【コレサワ】全然カッコ良いことは言
えないけど、いつもポジティブであり
たい

シンガーソングライター・コレサワが、4月29日に初の全国流通盤となるEP『君のバンド』をリリース。どれもポップでポジティブで、ユニークな彼女の人柄をそのまま切り出したような4曲を収録する今作について訊いた。
取材:高良美咲

EP『君のバンド』の4曲は等身大を歌っていて、とても共感できました。まずは、ここに至るまでの経緯をおうかがいしたいのですが。

最終まで行くとSHIBUYA-AXで歌えるというオーディションが高校3年生の時にあって、それがきっかけで曲を作り始めました。

その頃に作っていた曲と今作っている曲は、何か変化はありますか?

もう全然違いますね、あの時の曲は黒歴史なんで(笑)。

当時はどのような曲を作っていたのですか?

女性シンガーの有名な曲しか聴いたことがなくて、“未来がきちゃうけど、好きなことをやりたい”っていう普通の歌を歌っていました(笑)。昔は弾き語りばかりだったんですけど、今はポップなバンドサウンドが好きなので、曲はガラッと明るくなりました。

今作のタイトル曲「君のバンド」はやはりポップで、描かれている“私の好きなバンドは売れなくて、君の好きなバンドは売れている”という物語もユーモアがありますよね。この曲は、ライヴでは前からやっているのですよね?

ライヴでは1年くらい前からやっています。自分の音楽活動のことで悩んでいた時に、アーティストの友達に相談をしていたら、“私はコレサワの曲好きだけど、私の好きなアーティストは全然売れないからね”って言われたんです。確かに、インディーズでいい曲を歌っている人はいるけど、まだ世間に広まっていないというか。自分もそうだし、そういう人たちがいつかみんなで一緒に売れたらいいなって。そのひと言がきっかけで曲のイメージとメロディーと歌詞が出てきて、結構すぐに作れた曲です。

友達がきっかけになって書いた歌なのですね。歌詞の中に出てくる《好きな映画は園子温の「恋の罪」》のような例えが絶妙だと思いました。

たまたま、この曲をつくった1週間くらい前に園子温さんの『恋の罪』を観たところだったんです。自分の好きな作品だけど、誰もが知っている作品ではないので、例えるにはすごくいいなと思って。

もともと人と違うものを好きになるタイプですか?

いや、私は「君のバンド」で言うと“君”のほうなんです。テレビで流れる音楽くらいしか知らなかったんですけど、高校生になって軽音部に入ったのがきっかけで、ライヴハウスで歌うようになったんです。そこで、いい歌を歌うアーティストがいっぱいいるっていうのを知って、そこからはバンドも聴くようになりましたね。

なるほど。MVではオムライスにソースをかけているシーンがあって気になりました。

私、お寿司を醤油ではなく甘だれで食べるんです。でも、甘だれだとパッと見で分からないのでオムライスで分かりやすくしました。オムライスはとんかつソースではなく、デミグラスソース派です(笑)。

(笑)。初の全国流通盤の表題曲に、この「君のバンド」を持ってきた理由は?

これがライヴをしていて一番お客さんの反応が返ってくる曲だったので、全国で出したらもっと返ってくるのかなって。唐突な歌詞だけど、それがどう受け入れられるのかっていうのも知りたかったんです。

確かに、歌い出しからインパクトがあります。

普段口にはするけど、言いふらしたりはしない言葉だからインパクトがありますよね。あまり歌わないような歌詞を歌っちゃったなというのはありますけど、キャッチーになったのですごく好きです。

今作には「君のバンド」の他に3曲入っていますけど、他にはどのような曲を入れようと思ったのですか?

私は「君のバンド」さえ聴いてもらえれば、究極では何でも良かったんです(笑)。これを!というのは特になかったんですけど、歌ってきた曲の中でもう一度録り直したくて「わんちゃん」を入れたり。「笑えよ乙女」はバラードも好きなので、こういうのも聴いてほしいなと思って。バランスは考えました。

「洗濯物」は書き下ろしですか?

そうです。ライヴに来てくれたお客さんが聴いたことのない曲を入れたくて、唯一今回のために書いた曲ですね。

もの悲しさをポップに描いていますけど、前向きですよね。

ザ・ポジティブなんで(笑)。考え事はもちろんありますけど、そんなに思い詰めたりはしないし…悩んでいる子がいても、私がポジティブなのでうつったり。

この曲も、何か経験がもとになっているのですか?

これは半分実話で、半分は妄想です。お母さんに任せっ切りで、ひとり暮らしをするまで自分で洗濯をしたことがなかったんですよ。1カ月くらい友達の家に住まわせてもらった時に、“家族だと甘えちゃうけど、誰かのためだったら頑張って洗濯もできるんだな”って思ったんですね。

それが、《一人の時はできなかったこと 君のためならなんとかできた》というところにつながるわけですか?

そうですね。ひとりだと怠けるじゃないですか(笑)。けど、誰かと住むということは洗濯物が倍になるということで、すぐに溜まっていく。だから、誰かがいたらやっちゃうんですね。

やったことはなかったけど、できちゃったんですね。

できちゃうんです(笑)。私、家事の中で洗濯が一番好きなんですよ! ひとり暮らしを始めた時は、ずっと洗濯機が回っているのを見たりしていて、この歌とは反対になっちゃうんですけど、ひとり暮らしをして洗濯の良さに気付きました。干すのが好きなんです。しまうのがダメなんですけど、洗濯機を回して、干す時が一番幸せなんですよね…。

最初は、浮気された歌かと思いましたよ(笑)。

解釈は、みなさんに自由にしてもらえると思います(笑)。作った後は好きに解釈して好きに聴いてもらいたいです。

個人的には「笑えよ乙女」が一番好きな曲でした。

ありがとうございます! 女の子に向けた歌なので嬉しい!

