L→R 重田雅俊(Dr)、塩崎啓示(Ba)、松川ケイスケ(Vo)、細川大介(Gu)、真一ジェット(Key)

L→R 重田雅俊(Dr)、塩崎啓示(Ba)、松川ケイスケ(Vo)、細川大介(Gu)、真一ジェット(Key)

【LACCO TOWER】この作品ができたこ
とによって、LACCO TOWERが完成した

結成12周年を迎えるLACCO TOWERが、フルアルバム『狂想演奏家』をリリース。自らを“狂想演奏家”を名乗ってきた彼らにとってまさにセルフタイトルとも言える今作には、今まで以上の熱や想いがこもっていることは間違いない。
取材:高良美咲

今年で結成12周年を迎えるLACCO TOWERですが、活動を開始した頃と現在を比べて何か変化はありますか?

塩﨑
まだ昨年の話ですが、法人化したのはかなり大きな変化です。結成当初のバンドごっこからよくもまぁ会社にまでできたなと。変わらないのはそれでも“○○ごっこ”をするような遊び心は忘れていません。

サポートギターだった細川大介さんが昨年6月に正式メンバーとなり、丸1年が経ちましたが、反響はいかがですか?

塩﨑
かなり良いですよ。不思議と、我の強い4人の輪にスポッとハマってくれました。制作面においては、ギターからの発信が多くなったので楽曲の幅も広がったと思います。

昨年7月にはミニアルバム『続・短編傷説』をリリースしましたが、今改めて振り返ってどのような作品になったと思いますか?

塩﨑
これぞ、LACCO TOWERの真骨頂。自画自賛で申し訳ありませんが名盤です。バンドが振り切ったからですかね、聴いていて全然飽きません。

『続・短編傷説』を引っ提げて新体制で行なったツアーはいかがでしたか?

塩﨑
新生LACCO TOWERでは1枚目のタイトルで、ツアーも大介のお披露目の場だったので、すごく鮮明に覚えています。1本1本で確実にひとつになってきているのが分かりました。また、この5人でしっかり回るツアーも初めてだったのでケンカもあったりで新鮮でした(笑)。

そんな『続・短編傷説』から約1年でリリースされるアルバム『狂想演奏家』ですが、もともとどのような構想から作り始めたのでしょうか?

真一
前作の『続・短編傷説』の段階でできていた「蕾」を軸にして考え始めました。それから、「恋人」が早い段階でできていたというのも大きかったですね。自分的には自信作でしたので、正直この2曲が先にできていたことは、かなり心強かったです。全体的に、こういったアルバムにしようというようなビジョンは特にありませんでしたが、ベストアルバムを作るような気持ちで一曲一曲、入魂して作り上げました。

今作には10曲が収録されていますが、今回のために書き下ろした楽曲はありますか?

真一
前作の制作の時期から貯めていたネタも使っていますが、断片的なもので、「蕾」「杏子」以外はほぼ今作のための書き下ろしです。メンバーに聴かせる前に自分でボツにした曲はかなりあります。最低でも自分が納得できる曲じゃないとメンバーにも聴かれたくないので…。逆に言えば、自信なさげに持っていった曲だとしても、メンバーに聴かせるってことは自信があるってことになりますね(笑)。

アルバムの1曲目を飾るインストゥルメンタル「狂想序曲」は壮大な幕開けで、メロディーの展開も幅広くて面白いです。

真一
今回のアルバムにインストゥルメンタルを入れるというのは結構早い段階で決まっていたのですが、いざ取りかかってみると思いのほか難航して、結局できたのは最後の最後でした。普段歌メロから曲を作っていくので、歌がないと何を軸に作っていけばいいのか…イメージとしては“壮大”“不思議”“奇妙”“テンションが上がる”っていうのがあって、自分で言っておいて何ですが、意味が分からないですね(笑)。最終的にはギリギリそのイメージになったかなって自分では思ってます。ほんとギリギリですけど(笑)。

