【SWANKY DOGS インタビュー】
“目の前にあることを
やっていたら15年経っていた”
流転を受け入れた
SWANKY DOGSのバンド哲学
結成15周年を迎える盛岡の3ピースロックバンド・SWANKY DOGSが3rdアルバム『流転』をリリースした。新境地にも挑みながらバンドが持ついろいろな面を反映した多彩な全10曲は、15周年という節目に相応しい集大成的な作品になっている。
アルバムの選曲では
自分たち的なバリエーションを意識した
結成15周年を迎え、どんな気持ちですか?
洞口
実は僕ら、そういう区切りみたいなもののタイミングであまり何もやってこなかったんです。アルバムのリリースツアーのファイナルのタイミングで、8周年のイベントをやったことはありましたけど(笑)。だから、15周年もそんなに気にしてないかもしれないです。
川村
そうですね。気づいたら15周年って感じで(笑)。
では、今回のアルバムのリリースも15周年を迎えるタイミングを狙っていたわけではないのですか?
洞口
ええ(笑)。2019年7月に『Light』というアルバムを出して、そのリリースツアーが終わってからずっと楽曲制作をしていたんですけど、このタイミングでリリースすることになったのはたまたまです。なんなら、もうちょっと早く出したいぐらいの気持ちがありました。
とはいえ、バンドを15年続けるってなかなか大変なことだと思うのですが。
洞口
でも、本当に“気がついたら”というか(笑)。基本的にライヴを中心に活動してきたんですよ。音源を作って、ツアーを回って、また音源を作って…というのを繰り返しながら、動員を増やしたいとか、盤を売りたいとか、そういうことも目標にしつつやってきたので、それを繰り返していたら15年経っていたんです。振り返れば大変なこともありましたし、今思えばバンドが分解しそうな瞬間もありましたけど、それを“めちゃめちゃ頑張って乗り越えて、15年もやってきたぞ!”という感じはそんなになくて。目の前にあることをやってきて、自分たちの作りたいものを作っていたら15年が経っていたって。それが良かったとか悪かったとかも、特に思っていないんです。もうちょっと区切りを意識していたら、いろいろできたのかなとも思う一方で、そういうことを意識しなかったからこそ続けてこられたとも思うし。そう考えると、いいことだったのかなと思います。
長谷川
ただ、その15年はかなり密な日々を過ごしてきたと思います。15年続けてこられたのは自分たちがやりたい音楽を発信してきたからこそというのもあるんですけど、少なからず待ってくれているファンの人やSWANKY DOGSにかかわってくれる人の想いも大きかったと思うので、せっかくだからアルバムを出したあと、15周年の何かをやりたいとは思っているんですよ。
『流転』の資料にも“15年が詰まった集大成の作品になっている”とありましたが、まさにSWANKY DOGSが持ついろいろな面が表れた作品だと思いました。曲を作り始めた時は、どんなアルバムにしたいと考えていましたか?
洞口
特にコンセプトはなかったので、何十曲も作って、その中からスタッフと一緒に曲を選んでいきました。アップテンポのロックナンバーやシーケンスでストリングスを入れたもの、鍵盤を入れたもの、学生の頃に聴いていたようなメロディックパンクっぽい曲もあるし、もっと歌に寄った曲も作れると思っているので、自分たち的なバリエーションというか、偏らないように意識はしていたかもしれないです。
たくさん作った中からバリエーションを考えて、今回の10曲をスタッフと一緒に選んだと。
洞口
そうです。僕らだけの判断だけだと、やっぱり曲が偏ったりするんですよ(笑)。だから、そこのバランスをスタッフに取ってもらいつつ、何回かやりとりしながら決めていきました。
3人だけで選ぶと、例えばどういう曲に偏りがちなんですか?
洞口
そうかもね。それも含め、やっぱりバンドっぽい曲が多くなっちゃうのかな? もちろん、レコーディングする前にアレンジで味変していくみたいなところはあるんですけど。
10曲の中で個人的に“この曲が入って良かった”と思うものを挙げるとしたら?
長谷川
「君と追想」です。サビメロは俺が考えたんですよ(笑)。歌詞もイメージを洞口に伝えて書いてもらいました。歌詞も含め、結構熱量がある曲なんですよ。曲順としては真ん中に入っているけど、アルバムをグッとタイトにしてくれる曲だと思います。
川村
ほぼ同じ理由なんですけど、僕は「季節の変わりめに」です。
川村
歌詞も“こんな感じにしてくれ”って言葉だけ並べて、洞口くんに渡したので、入って嬉しかったです。
洞口
僕は「息も出来ない」。なんか好きなんですよ(笑)。僕らっぽいと思ってくれる人もいると思うんですけど、あんまりやってこなかったリズムとかアレンジにしたのもあるし、歌詞も自分が今、言いたいことを卑屈になりすぎず、変に前向きにもなりすぎずにメロディーとちゃんと噛み合った感じで書けました。
今、挙げていた3曲はバンドの新しい面を印象づける曲なのかなと聴きながら思ったのですが。
読者に分かりやすく伝えるために、こういう言い方をしますけど、「季節の変わりめに」は音像がちょっとUKロックっぽいですよね?
狙ったのですか?
洞口
その曲だけにってことではなくて、以前からそういうイメージでやってきたんですけど、僕らの旨味みたいなものを明確にしたいと話している時、“アメリカじゃないよね”となったことがあって(笑)。あえてUK感をめちゃめちゃ意識して作った曲もあるんですけど、そういうのが滲み出るといいなと思いながら作っているところはあるんですよ。
「アイリス」からもそんなニュアンスを感じたのですが、ギターの音色も歪みだけではなく、揺れ系や空間系のエフェクターを使ってキラキラと鳴らしているところが、このバンドの魅力なのかなと思いました。
「息も出来ない」は歌とリフを中心に隙間を生かしたアンサンブルも聴きどころではないかと。
洞口
僕らの曲はギターのコードがジャーンと鳴っていて、隙間が埋まっているようなものが多かったので、そうじゃない曲を作りたいと思って作ったところはあったかもしれないです。これまであんまりやってこなかったチルっぽい感じというか、そういうものを少し出せればいいなというのはありましたね。
「君と追想」は歪ませたコードがバッキングで鳴っているんですけど、フランジャーをかけたブラッシングのトーンが、さっき長谷川さんがおっしゃっていた熱量という意味で、他の曲にはない聴きどころなんじゃないかと思います。
長谷川
あれ、どのギターでレコーディングしたんだっけ?
洞口
ギブソンのセミアコじゃない? 基本的にライヴではずっとレスポールなんですけど、レコーディングではあまり使わなかったですね。「アイリス」もそうかもしれない。ストラトかセミアコだったと思うので、今回はレスポール、レスポールしていない曲ができましたね(笑)。
ギターの音色を変えたかったのですか?
洞口
いろいろなギターを持っていって、どれが良いかをレコーディングのエンジニアさんと決めるんですけど、結果的に曲にハマったのがそれだったんです。