【MISTY】あえて曲数を絞ったことで
、エンドレスにリピート必至の名盤が
完成
愛知県安城市出身の4人組メロディックパンクバンド、MISTYが4作目となるミニアルバム『Worth for believing』をリリース。結成10周年を迎え、自ら“メロディー工場”を謳う彼らの活動はここからさらに加速する。
取材:山口智男
今回の『Worth for believing』はMISTYの魅力をダイナミックに伝えながら、何回も繰り返し聴きたくなってしまう作品になっているところが良かったです。
SHINJI
実はフルアルバムを作る予定だったんですけど、ミニアルバムに変えたんです。曲はフルを作れるぐらいできていたんですけど、一曲一曲の個性が強すぎて、全曲入れちゃうといいところがぶつかっちゃうから曲数を絞ったほうが良くなると思ったんです。そしたら、自分たちで思っていた以上に綺麗にまとまったのでびっくりでした(笑)。もちろん、曲を作っている時は一曲一曲、いい曲ができたという手応えはあったんですけど。蓋を開けてみたらというか、家にある材料で料理しようと思って、とりあえず全部入れてみたらめっちゃ美味かったという感じで(笑)。
KASHIWAGI
いや、一個一個美味しい料理を作ったら、それがすごいコース料理になったということです(笑)。
SHINJI
曲を削ったことで一曲一曲が立つというか、それぞれに抜けてきたんですよ。
MISTYと言えばメロディーに定評がありますが、今回、特にメロディーに自信がある曲と言うと?
SHINJI
聴いていて気持ち良いのは「Shine」。あとは「SEPIA」。今回は全曲好きですね。
KASHIWAGI
テンションが上がったのは「Take it off」。それまで「Last one mile」と「Shine」をリード曲にしようって言ってたんですけど、「Take it off」ができてから、これにしましょうって。それぐらいテンションが上がりました。
MX
レコーディングが終わった時、ここまで化けたんだってびっくりしましたね。
KASHIWAGI
それともう1曲、「Perfect days」。今回の7曲の中では埋もれがちかもしれないけど、ミドルテンポで楽曲の良さが際立つ感じがいいんですよ。
MX
うん、「Perfect days」は僕も好きですね。それから「SEPIA」も…っていうか、僕も全曲好きです(笑)。
SHINJI
それは良かった。ぜひ買ってくれよ(笑)。
MX
うん、これ絶対買いますよ(笑)。予約します(笑)。
Low4さんは?
Low4
リフから作ろうって曲があって、そのリフ作りを任されるんですけど、今回はそれが「Take it off」と「Rule the world」で、「Take it off」はKASHIWAGIが言うように歌が入ったら化けましたね。“SHINJIも成長したな。褒めてやってもいいかな”って思いました(笑)。
SHINJI
ありがとうございます。めっちゃ上からだけどな!
Low4さんが持ってきたリフにSHINJIさんがメロディーを乗せるという作り方もあるのですね。
Low4
毎回、大体1曲ぐらいは。SHINJIが“俺はメロ考えてるんだからリフぐらい考えてこいよ”って。
さっきも言ったように何回も繰り返し聴いてしまうのは、そんなメロディーの良さももちろんなのですが、バンドの演奏にも1曲ずつ聴きどころがあるからではないかと。たとえば、MXさんのドラムはいかにもメロコア的な2ビートを中心にしながら曲ごとにフレーズをいろいろ変えているし。
MX
パートごとにドラムのフレーズを変えた「Last one mile」以外は、テーマとしてはストレートにいこうというのがあったんです。歌がないところでは、こういうのも合うんじゃないかってちょこちょこフレーズは変えていますね。
「PLAYROOM」は最後のサビだけリズムが跳ねるアレンジが際立っていますね。
MX
もともとサビは全部4つ打ちにして踊れる感じにしようと思ったんですけど、やっているうちに違うんじゃないか、最後のサビだけにしたほうがいいんじゃないかってなって、そこだけ4つ打ちを残したら見事に際立ちましたね。
KASHIWAGIさんのベースはどんなアプローチで?
KASHIWAGI
僕は特には。いつも通りシンプルに弾いて、要所要所に入れておいたほうがいいかなってところにフレーズを入れましたけど、勢い重視ですね。ごちゃごちゃやって勢いが止まるのは好きじゃないんです。
Low4
「Shine」と「SEPIA」のサビのベースラインがすごく素敵なんですよ。
あ、そこいいですよね。
KASHIWAGI
「Shine」は後ろからコーラスを被せたことで、ベースもよく聴こえるし、コーラスもよく聴こえるし、いい仕事ができたと思います。ただ、ライヴの時はコーラスもしなきゃいけないんで、今はそれがただただ心配です(笑)。
Low4さんは今回リフ作りで活躍したそうですが、それ以外ではどのようなことを意識しましたか?
