、この2枚がP.I.Lの代表作だと僕は確信している。
余談であるが、この7月にジャー・ウォブルは自身のグループ、ザ・インヴェイダーズ・オブ・ザ・ハートとともに来日することが決定しているので、興味のある人はチェックしてみてください。
TEXT:河崎直人