リード曲の「蕾」は《○か×かはどうでもいい》と挑戦的な歌詞、臨場感のあるバンドサウンド、耳に残りやすいメロディーで、LACCO TOWERの新しい代表曲になりうる楽曲だと思いました。

松川
「蕾」はいろんな意味で今回のキモになる楽曲になりました。もともと『続・短編傷説』を作っていた段階であった曲で、もちろん歌入れもして、歌詞も書いていたんですが、メンバー同士で話し合い“次のメインで使おう”ということになったんです。歌詞を書き直すことはよくあるんですが、歌入れしているものをもう1回やり直すのは初めてだったので、最初は咀嚼するのに時間がかかりました。《○か×かはどうでもいい》という内容よろしく、今の僕らを表す最高の楽曲になったと思います。
真一
前作に向けて作った曲でしたが、サビのイメージが浮かんだ時点で、“これはイケる!”と思いました。『続・短編傷説』の時からかなり気合いを入れて取りかかっていたし、さらに歌詞、歌がパワーアップして世に出すことができて本当に嬉しいです。

「奇妙奇天烈摩訶不思議」は風刺的な歌詞が印象的でした。

松川
もともと、世間や世俗に対してのパンク精神はなかったほうなんです、僕。それをやる勇気も根拠も僕自身になかったですし。ただ、曲りなりにも10年以上バンドをやってきて思うところもそれなりにありますし、それを表現する根拠も少しだけ自分に芽生えた気がしてました。極限まで行った感情をそのまま歌うんじゃなくて、“おい、それ違うんじゃないの?”と言える今の心境をそのまま歌にしましたね。

前作『続・短編傷説』にも収録されている「杏子」はライヴでもすでに定番と化していますよね。

松川
よくラッ子(僕らのことを好いてくれるお客様たち)に“果物曲”って言われるんですが、読んで字のごとくこの曲もその部類に入るようで。もちろんある程度そんな思いもあってこのタイトルにしたっていうのもあるんですが、僕自身すごく好きな曲調だし、“これぞLACCO”っていう曲になったと思うんですね。よくライヴで“キター!”っていう感じが両者に芽生える瞬間があるんですが、この曲をやる時はそれが訪れる気がします。

クリアで潤いのある「青年」から続く、感情的な「少女」の流れにも目を見張るものがありました。

松川
「青年」も「少女」も別に最初は考えて並べたわけじゃないんですよ。結果的にそういうタイトルが並んだという感じで。ただ、「青年」に関しては個人的にかなりうまく書けたなーという感じはあります。今回のアルバム、何曲かそういうのがあるんですが、「青年」はそのひとつですね。
真一
曲を作る時って、どうしても歌い手やバンドのイメージなんかを多少なりとも考えて作ってしまうと思うんですが、「青年」はそういったことを全部取っ払って作れた曲だと思います。自分の素のメロディーというか、作風というか。善い悪いは別として、一番好きな曲かもしれません。「少女」に関しては、曲作りの段階からピアノメインの曲にしようと思って持っていったのですが、最終的にアナログシンセメインの曲になっちゃいました(笑)。この曲が一番録り前後のイメージが変わった曲だと思います。

最後を締め括る「組絵」は、ピアノが際立ったメロディー、メッセージ性にあふれた歌詞が温かさを感じます。

真一
この曲は、はじめから最後の曲になるだろうと思って持っていきましたが、実は一番メンバーに聴かせるのが不安な曲でした。サビがキャッチーすぎる気がしてこれは受け入れられないじゃないかって気がしてたんです。でも、ケイスケが付けた歌詞を見た時、そんな不安は吹っ飛びました。“これは名曲になる!”と確信しましたね。

