【ODD Foot Works インタビュー】
今の、これからの自分たちそのもの
2022年9月に配信されたODD Foot Worksの3rdアルバム『Master Work』。ポップ、チル、ドープ、ロックンロールとジャンルを飛び超え、自由奔放かつ真摯に音楽と向き合った同作が、23年1月にボーナストラック2曲を加えてCDリリースされた。配信時にはSNSのハッシュタグで“超音楽宣言”と謳うほどの超自信作について、改めてPecori(Rap)、有元キイチ(Gu)、榎元 駿(Ba)が語る。
音楽をやり続けることで
階段を登れている気がする
アルバム『Master Work』を拝聴して、まずサウンドの自由さに驚き、3人の“マスターピースを作る”という気概が揃ったからこそ、それぞれの趣味趣向が存分に表れた作品なのだと感じました。メンバーの足並みが揃っている感覚はアルバム制作に取りかかる前からあったのでしょうか?
Pecori
制作前の段階では揃ってはいなかったと思っています。制作初期は“どんな音源を作るか?”というよりは、“どうやって3人の心を通わすか?”が制作のメインワークだったのかも。きっかけは複合的なものだと思いますが、例えば“制作合宿”と謳って熱海に合宿に行ったりして、半ば強制的にメンバーのみで過ごす数日を作りました。喧嘩してより関係が悪化するなんて話もよく聞くもんですから、博打的でもありましたが。結果、たぶん3人ともとても楽しかったと思っているはずで、そこからこの曲たちが生まれ出していきました。
榎元
制作開始の半年前ほどから基盤があり、制作している最中に3人の方向がまとまってきたと思っています。今回のアルバム制作が本格的にスタートしたのは「I Love Ya Me!!!」からなのですが、トラック、リリックともに“しっかりとやりきりたい”という気持ちがメンバーそれぞれに生まれ始めて。誰が口に出すわけでもなかったのですが、この曲のクオリティー、妥協のなさが無意識下でアルバム全体の基準値として設定されていた気がします。
有元
個人的にはミックス後にみんなで音源を聴いた時にグッとくるものがありました。
M2「卒業証書」は有元さんが“SMAPへの敬愛を昇華した楽曲”とのことですが、Pecoriさんと有元さんさんが共作された歌詞には少年の成長記のような展開があり、子供っぽさや青臭さを感じました。
Pecori
もともとの着想は“春に限らずの卒業ソング”というところから始まり、枝分かれ的に“つまりは華々しいポップス作るしかないでしょ!”って感じでした。3人に共通して“ポップスター=SMAP”の認識がありましたね。青臭さでいうと、サビのリリック。ラブソングを歌うとマイルが溜まっちゃうってところと、それを3人で“1、2、3”と数えちゃうところです。SMAPにもそういうリリック、キャッチフレーズがふんだんにある印象です。
有元
この曲は音数が少なく、スカッとしていて速いイメージを大事にしています。サビの歌詞も書いていますが、“愛のマイル”を数えることによって距離を数えるイメージと、マイレージが貯まっていくイメージの2種類を浮かべてもらえたら楽しいかなと考えていました。
M3「ジュブナイルジャーニー」の歌詞は「卒業証書」にも通ずる部分があるように感じます。特に《大雨に蔑んだ10代》《大雨に叫んだ20代》という部分には、十代の頃のような強気にはなれないけど、二十代の自分は恥ずかしいことも受け止めた上でハングリーに立ち向かっているという心意気が伝わってきましたが、Pecoriさん自身、ここ数年で過去の自分と向き合うことが多かったのでしょうか?
Pecori
純粋に現在29歳で、30歳目前なので、10代と20代を大きなモラトリアム期として振り返る曲を作りたいと思っていました。20代後半って一番揺れる年頃ですよね。自分の場合は、10代から20代の前半はイキりまくって怖いものなしだった頃と、少しずつ常識が身につき出して、言葉を選ぶようになっていく頃との境目がここ数年で。ただ、過去の自分も愛おしくて、それが人格から消滅してしまうのは本当に嫌だなって気持ちがあり、バランスよく形成していきたいと強く思った20代後半でした。そんな曲です。
《救えないLife〜七色に光るLight》の部分を聴いていると、表現は赤裸々ではないものの、理想と現実のジレンマだったり、歯痒い気持ちがあって過去の自分を回想しているようにも感じました。
Pecori
そこまでネガティブな気持ちを入れているつもりはないですが、20代後半って現実にぶち当たる歳で、“仕事も生活も恋愛も現実って甘くねぇ〜!(泣)”って実感する歳ですよね。みんなもそうだと思うんですけど…。でも、それでへこたれているわけでも、そう言いたいわけではなく、ただ七色に光るステージライトで音楽をやり続けることで、階段を登れている気がして、素直に嬉しいんです。
M4「Heavenly Bluetooth」はPecoriさんにとっての特別な音楽家の方への想いが綴られていますが、穏やかなサウンドで心地良く聴くことができる一方で、楽曲と歌詞から滲み出る寂しさに心が痛む感覚もあります。
Pecori
このテーマで暗い曲調はちょっとキツいというか、俺ららしくはないと思い、明るめ一択でした。あと、この曲で歌っている音楽家は、俺たちのポップな要素をすごく褒めてくれていたので、曲調でちゃんとアンサーしたいという気持ちもかなり大きかったです。