アメリカン・フォーク界の重鎮、
ポール・サイモンが挑んだ
異文化圏コラボレーションが
投げかけた成果と波紋
ポピュラー音楽とワールドミュージック、あるいは民族音楽と融合、邂逅を試みたアーティストとしては元ジェネシスのシンガー、ピーター・ゲイブリエルやトーキング・ヘッズのデビッド・バーンもよく知られる存在だが、今回はその筆頭格とも言うべきポール・サイモンの『グレースランド(原題:Graceland)』(‘86)と『リズム・オブ・ザ・セインツ(原題:The Rhythm Of The Saints)』(‘90)を取り上げてみたいと思う。両作は対となるアルバムで、まとめて紹介することに、たぶん異論はあがらないだろう。
ポール・サイモンの経歴を紹介し出したら、複数ページを必要としてしまうはずなので思い切って省かせていただくが、サイモン&(アート)ガーファンクル、その前身となるトム&ジェリーとして1957年頃からプロのキャリアをスタートさせてから、現在まで絶えずクリエイティブあふれる創作活動を続けてきた。現在80歳というから同じフォーク出身としてはあのボブ・ディランより一歳若いものの、デビューは5年ほどサイモンのほうが先輩である。2018年9月にライヴツアーからの引退が発表されたが、コロナ禍にはファミリーや友人を伴ってのミニライヴ配信なども頻繁に公開され、元気な姿を見せていた。目下のところの最新作は『イン・ザ・ブルー・ライト(原題:In the Blue Light(’18)で、一応これがキャリア最後のアルバムである、とも発表されているのだが…。
※ポール・サイモンの名盤は過去にも本コラムで何度も紹介しているので、併せてお読みいただければと思う。
https://okmusic.jp/news/299517
・『明日にかける橋』/サイモン&ガーファンクル
https://okmusic.jp/news/42628