他にもオーケストラを思わせるような壮大なサウンドの「新世界」、シンプルなサウンドの「橙」などさまざまな楽曲が詰まった一枚になっていますね。

真一
自分たちの今、そして未来も感じさせるようなアルバムだと思います。この作品ができたことによって、LACCO TOWERが完成したと思います。
松川
まさに“狂想演奏家”。今の僕らを表現した一枚だと思います。いろいろな方向へ少しだけ旅立っていることにも恐怖がなく、逆に自信を持ってお勧めできる。今までの僕らを知っている人には“味わい深く聴きやすい”、僕らを知らない人には“驚きが多くて飽きがこない”。そんな一枚になってると思います。全部聴いてください。それで今の僕らが伝わると思います。

今までも自らを“狂想演奏家”と名乗っていましたが、今作に“狂想演奏家”と名付けた理由は?

松川
よく、アルバムにセルフタイトルを付けるバンドっていると思うんですが、僕らとしてはそんな感じなんです。“LACCO TOWERの『LACCO TOWER』というアルバムが出た”。そんな気持ちですね。決して順風満帆ではない道を歩んできた僕らを、“今”の僕らを表現した一枚にしたかった。それが一番の理由です。

中でも思い入れのある楽曲はありますか?

松川
僕は「組絵」です。出来上がってみて、逆に励まされたというか。自分自身の歌詞にこれほど励まされたのは初めてでした(笑)。
真一
全ての曲にそれぞれ思い入れがありますが、あえて1曲挙げるとしたら「新世界」ですかね。この曲のネタ自体はかなり前からあったんですが、自分としては新境地の曲でしたので、実はこのアルバムではなく次のタイミングで持っていこうと思ってたんです。収録する曲をあと1曲決めるタイミングで、試しにこの曲と別の曲を同時に持っていって、どっちがいいか訊いた時に、みんな「新世界」のほうがいいって言ってくれたんです。この曲が収録されたことにより、このアルバムの幅もLACCO TOWERの可能性も広がったと思います。

今作は、バンドにどのような影響を及ぼしてくれると思いますか?

松川
バンドのアイデンティティーが格段に上昇するような。“LACCOと言えば…”がより濃厚になってほしいと思います。

昨年に続き、7月21日には恵比寿LIQUIDROOMにてワンマンライヴ(『独奏演奏会~「狂想演奏家」発売記念~』)を行ないますが、意気込みなどあればお願いします

塩﨑
1年前と同じ場所で、同じようにリリースを引っ提げてのワンマン。確実に変わった部分と大事にしたい変わらない部分、両方を感じていただけたら幸いです。

そこで12周年を迎えるわけですが、12周年を目前に改めてLACCO TOWERとはどのようなバンドだと思いますか?

塩﨑
日本を代表するロックバンドです。

そして、8月からは今作を引っ提げて『LACCO TOWER 狂想演奏家リリースツアー「狂想旅行」』が始まりますね。

塩﨑
大事な大事なアルバムのツアーです。北海道から九州まで回ります。その時、その場所でしかできないライヴをします。しっかり見届けてください。
松川
気持ちを込めて作りました。驚くほど手作りです。そして、本当に良いアルバムになったと思っています。今回はなかなか行けない場所へも遊びに行けるので、この機会に素晴らしい出会いができればと思います。ぜひ遊びに来てください。
真一
ついに完成したLACCO TOWERを目に、耳に、焼き付けに来てください。
『狂想演奏家』
    • 『狂想演奏家』
    • IRLT-014
    • 2014.07.02
    • 2700円
LACCO TOWER プロフィール

ラッコタワー:日本語の美しさを叙情的リリックで表現し、どこか懐かしく切なくさせるメロディー、またその世界とは裏腹な激情的ライヴパフォーマンスで、自ら“狂想演奏家”と名乗り活動。自身主催のロックフェス『I ROCKS』を2014年から開催している。復活したレーベル『TRIAD』と契約し、15年6月にアルバム『非幸福論』でメジャーデビューを果たし、20年に5周年を迎えた。LACCO TOWER オフィシャルHP

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