REACTIONがシーンに送り出した
金字塔的作品
『INSANE』はヘヴィメタルが
詰まったアルバム

『INSANE』('85)/REACTION

『INSANE』('85)/REACTION

3月8日がREACTIONのドラマーだった梅沢康博の命日だったということで、今週はそのREACTIONのデビュー作『INSANE』の紹介とした。1989年の解散後、2006年に新たなヴォーカリストが参加して再結成したものの、のちにギタリストの斉藤康之も鬼籍に入られたのでオリジナルメンバーでの再開は望めない状況ではあるが、この『INSANE』はインディーズながら1万枚を売り上げ、日本ヘヴィメタルシーンの金字塔的アルバムである。REACTIONの存在を風化させてはいけない。

梅沢の“高速ツーバス”が響く

速い。上手い。エモい──。牛丼の超有名キャッチコピーになぞらえるという超オヤジ臭い始まりで恐縮だが、ヘヴィメタルというのは煎じ詰めればそういうことになるのではなかろうか。今、REACTIONの『INSANE』を聴き終えてそう思った。ロックの中で先鋭的と言われたジャンルでも、これがパンクとなると、少なくともその初期においてはDIY的な精神からテクニックを重視しない傾向にあったので、上手くはない…というよりも、それを過度に感じさせないところはあると思う。ルックスが目を惹いたというところでは、グラムロック辺りもそうかもしれない。一方、ヘヴィメタルと同じくハードロックから派生したロックにプログレッシブロック…いわゆるプログレがあるが、こちらは技巧的ではあるものの、前衛的である分、分かりやすいエモーションからは若干かけ離れている感じもある。オルタナであったりグランジ、パワーポップなどもどこか決めてに欠ける印象だ。

まぁ、どれも私見なので異論を挟まれても困るのだけれど、ヘヴィメタルというロックはそういう分析ができるし、REACTIONとはそのヘヴィメタルの法則に準拠したバンド、もしくはヘヴィメタルの論理を体現したバンドであったと言うことができるのではないかと思った。以下、『INSANE』収録曲を、その“速い。上手い。エモい”に当てはめて解説していこう。

“速い”。これはテンポが速いということである。もちろんそれはBPM値が高いということではあるけれども、ヴォーカルを含む各パートが発する音符の細かさ(?)もかなり影響しているような気がする。BPMは決して高くないのに、そこに16分音符が詰まった状態で乗せられていると、どこかせわしなく追い立てられているような印象を持つことはないだろうか? 筆者にはある。話はREACTIONならびにヘヴィメタルから離れるが、例えばヒップホップでトラックは大分ゆったりした感じだけれどもラップの言葉数が多かったりすると、楽曲全体の印象が前のめりになっていくようなことは結構あるような気がする。

『INSANE』に関して言えば、スローテンポの楽曲はなく、M3「DON'T STOP」やM5「NOTHING」、M6「LET ME SHOUT」はミドルテンポと言えるが、それにしてもゆったり感は薄い。それはやはり楽器の手数足数が多いからだと思う。M5「NOTHING」とM6「LET ME SHOUT」はまさしくそれを地で行くようなサウンドで、M5はギターのザクザクとしたカッティングで楽曲が引っ張られていくし、M6はイントロでのベードラの8分の連打が響いている。どちらもリズム隊が全体的に前のめりで(M5の方がその傾向が強い)、聴き応えは実際のテンポよりもグイグイとした印象だろう。M8「DARK ILLUSION」はそれほどミドルな印象はないが、これもリズムが食い気味で、いい前のめり感が出ている。

そして、それら以外の収録曲はBPMが高めである。M1「JOY RIDE」、M2「ARE YOU FREE TONIGHT」、M7「LONESOME KNIGHT」、M9「INSANE」。問答無用のスピード感である。全体的に追い立てられる感じがバリバリある。その上、ギターは細かくフレーズを刻んでいるし、ベースは概ね8分音符以上であまり白玉がない印象。ドラムに至ってはベードラ連打が当たり前の上、ツーバスである。至るところで♪ドコドコドコドコと重低音が鳴っている。自然とペースが上がるのでジョギングのBGMには不向き…とこれまた思わずオヤジ臭いことを口走ってしまうほどの疾走感だ。