Low4
普通、ヴォーカルのメロディーをまず聴いて、次はギターに耳がいくと思うんですよ。だから、SHINJIが作る歌メロに負けないぐらいキャッチーでメロディアスなフレーズと、ギターをやっている子たちが弾いてみたいと思えるような…例えば「Perfect days」のソロはあえてちょいダサにしたんですけど、そういう難しくないフレーズを意識しました。
「Take it off」のギターソロは、その直前の歌の裏で鳴るフィードバックから始まるじゃないですか。
Low4
そういうちょっとしたこだわりに気付いてもらえると嬉しいです。
ところで、歌詞はどのように書いているのですか?
SHINJI
メロディーから浮かんできた情景を歌詞にしたり、漫画や映画から思い付いたり、毎回いろいろなんですけど…でも、歌詞にするとなるとやっぱりインスパイアされるのは野球漫画の『MAJOR』になってくるじゃないですか(笑)。
「Last one mile」は自分たちがバンドをやる上での気持ちを歌っていると思ったのですが、実はスポ根だったんですね。
SHINJI
野球をテーマに書いたんですけど、“辛い時に立ち上がれる”という意味では、もちろんそこにもリンクしてきます。そこは聴いた人それぞれに感じ取ってもらえればいいと思っています。
恋人たちの別れを歌った「SEPIA」は実体験?
SHINJI
いや、そういう情景が浮かんだんですよ。プリプロの音源を仲の良いバンドのメンバーと聴いていたら、そいつが“これ、完全に夕方じゃないですか”って言うから、俺もそれ以外考えられなくなっちゃって(笑)。でも、メロディーができた時から“温かいけど切ない”ってイメージがあったから、夕暮れの情景って言ったら何だろう?って想像しながら歌詞を書きました。
Low4
ちなみに「Take it off」の《いつか時代が自分に追いつくと思ってはいたけど》って歌詞は、いつもSHINJIが冗談で言っていた言葉なんですよ。“それを歌詞にしたのか”って面白いと思うと同時に、反省してほしいなって思いました。時代のせいじゃないんだって(笑)。
SHINJI
そうだったな。お前のせいだよな(笑)。
KASHIWAGI
その後に《夢希望 握りしめて》って歌詞があるんですけど、地元の安城にお世話になっていた夢希望RADIO CLUBってライヴハウスがあって。もう閉店してしまったんですけど、それを違う意味で入れているのも面白いと思います。昔からMISTYのことを知っている人なら分かるんじゃないかな。
そんなところも聴きどころなわけですね。
KASHIWAGI
「Last one mile」は演奏している僕らも“やらなきゃ!”って気持ちになりますしね。そんなふうに自分たちが今、どんなふうにバンドをやっているか、その気持ちを素直に歌詞にしているところがいいと思います。
ところで、昨年の12月から結成10周年イヤーに突入したわけですが、今回、ミニアルバムを作るにあたって、10周年ということは意識したのですか?
SHINJI
いえ、これが最後になるかもしれないと思いながらベストな作品を作りたいっていうところでは、いつもと変わらなかったし、“10周年だから集大成”的な考えはなかったです。ただ、これまでメンバーチェンジが多かった俺らが、こうしてメンバーが固まったすごく良い状態で10周年を迎えられたのは良かったと思います。
リリース後は3月5日の安城公演を皮切りに47都道府県ツアーを行なうそうですね。
1年かけて?
SHINJI
気合いを入れてガッと回るつもりです。楽しみですけどね。久々に行くところもあるし、初めて行くところもあるし。でも、初めて行くところは少ないかな? そのツアーが終わったら、また制作に入ります。10周年イヤーの最後はフルアルバムをリリースして締め括りたいですね。
- 『Worth for believing』
- WLR-1041
- 2017.01.18
- 1728円
ミスティ:愛知県安城市出身の4人組メロディックバンド。地元を中心にライヴ活動とリリースを重ね、活動の拠点を東京へ。幾度かのメンバーチェンジを経て14年6月に現在の体制となる。16年3月、古巣であるWE LOVE RECORDSから、両A面シングル「GLEANING / LET IT DIE」、ベストアルバム『BESTY』を同時リリースした。MISTY オフィシャルHP