《何になりたいのかも分からない今だから》というところは、今22歳だと周りは大学を卒業したり、選択する時期だし、同年代に刺さると思いますよ。

そうなんです。最後に選択できる時期ですよね。一時期、当時通っていた学校にも行けずに家に引き籠ってしまった時期があったんですけど、その生活から抜け出したくて作った曲でもあるので、自分に向けた曲でもあるし、同じような女の子に届いたらいいなと思って作りました。《何になりたいのかも分からない今だから 何にでも変われるってこと》というところは、漫画に描いてあったんです。ある女の子が“何になりたいか分からない、みんなは夢を見つけているのに”って悩んでいる時に、お母さんが近所の空き地に連れて行くんです。“ここには何もないでしょ、だから何でも好きなものを建てられるんだよ。何もないのは何にでもなれるってことだよ”って。

これも前向きですよね。でも《ふつうの乙女に生まれたあたしだから悩めること》って書いていますけど…。

私って、普通だと思うんです。ずっと歌手になりたいとは思っていたけど、歌手は可愛くて、細くて、18歳くらいでデビューしないとダメだと思ってて。これを書いたのはハタチくらいなんですけど、“ハタチでここにいたらダメだな、やっぱりうちは普通なんだ…”と。悩み事もたくさんあるし、自分自身、自分で嫌いなところばかりだし。普通の人だからこそ悩めるのかなと思って。天才だったら今頃こんなことしてないです(笑)。

その考え方から出てくる表現の方法は普通じゃないと思いますよ(笑)。その考えは、2年経った今でも変わらないのですか?

はい。でも、“普通”って言われるのは嫌いなんです!(笑) だけど、そんなに特別な存在ではないと思っているので、“普通”という言葉を使いました。

この曲は、弾き語りから始まってバンドサウンドになりますよね。他の曲も弾き語りから作ると思うのですが、アレンジはどのようにしていくのですか?

この曲は淡々としていて、ずっと同じアレンジだと飽きると思ったのでこうしました。いつも、弾き語りから作っていきますね。打ち込みで大まかなキメ、ドラムとキーボードを入れたものをバンドメンバーに渡して、その後はサポートメンバーに任せています。

なるほど。あと、「わんちゃん」は“そうなるか!”って度肝を抜かれました(笑)。この曲は、人に置き換えることもできますよね。

たぶん、これを聴く人は、登場する相手が、犬か人間か考えると思います(笑)。これは上京して初めて作った曲で、音楽のノウハウも何もないまま作ったので変な歌詞になっているんですけど、それが逆に面白いって言ってもらえました。これを書いたのは4年くらい前で、18歳の時ですね。大阪に住んでいた頃は犬が飼いたくても飼えない家だったので、近所の犬を触れるのがすごく嬉しかったんです。初めて東京に出てきた頃、恵比寿に行ったときにすごく可愛いチワワがいて、“触っていいですか?”って触ろうとしたら、飼い主さんにやめてって感じで離されちゃったのがショックで。“東京ではこんなことがあるの!?”と思って、次の日に自転車に乗りながら作った曲です。普通に触りたかっただけなんです。でも、そのわんちゃんは私のものじゃないし…だから、触るのって許可がいるんだと思って。

でも、ネガティブなこともポジティブに昇華しているので、“こういう考え方をしたら、幸せに生きられるんだろうな”と思いました。

高校の時から、“お前みたいな考え方できたら幸せだよな”ってよく言われるので、すごいポジティブだし、幸せに生きているんだと思いますね(笑)。なので、深く考えちゃう人にこれで元気を出してもらえたら嬉しいです。

アートワークも凝っていて可愛いし、ポップで楽しい一枚になりましたね。

やっと、“コレサワです!”と挨拶に行ける手土産ができました。今まではコレサワって何だろう?って悩んだりもしたんですけど。私は全然カッコ良いことは言えないけど、ポジティブでありたいとは思ってます。私がこっち(東京)に来て、大阪の仲良い子が“お前がいた時は、バカなようなことを言って悩みを吹っ飛ばしてくれてたよね”って言ってくれて…そう思ってくれていたのが嬉しくて。それを、曲を聴いてくれている人にも伝えられたらいいですね。人見知りですけど、明るいです!

リリース後はどのような活動をしていきたいですか?

知ってもらえる機会が増えるということは、ライヴにいろんな人が来てくれるかもしれないので、その1個1個を大事に、お客さんが楽しめることもやっていけたらと思うし…ダイエットもしたいと思います!

そっちですか!?(笑)

このCDを聴いて来てくれた人の期待を上回るようなライヴができるように頑張ります!(笑)。
『君のバンド』
    • 『君のバンド』
    • RECO-002
    • 2015.04.29
    • 1080円
コレサワ プロフィール

コレサワ:大阪府出身のシンガーソングライター。中毒性のある声、POPなメロディー、日常の風景を独自の視点で切り取った歌詞が話題に。メディアには顔出しはせず、“れ子ちゃん”と言われるクマのキャラクターがビジュアルを担当する。コレサワ オフィシャルHP

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