静かに耳を傾けたくなる、冬のしっと
りナンバー5曲

寒さがひたひたと近寄ってくるこの季節、冬に似合うしっとりソングを選んでみました。クリスマスは友達と一緒に華やかなパーティーに参加して、お酒でも飲んで体を芯から温めたいと思う人がいるかもしれません。あるいはコタツでゆっくりテレビでも観ながら、ダラダラ過ごすのが最高という人もいるかもしれません。今回は後者に当てはまりそうな選曲で、冬ならば冬らしく、どうせ外に出ても寒いだけなんだから、静かに身を沈めて曲の世界観に浸り切りたい。そんな人にお薦めする5曲です。

1.「スノースマイル」('02)/BUMP
OF CHICKEN

彼らの5thシングル表題曲で、12月に発売されたこともあり、季節に合わせた好ナンバーに仕上がっている。イントロから温かいアコギの音色が印象的で、歌詞もド頭から心をグッと掴んでくる。《冬が寒くって 本当に良かった》という肯定的な歌詞から始まり、その後に理由が述べられるのだが、恋人や好きな人がいる方はキュンとなること間違いないだろう。起伏穏やかな曲調に心は休まり、言葉とメロディーを丁寧に届けようとする意志が伝わってくる。また、美しいコーラスワークも特徴的で、冬のしんとした空気感も存分に感じられる。とはいえ、寒さよりも毛布に包まれたような温かい聴後感を覚える。重厚で壮大なのに、天窓から光が差し込む明るさも備えている。

2.「ラストデイ」(’14)/きのこ帝

10月に出たばかりの2ndアルバム『フェイクワールドワンダーランド』。これがひと皮もふた皮も剥けた大傑作で、個人的にも今年のベスト5に間違いなく入る作品だ。先行シングル「東京」の出来映えが素晴しかったので、他の収録曲はどうなるのかと心配してしまった。しかし、MV「クロノスタシス」を筆頭に名曲のオンパレードで捨て曲ナシ。その中でも「ラストデイ」は、年の瀬を部屋で迎える恋人同士を描いたスローナンバー。ありふれた日常(ほぼ全曲そうだが)を切り取った歌詞世界と相まって、決して声高に叫ばない平穏なメロディーラインが星のように輝いている。まるで日常こそ掛け替えのないものなんだよ、と教えてくれているようだ。

3. 「White Love」(’97)/SPEED

この辺で大ヒットした冬の定番曲を紹介しておきましょう。いや、ワダグジSPEEDが大好きだったんです。アイドルとしてではなく、純粋に曲が好きで好きで好きすぎて、どっぷりハマりました。これは彼女たちの5thシングルで、発売年は97年ですか(遠い目)。当時KORNやLIMP BIZKITなどラップメタル勢を聴く一方で、それと同レベルでSPEEDにも溺愛しました。「ベスト・ウィンターソングは何ですか?」と訊かれたら、「White Love」と即答できるほど冬にドンピシャの名曲だと信じて疑いません。甘く切ない美メロの宝庫で、イントロからアウトロまで、ずっと至福の笑みが零れる数少ない冬ソングです。

4. 「Still In Love With You」('74)
/THIN LIZZY

フィギュア・スケートの羽生結弦選手がソチ五輪のショート・プログラムで、ゲイリー・ムーアの「パリの散歩道」を使用したことはご存知の方も多いだろう。この曲をゲイリーと共作したのがフィル・ライノットだ。黒人の父とアイルランド人の母を持つフィル率いるハードロックバンド・THIN LIZZYが残した「Still In Love With You」は、「パリの散歩道」に勝るとも劣らぬ珠玉の名バラード。この曲は74年発表の4thアルバム『NIGHT LIFE』に収録され、音源でもゲイリーがギターを弾いている。ソウルフルで独特なクセのあるフィルの歌い回し、ブルージーな色気をたたえたゲイリーのプレイは、いくら絶賛しても足りないほど完璧な仕上がりだ。悲しいのは、すでにふたりともこの世から去ってしまったこと。

5. 「These Days」(’95)/BON JOV
I

そのTHIN LIZZYの「The Boys Are Back In Town」をカバーしたことがあるBON JOVIを最後に取り上げたい。当時ベーシストのアレック・ジョン・サッチが脱退し、4人体制で作られた6thアルバム『THESE DAYS』は、オリコンチャートで1位を記録した。内容自体は前作『KEEP THE FAITH』を踏襲する大人びたサウンドで、お茶の間を賑わせていた華やかなハードロック然とした姿は、ここにはない。それでも発売当時、抑制の効いた渋い曲調、楽曲クオリティーの高さに驚き、よく聴いていた作品だ。表題曲は枯れたBON JOVIも悪くないじゃないか、と思わせるほどメロディーが立っていた。“頑張れよ”と背中を叩くのではなく、聴き手にそっと寄り添ってくれる曲調がいい。

著者:荒金良介

OKMusic編集部

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