『外道』はロックファン必聴の
日本を代表するアルバムである

日本のロックバンドのレジェンド

M10「やさしい裏切りを」はライヴのアンコール曲。“外道を愛するみなさんに1曲捧げます”とのMCのあとで鳴るのはアコギのストロークである。歌も叙情的で、サウンドからすればフォークソングと言ってもいい代物だろう。意外にも…と言うと外道に失礼かもしれないが、そう思う人がいてもおかしくないだろう。ただ、この『外道』ののちの楽曲を聴けば、その音楽性は大分幅を広げているので、加納の中では一本筋が通っているのは間違いないと思われる。歌のメロディーラインは、前述したM2やM7のギターからも伺えたところだし、《嘘を缶詰にして売り歩くのやめた》や《悩みと涙を 仮面の下にしまい/歩き回るのは/これで終わりにしよう》といった歌詞も本作の他の楽曲に通底する文学性もある。

M11「スターと」はトラックとしてはラストなのだが、これは楽曲ではない。如何にも暴走族らしいバイクとそのラッパらしき音が収録されている。外道のライヴの空気を音源に遺そうと画策したのだろうか。タイトルは“Start”にもかけているようにも思えるし、そこにはユーモアがあるようにも感じられる。何かを暗示したのかもしれない。外道の奥深さを伺わせるというと、いささか大袈裟かもしれないけれど、余韻を残すラストではあろう。

さて、ここまで解説してきたアルバム『外道』のリリース年を改めて言えば、1974年である。この1974年は他にどんなロックバンドが世に出たかというと、四人囃子の『一触即発』が同年のリリースで、カルメン・マキ&OZも同じ年にシングル「午前一時のスケッチ」でデビューしている。甲斐バンドのデビューシングル「バス通り」も1974年発売(同曲は甲斐氏にとっては黒歴史らしいが…)。アメリカではBad Companyがデビューアルバムを発表し、AC/DCがシングル「Can I Sit Next to You Girl/Rocking In The Parlour」を携えて本国オーストラリアでツアーを行なったのも1974年だ。忘れてはならないのはTHE ALFEE。当時はALFIEという名前で、デビュー曲「夏しぐれ」は松本隆作詞、筒美京平作曲のアイドル的なフォークソングでロック色はほぼなかったし、ブレイクするにはそこからまだ時間を要したけれど、THE ALFEE が1974年にデビューしたのは疑いようのない事実だ。そこからずっと現役を続けているTHE ALFEEはすごいし、上記のバンドもみんな、すごいのだが、外道もかつて何度か解散、活動停止しているものの、2010年以降は活動を継続しているようなので未だ現役である。外道もまた日本のロックバンドのレジェンドなのだ。そこをダメ押し気味にも強調しておきたい。『外道』を聴いてもらえれば、同時期の洋楽に勝るとも劣らないサウンドであることも分かってもらえるはずで、そこを考えると、これまでの評価が不当だとまでは思わないまでも、正直言って、まだ低いように思う。結成50周年を機に今まで以上に多くのリスナーに届いてほしいと願うところだ。

願うと言えば、個人的にはこのアルバム『外道』の復刻もお願いしたい。1989年、1998年、2002年に復刻していたようだが、現在は廃盤の模様。収録曲そのものは45周年記念でリリースされた『外道参上』(2018年)に曲順もそのままに収録されているし、こちらはサブスクでも聴ける。リマスタリングされているようで、音もクリアーでもある。M10「やさしい裏切りを」は別テイクのバンドバージョンが収められていて、M11「スターと」もシンセっぽいが被せてある(細かく調べてないが、この他にも加工しているものがあるかもしれない)。それはそれで構わないのだけれど、オリジナルというか、1974年版の方がライヴの空気感を余すところなく再現しているように思う。全体的に音はざらついているし、籠ってもいるのだが、そっちのほうがリアルであるような気がする。CDやレコードじゃなく、サブスクに載せてくれてもいいので、何とかお願いしたい。需要はあるように思う。

TEXT:帆苅智之

アルバム『外道』1974年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.香り
    • 2.逃げるな(ALBUM VERSION)
    • 3.外道
    • 4.ロックンロールバカ?
    • 5.ダンスダンスダンス
    • 6.ビュンビュン(ALBUM VERSION)
    • 7.いつもの所で
    • 8.腐った命
    • 9.完了
    • 10.やさしい裏切りを
    • 11.スターと
『外道』('74)/外道

OKMusic編集部

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