独断と偏見で選んだ“冬を連想させる
”アーティストのお薦め5曲

“夏と言えばTUBE”みたいに、季節とアーティスト・イメージがリンクする音楽がある。では、冬と言えば…ここ日本でも冬の定番ソングは数え切れないほどあるだろう。今回はあえて定番どころを極力ハズし、冬っぽいクールさや、陰りのある哀愁メロディーを聴かせる5曲を勝手気ままに紹介したい。しかも、あまり考えず、フッと浮かんできた、感覚的チョイスに因るところが大きいのでお許し願いたい。どれも胸に染みる冬っぽさを感じてもらえると思う。

1.「西藤公園」('09)/back number

今年1月に『ミュージックステーション』に出演したback number。歌詞が女々しすぎて心に刺さるとして、今や"女子高生のカリスマ"なる紹介のされ方をするほど大人気バンドに成長を遂げている。昨年9月には横浜アリーナ公演も大成功に収め、会場の大きさを微塵も感じさせない人間臭いライヴを披露した。そんなback numberは、どこか冬っぽいイメージを抱かせる胸キュンソングが多い。デビューミニ作『逃した魚』のラストに収録された「西藤公園」は、アコギ用いた静謐かつ壮大な曲調でグッと来る。《私は冬が好き 言葉が白く目に見えるから》というロマンチックな歌詞に惹き付けられ、《私は冬が好き 僕は君が》と肝心な部分をぼかして最後を締め括る手腕にも心を搔き毟られる。

2.「サンタクロース」('02)/ELLEGA
RDEN

現在、活動休止中のELLEGARDEN。彼らは2ndアルバム『BRING YOUR BOARD!!』を転機に、ライヴハウスや眼前の観客を意識したパンキッシュで乗れる曲調を意識し、それ以降は一気にメロディックパンク・シーンのトップへと登り詰めていく。ポップパンク色の強い楽曲もいいが、初期の彼らはUK、USのギターロックに傾倒した物憂げなメロディーが特徴的だった。特に細美(Vo&Gu)のジワジワと内面から沸き上がるようなエモーショナルな歌声は味わい深い。初期と中期以降でサウンドの明暗はくっきり分かれるが、初期の陰りがあるELLEGARDENも実に魅力的。彼らにしては珍しく季節を重んじた歌詞、胸を締め付けられる美メロは絶品だ。

3.「Forever Young」(’14)/HAWAII
AN6

GURE(B)が正式加入し、昨年リリースされた現時点での最新作『Where The Light Remains』。“メロコア=明るい”というイメージを裏切るように、哀愁の昭和歌謡メロディーを用いて、全力で突っ走るサウンドを得意とする彼ら。結成当時は周囲から“音が暗い”と言われていたようだが、もともと山口百恵など歌謡曲にも慣れ親しんでいたこともあり、自分たちを信念を貫き通して不動の地位を確立している。ゆえにHAWAIIAN6は夏よりも冬の雰囲気がよく似合う。何よりダークに照り輝くメロディーは絶品で、GUREの透明度の高いコーラスワークも相まって、新しいバンドの色を打ち出している。一度聴いたら、ハマりますよ!

4.「I've Seen It All」('00)/Bjö
rk

アイスランド出身の孤高の女性シンガー、Björk。彼女の歌声はじっと耳を傾けているだけでも、なぜか涙腺が緩んでくる。切ない、悲しいという感情を通り越し、心が震えて震えてしょうがない。氷のように透き通るその美声は、冬の寒さや厳しさを想起させる。そして、彼女自ら盲目の主人公セルマを演じたミュージカル仕立ての映画『ダンサーインザダーク』主題歌に起用された「I've Seen It All」は、映画そのものの衝撃と相まり、忘れることができない名曲だ。RADIOHEADのThom Yorkeをゲストに迎え、彼の奥深い声とBjörkの凛とした歌唱力が見事に溶け合っている。

5.「ポーリュシカ・ポーレ」('98)/
ORIGA

今年1月17日に肺がんにより、44歳の若さで亡くなったロシア人歌手ORIGA。このニュースを知った際には大きなショックを受けた。私事になるが、今から10数年前に偶然CDショップでジャケ買いし、彼女の歌声に魅了され、全作品を買い揃えるほどファンになった。基本的にロシア語を使った楽曲が多く、彼女を通して、今まで知らなかったロシア語の響きの美しさを教えてもらった。また、日本人の琴線を刺激するORIGAのワビサビのあるきれいな歌声はまさにエンジェル・ヴォイスの名に値する。個人的にはKate Bushに匹敵する神秘的な歌声の持ち主だと思っている。ロシア民謡を彼女なりにアレンジした「ポーリュシカ・ポーレ」は、ノスタルジックな感情に浸れる楽曲だ。冬景色にも合いそう。

著者:荒金良介

OKMusic編集部

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