L→R 宮崎良太(Ba)、くまおかりお(Dr)、アサノチャンジ(Vo&Gu)、岡村耕介(Gu)

L→R 宮崎良太(Ba)、くまおかりお(Dr)、アサノチャンジ(Vo&Gu)、岡村耕介(Gu)

【SHIFT_CONTROL インタビュー】
さらに自分たちを
ブラシュアップしていきたい

全国デビューから3年4カ月。待望の1stフルアルバム『MakeMyName』が完成した。ポップなメロディーをキャッチーな曲作りとテクニカルかつエモーショナルなポストハードコア~オルタナロックに落とし込むSHIFT_CONTROLサウンドはさらに磨きがかけられているが、同時に焦燥感と衝動にあふれ返ったものになったところが重要だ。全曲の作詞作曲を手がけるアサノチャンジ(Vo&Gu)がアルバム制作の舞台裏と曲作りのこだわりを語ってくれた。

今回は曲を作っていて、
心が折れそうになったこともあった

『MakeMyName』の全13曲を聴いて、改めてSHIFT_CONTROLはカッコ良いロックバンドだと思いました。1stアルバムを完成させた手応えからまず聞かせてください。

出来上がった曲は、これまで作ってきた曲やSHIFT_CONTROLがやってきたライヴを踏襲した上で、さらにカッコ良いものになったとシンプルに思っていますし、いろいろな人に刺さると信じています。これまでリリースしてきた作品の中で曲数も一番多いので、これが今のSHIFT_CONTROLなんだとみんなに示せる一枚になったと思います。

1stアルバムとはいえ、すでにミニアルバムを3枚リリースしていることに加え、前作の『inVisible』(2021年11月発表のミニアルバム)では新しいことに挑戦しながら、楽曲の幅を広げることに積極的に取り組んでいましたが、『MakeMyName』はその延長線上にある4枚目の作品と言うには、焦燥感や衝動の熱量が作品全体にあふれていて、4枚目の作品とは思えないくらい1stアルバムらしい1stアルバムなんじゃないかと。

冷静に聴いてみると、もしかしたらアルバムとしてのバランスはあんまり取れてないかもしれないと、僕はちょっと思っているんです。曲の雰囲気や振り幅が偏っているかもしれないと思うところもあります。ただ、それは狙ったわけではなく、前の3枚に比べて、僕自身のパーソナルなところが表に出てきた結果なのかもしれない。苦労話をしたいわけではないんですけど(笑)、曲数も多かったせいか、今回は曲を作っていて、心が折れそうになったこともあって。単純に曲ができなかったこともありましたし、1年ぐらいかけて、今回のアルバムの曲を作ってきたんですけど、いい曲ができているにもかかわらず、発表できないことにもどかしさを感じたこともあったし、制作が間に合わず、リリースが2か月ぐらい後ろ倒しになってしまったことに不甲斐なさを感じたりもして。焦燥感や衝動が感じられたというのは、その時の僕の心の内が出ているからかもしれないですね。

ミニアルバムも含めて4枚目の作品なので、もうちょっと作り込んだと言うか、ウェルメイドなものになると思っていたら、ロックバンド然とした作品になっていたのでちょっと驚きながらも、そこがすごく良かったのですが、それはアサノさんのパーソナルな部分が反映されたということだったのですね。

完成した音源を聴きながら“不器用だな”と思いました。音楽を作ることに対して、一切媚びることや妥協することができないんです。今、流行っているというか、影響力があるロックバンドの曲とは違うものを作っていると感じていて。やろうと思えば、流行りのビートだったり、ジャンルだったりに寄せることもできるとは思うんですけど、それをやりたいと思えない。やったところで楽しく思えないだろうし。もちろん今回の楽曲にも今の流行っている音楽の要素を入れてはいるんですけど、僕がそれをやると自分が10代の頃に影響を受けた2010年代のロックに昇華されていることに改めて気づきました。

1年かけて曲作りに取り組んできたそうですが、22年5月に「Navy」、9月に「JUMP」、12月に「YOURAY」を配信リリースしてきました。その3曲は曲ができた順にリリースしていったのですか?

そうです。ただ、配信リリースした3曲以外にも曲はできていて…例えば9曲目の「シオン」は「JUMP」と同じタイミングでレコーディングしたんです。なので、その時々で出来上がった曲の中から“これはシングルとしても出していこう!”という曲を配信リリースした感じです。

「シオン」は疾走感に満ちた演奏と胸を締めつけるようなメロディーがアルバムの終盤の流れを加速させるハイライトのひとつではないかと思います。

メンバー間でも“これがリードでしょ!”ってことになっていたんですけど、なかなか世に出せないってところでもどかしさがありましたね。

ところで、「Navy」と「JUMP」の間に何か心境の変化があったんじゃないかと感じたのですが。「JUMP」、その次に配信リリースした「YOURAY」ともにポップで、それに加えて「YOURAY」はユーモラスなところもあるのですが、「JUMP」以降、アサノさんの中で焦燥感や切迫した気持ちが高まっていたように感じられたんですよ。

