【ENTHRALLS】まだ知らない自分に出
会う30分34秒の旅

結成から約1年、異例とも言えるスピードでさまざまな大型イベントに出演を果たすなど、注目を集めてきたENTHRALLSが2ndミニアルバム『合法的浮遊』をリリース!
取材:高良美咲

ENTHRALLS は、昨年の2013年春に結成されたそうですが。

井上
同じ大学の同期として出会い、私が声をかけて結成しました。余談ですが、“遅刻しなさそうな人”を選んで声をかけました。

“ENTHRALLS”(エンソロールズ)というバンド名の由来は?

井上
“Enthrall=心を奪う、とりこにする”という単語を見つけて“これだ!”と思いました。最後の“S”は親しみやすいかな?と思って付けました。

ENTHRALLSの楽曲は井上さんのハイトーンヴォイス、さらに“劇場型ピアノロックバンド”と謳われる、ピアノとバンドのアンサンブルが特徴的ですが、制作の時に意識していることはありますか?

井上
私が曲を作る時に気を付けているのは、歌っていて気持ちの良いメロディーを作ることと歌詞のどこかにグッとくる部分を作ることですね。それから、各楽器のリフやフレーズは本当に大切だと思うので、耳に残るかどうかみんなで話し合います。

そんな楽曲のルーツとなった音楽は、メンバーそれぞれどういうところから?

井上
3歳頃からクラシックピアノをやっていました。両親から教えてもらった歌謡曲等がルーツになっていると思います。物心ついて一番夢中になったのはスピッツです。Feistも好きです。
青木
大学時代に友人からBen foldsを教えてもらい、“こんなロックなピアノがあるのか!”と衝撃を受けました。そこから自分のプレイにもBen foldsのような肉厚なバッキングプレイが多くなりました。
中井
洋楽の影響を受けました。高校生の時、友人に薦められたThe Offspringを聴いて衝撃を受け、そこからGreen Day、Weezerなどロックバンドを聴くようになりました。そういったバンドの影響が根底の部分にあると思います。
吉田
高校生の時に部活の先輩からバンドに誘われたのがきっかけでバンドや音楽に興味を持ち、当時流行っていたHAWAIIAN6、Hi-STANDARD、dustbox等に影響を受けました。

結成直後の5月には初の全国流通盤『PASSAGE』をリリースしましたが、多くの人に手に取ってもらったことや、ライヴで演奏してみてどうでしたか?

井上
お店に自分たちのCDが並ぶのは初めてだったので、不思議な気持ちでした。友達からメールがきたり、CDを買ってくれた方がTwitterでつぶやいていたり。やっぱり嬉しかったですね。ライヴでは「元気でいてね」で泣いてくれる人が結構いて、もともと泣きそうになりながら歌ってたんですが、もらい泣きしそうになったこともあります。リリースしたことはもちろん、それをきっかけにフェスに出演できたことも大きくて、以前より責任感を持てるようになったかなという気はします。お客さんを楽しませる責任がある、という(笑)。曲に対するジャッジも以前より少し厳しく見られるようになったと思います。

結成後すぐに『FUJI ROCK FESTIVAL’13』『SUMMER SONIC 2013』への出演など、リリースのみならず意欲的な活動を行なっていますが、結成当時と現在でバンドとしての変化はありましたか?

井上
ありました。全員内向的で、いわゆる暗めな性格なのですが、音楽にもかなりその部分が出ていました。ライヴの演出も最初から最後までズーンと重い感じで、お客さんとの距離を作りがちだったのが最近はかなり明るく、踊れる曲も多くなってきたので、よりお客さんに楽しんでもらえるようになってきたかなと思います。性格も少し明るくなったと思います(笑)。

(笑)。大きなステージに立った時の心境や感想を教えてください。

井上
『FUJI ROCK FESTIVAL’13』の時は、すごく緊張していました。深夜1時頃に出演したんですが、寒くて吐く息が白くて、それを見て気持ちを落ち着かせようとしていたのを覚えています。『FUJI ROCK FESTIVAL’13』も『SUMMER SONIC 2013』も本番は楽しくて、あっと言う間にすぎてしまって、観てくれたお客さんやわざわざ駆けつけてくれた友達が“良かったよ!”って言ってくれて。次の日、豪雨の中、屋台みたいなところで相席した外国の方が“観てたよ! ノスタルジーで良かった”と言ってくれて一緒に写真を撮ったり。豪雨でもめちゃくちゃ暑くても、楽しみたい!っていうお客さんのオーラをビシバシ感じたし、野外ならではの解放感もあり、私も負けじと楽しんだつもりです。また出演したいと強く思いました。

そんな経験などを経て3月19日にリリースされたミニアルバム『合法的浮遊』は、幕開けを飾る「恋の罪」からENTHRALLSらしいピアノとバンドサウンドが広がりますね。

井上
ストレートなラブソングは作ったことがなかったので作りたいとずっと思っていて、やっとかたちにできました。もともと切ない曲なんですが、広がりのあるアレンジにすることで深みが出て、ENTHRALLSにもっともっといろんな可能性があると思わせてくれた曲です。「恋の罪」ができた時にアルバムの全体像がざっくりと見え、“浮遊”というキーワードを音にも感じられるようなアレンジや音作りを心掛けました。

そんな『合法的浮遊』には7曲が収録されていますが、今作のために書き下ろした楽曲はありますか?

