【yonige】前作の雰囲気も残しつつ新
しいことに挑戦
2015年8月に発表した初の全国流通盤ミニアルバム『Coming Spring』が多くの話題を呼んだガールズバンドyonige。2人体制になり、待望の新作となる2ndミニアルバム『かたつむりになりたい』について牛丸ありさ(Vo&Gu)に訊いた。
取材:高良美咲
初の全国流通盤ミニアルバム『Coming Spring』は多くの反響があったと思うのですが、バンドとしてはどう感じていますか?
『Coming Spring』が今でも売れてるっていうことに、びっくりしています。それが自信にもなったし、次の作品へのプレッシャーにもなりました。今思うと聴き手のことを何も考えずに作った、とても素直なアルバムだったなと思います。
リリース後のツアー中にドラムのかねもとさんが脱退し、2人体制になりましたが、意識などの面での変化はどのようなことがありましたか?
ネガティブな感情は持ちませんでしたね。ごっきんは黙って私について来てくれるのでやりやすかったです。
今作『かたつむりになりたい』はいつ頃から構想があったのでしょうか?
「あのこのゆくえ」のBメロの《かたつむりになりたい》っていうフレーズを去年の10月頃に思いついて、そのフレーズが今作のキーになりそうだなと思っていたんです。前作でyonigeを好きになってくれた人を裏切らずに、かつ新しいことをしたかったので、そのバランスをとることを重点にして制作しました。
《かたつむりになりたい》というフレーズが印象的な「あのこのゆくえ」は満たされない思いが綴られていますが、最終的に《世間体とは君なのだよ》という言葉がこの曲の芯になっているのかと思いました。
《世間体とは君なのだよ》は太宰 治の言葉をちょっと変えて使いました。yonigeの歌詞は太宰 治に助けられてることが多いですね。《かたつむりになりたい》については、性別がなければいざこざもなかったのにという思いから書きました。曲としては、ザ・シャッフルっていうのが初めてだったので、ドラムの展開に一番悩みましたね。
牛丸さんが企画したPVは、ハッピーエンドに見えたストーリーが実は逆再生になっていて別れで終わっているというのが面白かったです。
Mutemathの「Typical」という曲のPVを観て逆再生に興味が沸いて、“男女が付き合って別れる”っていう何の変哲もない物語を逆再生にしたら面白いと思ったんです。終わりが始まりで始まりが終わり、みたいな。
「サイドB」はリズミカルな歌を際立てる、多彩な展開を広げるメロディーが聴きどころですね。
『星のカービィ』の“フロートアイランド”っていうステージのBGMをコピーしてて、それをちょっとコードを変えてみたらカッコ良くなって。“これは絶対に使いたい!”と思って、いつも適当にコード弾いてメロディーから作るんですけど、これはギターのリフから作りましたね。なので、メロディーを付けるのに苦労しました。ギターヴォーカルとして一番難しくて、個人的に挑戦した曲でもあります。
サウンド面では前作よりもバンドの振り幅が広がって色彩が豊かになったようなイメージを受けましたし、表立った刺々しさというよりも心に引っかかるものがあり、余韻を残すのがyonigeの魅力だと改めて思いました。
さっき言った、前作の雰囲気も残しつつ新しいことに挑戦するっていう課題は自分の中でクリアーできたように思えます。とにかく前作の「アボカド」のイメージから抜け出したくて…だから、“かたつむりになりたい”っていうインパクトのあるタイトルを付けました。タイトルの意味も理解してもらえたら嬉しいです。
思い入れのある楽曲は?
「トラック」は、yonigeが高速道路で事故をしたあとに初めてポジティブな気持ちで歌詞を書きました。どシンプルな8ビートの曲にも初めて挑戦できたので良かったですね。
作り終えて改めて感じたことは?
もうちょっと自分の作る曲に自信を持っていいのかなと思いました。いつもめちゃくちゃ自信ないので。
リリース後には今作を引っ提げたツアーが開催されますが。
今回初めて自分でブッキングをしたりしたので、感謝と気合が込みあがりまくってます。
- 『かたつむりになりたい』
- SIT-1002
- 2016.07.13
- 1620円
ヨニゲ:大阪・寝屋川出身のガールズバンド。オーストラリアと日本のハーフである牛丸ありさが歌う、胸に突き刺さる日本語ロックが話題を呼ぶ。15年8月新レーベル“small indies table”より発表した初の全国流通盤ミニアルバム『Coming Spring』がロングセールスを続け大きな反響を得る中、16年7月13日に2ndミニアルバム『かたつむりになりたい』をリリース。yonige オフィシャルHP