なるほど。確かに曲はキャッチーだけど、「JUMP」は泥臭いものが歌詞にはあるかもしれないですね。冒頭の《アスファルトを踏みしめて キラキラした夢を見てる/今しゃがみこんだら最後 二度と立てない》なんて特に。指摘されるまで、全然意識していなかったですけど、振り返ってみると、その頃にメンバー間で1回、大きな喧嘩があって(笑)。ライヴの集客も増えてきて、ちょうどバンドが波に乗っていた時だったんですよ。だから、ライヴもいっぱいやりたいし、その上で曲も作りたいと僕は考えていたんですけど、だんだんライヴと曲作りのペースに無理が出てきてしまって。しかも、僕の曲作りが間に合わなくて、レコーディング間際にデモを上げるもんだから、僕以外の3人が“ちょっとペースを落としたい”って。それで、話し合いをたくさんして、やりたいことや目指すべきところをしっかり定めながらやっていこうということで、今はより良い関係になっているんですけど、喧嘩したことが曲作りに与えた影響はあったかもしれないです。

そんなことがあったんですか!? その後、どんな順番で曲を作っていったのですか?

そこからNo Big Deal Recordsに入る前に自主リリースしたCDに入っていた「InTheDebris」「ペトリコール」「numb brain」を再録しようということになって。それはギターのおかむ(岡村耕介の愛称)とドラムのくまおかりおが加わって、現在のラインナップになった時から話していたことなんです。自主盤に入っていたオリジナルでは、ふたりは演奏していないんですけど、曲そのものは自分たちを引き上げてきてくれた力のある曲だという共通認識がメンバーやNo Big Deal Recordsのスタッフにあるんですよ。だから、いつか現在のメンバーで再録して、リリースしたいという話はしていたんですけど、そのタイミングが今回だったということですね。

アレンジは変わっているんですか?

そうですね。当時と現在では曲作りに対する考え方が違っているところもあるので、多少変えている箇所もあります。

例えば「numb brain」の2番でギター、ベース、ドラムがユニゾンでリズムを刻むアレンジは最初からあったのですか?

ありました。今はPCで曲を作っていますけど、当時はまだPCを使っていなかったので、レコーディングの場で考えたんですよ。

「ペトリコール」は演奏するのが難しそうですね。

難しいですけど、ライヴで結構やってきているので、みんなもう慣れましたね。僕が変拍子を使うことに凝っていた時に作った曲です(笑)。

《溶けた音が僕の中で混ざる/雨は未だ止まない》と歌うメロディーの繰り返しがすごく耳に残ります。

実はあのメロディーは野暮ったいというか、あまりロックバンドっぽくないというか、尖っていないのっぺりしたメロディーなんです。それを前半と後半でコードの尺を半分にして、繰り返しの野暮ったさをなくしていたりとか、コーラスの入れ方も主旋律に対してではなく、ツインヴォーカル的なアプローチにしていたりとか、飽きずに聴かせる工夫をしているんです。さらに言えば、3拍子を3拍子っぽくないドラムの叩き方をすることで成り立たせている曲なので、そこの繰り返しがいいと思ってもらえると嬉しいです。

曲作りを進めながら曲の振り幅も意識していたと思うのですが、振り幅を意識して作った曲や、できた曲はありますか?

最後にできたのが「ニヒル」と「愛されたいくせに」と「MakeMyName」なんです。

全然違うタイプの3曲ですね(笑)。

そうなんですよ。その中で一番苦労したのが「MakeMyName」。バラードを作りたいという気持ちがずっとあったんですけど、どうしてもできなくて。というのは、媚びたくない、妥協したくないという気持ちが強すぎて、バラードバラードしている曲を選択できなかったんです。何回もトライしてはボツにしてというのを繰り返して、最後の最後にやっと辿り着いたのが「MakeMyName」だったんですけど、結果的にアルバムタイトルにもなる、すごくいい曲ができたと思います。今回、一番思い入れがありますね。

リズムが不思議なのですが、この曲は何拍子になるんですか?

とらえ方によって4にも3にもなっちゃうんですけど、基本はいわゆるハチロクのリズムです。ハチロクの曲には名曲が多いんですけど、ハチロクらしさをあまり出したくないという僕の捻くれたこだわりで、こういうリズムになりました。ハチロクの曲はこれまでに何度かトライしたんですが、“あの曲っぽい”とか“ハチロク感が出すぎる”とかってところでなかなか完成に至らなかったんですけど、これはいいバランスでできたと思います。

ハチロク感を出さない工夫もしているのですか?

♪タタタ・タタタ・タタタン〜というハチロクのリズムに対してのポリリズムを使っているんですけど、ギターとベースのアルペジオやバスドラのキックで、細かい2拍子を同時に鳴らしているんです。

結果、SHIFT_CONTROLならではのバラードになったと。

そうですね。あと、「ペトリコール」と同じようにサビのメロディーが野暮ったいというか、あまり起伏がないんです。それに対してコードの変化で音が入れ替わっている感じを出して、バラード特有の間延びを打破しようとしました。
L→R 宮崎良太(Ba)、くまおかりお(Dr)、アサノチャンジ(Vo&Gu)、岡村耕介(Gu)
アルバム『MakeMyName』

OKMusic編集部

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