とた

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【とた インタビュー】
成長が生んだ
1stフルアルバム『oidaki』

DAWを用いた楽曲制作に加え、アートワークや映像までセルフプロデュースを行なう2000年代生まれのベッドルームアーティスト・とた。鋭い感性と冷静な視点が巧みに編み込まれた1stアルバム『oidaki』が生まれた背景に迫った。

思うままに書いているけど、
独りよがりにはなりたくない

1stアルバム『oidaki』はさまざまな物語が巧みに交わった、一本の小説を読んでいるような気持ちになる作品でした。昨年からデジタルシングルをリリースなさっていましたが、アルバムのイメージが湧いたのはいつぐらいでしょうか?

昨年の夏から秋にかけてですね。「君ニ詠ム。」は始まりをイメージして作った曲なので1曲目に置きたくて、そこを起点にもともとあった曲を関連づけて、そのあとに“もっとこういう曲があったほうがいいかも”と思って「せーかいせかい」や「こうかいのさき」を作りました。

とたさんは“フロム・ベッドルーム”のスタンスを大事にしていますが、その理由というのは?

自分に合っていたのがこのスタイルなんだと思います。飽き性だったり気分屋だったりして、人に合わせるのがちょっと苦手で。個人で制作することが好きなんです。普段制作している場所が自宅のクローゼットで、こじんまりとした空間だと制作意欲が湧くというか。狭いところのほうが情報量が少ないから自分自身と向き合いやすいので、イメージをそのまま曲にできるんです。

ご自身から生まれるものを大事にしていると。でも、楽曲の主人公は必ずしもとたさんがそのまま生々しく反映されているわけではないですよね。

自分自分のことをありのままに歌えるほど、そんなに素直じゃなくて。でも、主人公になりきれるほど器用でもないので、物語と自分の成分がごちゃ混ぜになってます。それぞれの曲の主人公の中にある小さな感情の一部は自分から出てきたものなんですけど、人間味がすごく強くて、それをそのまま出すのは恥ずかしいんです(笑)。

確かに小さい感情なのに、ものすごく人間味にあふれている印象はあります。

普段言えないことって感じですね。それを音楽では言いたい放題に言っています。あと、私がもともと忘れっぽいところがあって、一週間前のことはほぼ何も覚えていないみたいな状態で…最近どんどんそれが加速しているんです。でも、歌詞に書いてある感情が一番乗りやすい音を選んで曲を作っているので、曲として残しておくと自分の抱えていた気持ちがすぐに思い出せる。だから、曲ができていくごとに、自分の思い出のアルバムみたいになっていきそうだなと思っています。

とたさんが書かれる曲は、周りが見えないくらいの高熱な感情と、全てを冷静にとらえる客観的な視点が両立しているのも特徴的だと思います。その性質はSNSで広まった「紡ぐ」の台詞部分で“独りよがりになりたくない”とおっしゃっていたので、そのメンタリティともつながるのではないでしょうか?

“独りよがりになりたくない”と言いつつ、自分の思っているまま、書きたいままに書いていて。思うままに書いているけど、独りよがりにはなりたくないし、誰かに聴いてもらいたい。そういう葛藤が曲になっているのかな? 曲を作る時はひとりなのですが、その曲のもとになっている出来事や気持ちは自分ひとりで起こるものではなくて。人と話している中で感じたことから作ることが多いなと、「紡ぐ」をSNSに載せた時に思ったんですよね。

アルバムタイトルにもなっているお風呂の“追い焚き”も、長風呂でぬるくなった時は自分のために温めるけど、誰かが入ったあとに自分が入るためや、自分のあとに誰かに入ってもらうためのように、自分以外の誰かが介入した時に使うことが多い気がします。

あぁ、確かに。“oidaki”にはいくつか意味があって。私はめちゃくちゃ長風呂で、2時間くらい入っていて、その間に考えごとをしているんです。そういう時間に聴いてもらえたら嬉しいという気持ちから結びついた言葉でもあり、もし私の音楽に対する熱が冷めちゃっても、自分がこれを聴けばその熱量を“追い焚き”できるようになればいいなと思ったんです。あとは、自分の過去や経験から出てきた言葉が多いので、いつかこの幼さみたいなのも追いかけて抱きしめられる、“追い抱き”できるようにという意味も込めました。人とかかわらなかったら生まれなかった曲がすごく多いから、おっしゃっていただいたことはすごくしっくりきました。

アルバムの前半には「君ニ詠ム。」を筆頭に瑞々しいラブソングがあり、伏線のように「薔薇の花(in the bedroom)」が置かれ、ご自身のインドアな側面を派生させた「あしたてんき」があり、そのあとには「一弦」「せーかいせかい」「こうかいのさき」と、とたさんご自身が主人公と映る楽曲が続きます。

その3曲は中学生の頃の自分を思い返しながら作った側面が大きいかもしれないです。普段はすごく忘れっぽいのに、その頃のことは思い出したり、思い返すことが結構多いので、自分の中で消化しきれていないことなんだろうと思ってはいて。だから、その頃の気持ちは自分にとって、忘れたくない大事なテーマでもあるんです。自分っぽさが滲みまくってるかも(笑)。

「一弦」には頑張りすぎてしまう姿や、完璧を求めすぎてしまう心境が吐露されていますよね。

この3曲の中では「一弦」が古い曲で、ちょうどギターの1弦が切れた時に、勉強を頑張りすぎていてストレスを抱えていた自分を思い出したんですよね。その当時に“頑張りすぎも良くくないな。無理しない程度に頑張れたらいいな”と思ったので、1弦が切れたこととそれを混ぜて歌詞にしようと思ったんです。いろいろとひとりで思考を巡らせるようになったのは、頑張りすぎてしまった経験からなんですよね。だから、音楽を作るようになったきっかけでもあるんです。
とた
アルバム『oidaki』

OKMusic編集部

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