井上
2曲目の「スケルトン志向」ですね。ピアノが印象的な疾走感のある曲を作りたいと思って、スタジオでほぼセッションのみで作った曲です。歌詞もそのスタジオの中で勢いで作りました。

「Music to my ears」のバンドとピアノが織りなす表情豊かなアウトロはピアノロックバンド、ENTHRALLSならではの強みだと思います。

井上
ピアノという楽器の繊細さも狂気も表現できる性質は武器だと思います。バンド名の由来の“心を奪う”を体現していきたいと思っています。

「sugarspot」は他の楽曲とは違うデジタルな要素を取り入れたサウンドが印象的でした。

井上
ふわふわ浮遊しているようで、完璧な世界からはみ出して墜ちていく男女をイメージした曲なんですが、今までにデジタルなイメージはなかったと思うので、ENTHRALLSを知っている人はびっくりしたかもしれません。アルバムの中でいいスパイスになっていると思います。

「umber」の後に収録されている「私の男」は同タイトルの本を読んで感銘した井上さんが書いた楽曲で、どうしても今作に収録したかったとのことですが、この楽曲にはどのような思いが込められているのですか?

井上
セルフライナーノーツではこの曲は“非合法的真実”なんです。非合法な真実は過ちだったり、そのまま犯罪という言葉に結び付くと思うんですが、異常なほど誰かを愛してしまったら、あり得ないことではないのかもと思ってしまって、この曲ができました。自分にも少し重ねながら書いたので思い入れが強いですね。このアルバムの中で一番残酷で一番ピュアな曲です。

アルバムのタイトル“合法的浮遊”という言葉の意味は?

井上
妄想したり、周りの人が引いちゃうようなことを考えること、現実逃避はあくまでも自分の中だけで外部に漏らさないなら安全で、合法的なのでたまにはやったほうがいいよ、と。

そんな今作は、出来上がってみてどのような一枚になったと思いますか?

井上
「恋の罪」や「umber」「私の男」のようなバラードも、「スケルトン志向」や「Cocoon」のピアノが際立つバンドサウンドもあり、ENTHRALLSを十分に堪能できる一枚だと思います! 何も考えずに音を楽しめる曲と情景が浮かんでそれぞれの方の“今”にマッチする曲と両側面あるので、そういった意味で長く聴いてもらえる作品になったんじゃないかなと。

3月19日にリリースとなり、すでにたくさんの人の手に届いているようですね。

井上
全国のラジオ局の住所を調べてこの音源を送らせていただいたんですが、面識ももちろんないし、そこでライヴもしたことがないのにパワープレイに選んでくださった局があって、それは本当に嬉しかったですね。あとは、車の中で聴いてるよって声が多かったです。ドライブの曲選びはとても重要なので、それに選んでもらえるのは光栄だなと思いました。

今作を作り終えて、何か見えてきたことはありますか?

井上
そうですね。デジタル感のある曲や同期を使ったライヴパフォーマンスをやってみたいとずっと思っていたので、今作でそれが叶いました。固定概念を持たずにもっともっと挑戦していきたいと思っています。

今後は『合法的浮遊』を引っ提げて全国各地を回ったり、『ENTHRALLS presents -非合法的略奪-』が行なわれますね。楽しみにしています。

井上
どこまでも自由に振る舞うのはなかなか難しいので、せめて空想の中で羽を伸ばしてあげて、まだ知らない自分に出会う30分34秒の旅、いかがでしょうか。あくまでも合法的に、楽しんで聴いてもらえたら嬉しいです! 今回は今まで行ったことのない場所にも行くのでまた新しい出会いがたくさんあると思うと今から楽しみです。略奪されにきてください!
『合法的浮遊』
    • 『合法的浮遊』
    • ELEN-1002
    • 2014.03.19
    • 1646円
ENTHRALLS プロフィール

エンソロールズ:2013年5月に結成されたピアノロックバンド。結成直後の5月に1stミニアルバム『PASSAGE』をリリース。『FUJI ROCK FESTIVAL’13』『SUMMER SONIC 2013』に新人枠で出演を果たすなど注目を集める。16年1月に自身初となるワンマンライヴを東名阪で開催し、11月には1stフルアルバム『TEXTURE,MOISTURE』をリリースする。ENTHRALLS オフィシャルHP

OKMusic編集部

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