この梅沢康博(Dr)の“高速ツーバス”の効果効用は『INSANE』収録曲においてかなり大きなウエイトを占めている。楽曲途中で手数足数が減ってテンポが変わったように聴こえる箇所がいくつかあるが(M9「INSANE」の間奏とかがそう)、“高速ツーバス”があるからメリハリが強力に効いて、楽曲をよりスリリングに仕上げている。REACTIONサウンドのボトムをこれ以上ないかたちで支えているのは梅沢である。

弦楽器隊による技巧的フレーズ

“上手い”。これはテクニカルということで、“巧い”と言い換えてもいい。もちろんそれは演奏テクニックのことであるが、楽曲制作における技巧テクニックもそこに加えたい。このバンド、梅沢の“高速ツーバス”を筆頭に各パートがテクニカルであることは言うを待たないのであるが、メロディーや楽曲構成もなかなか巧みである。

まずは演奏のテクニックから。梅沢のドラミングは前述したので、ここではそれ以外のパートについて触れよう。何と言っても斉藤康之(Gu)のギターについて語らないわけにはいかないだろう。コード弾きも単音弾きも──つまり、リフもソロも実に器用にこなすギタリストである。ソロパートはメロディアスなものがほとんどで、M3「DON'T STOP」やM5「NOTHING」などそのフレーズが比較的流麗となる傾向のミドルテンポの楽曲のみならず、M7「LONESOME KNIGHT」のようなアップチューンでもドラマチックでいいソロを聴かせてくれる。M7では、ご丁寧に…と言うべきか、間奏ではドラムの手数足数を減らし、ベースソロを露払いのように先に設えて、“ここが聴きどころですよー!”と言わんばかりに状況を整えてから(?)、ギターソロを始めている。そのドラマチックさやメロディアスさに関しては間違いなく意識的であっただろう。また、ソロではないが、M8「DARK ILLUSION」のイントロで聴かせる単音弾きも実に印象的な旋律で、これまた聴き逃せないところである。

リフもいいものが多い。1曲を挙げるなら、M2「ARE YOU FREE TONIGHT」もいいのだが、やはりM7「LONESOME KNIGHT」を推したい。突飛なことをしている感じはないけれど、歌メロとの相性がとてもいい印象。Aメロの歌のあとにも重なる、イントロから続くリフレインは収まりが実にいい。若いリスナーに限らず、この辺りをどこかで聴いたような気がする人は多いと思われるが、それは即ちREACTIONがこれ以前から連なるロックの系譜を継承したバンドである証明であるとともに、のちの日本のHR/HMシーンに影響を与えた存在であることの証しと言ってよかろう。

反町哲之(Ba)のベースプレイも聴き逃せない。前述したM7「LONESOME KNIGHT」でのソロパートがバンド(あるいは本人)にとって一番の聴かせどころであろうが、耳を凝らすまでもなく、そのプレイの秀逸さは随所で聴くことができる。例えば、M1「JOY RIDE」。イントロではドラムスとともにボトムを支え、Aメロではギターとのユニゾンを聴かせているが(厳密に言えば音程が違うのでユニゾンなどでは全然ないが、リフレインのパターンが同じということで理解されたし)、Bメロでの奔放とも言えるフレーズには非凡さを感じずにはいられない。REACTIONのサウンドはドラムが支え、ギターが彩っていることは前述の通りだが、それらをつなぐベースが個性的かつ技巧派であるからこそ、全体のサウンドがしっかりとしていることは、これまた言うまでもなかろう。

楽器隊のプレイを紹介したので、加藤純也(Vo)についても少し触れておきたい。彼はこの時点で4代目のヴォーカリスト。REACTIONの結成は1983年で、加藤の加入が1985年なので、短期間に3回もヴォーカリストがチェンジしたことになる。バンド内部が如何にもバタバタしていたことはそれだけでも分かる。ちなみに、軽くネットでREACTIONに対するリアクションを調べてみたら、ギタリストやドラマーの評判はすこぶるいいものの、ヴォーカリストに関してはあまり好意的に捉えていない意見も散見した。おそらく、加藤以前のヴォーカリストを知る人にとっては違和感があったのだろう。だが、個人的には何ら問題なく聴いた。確かに彼の声はややハスキーで、どこか少年っぽく聴こえもするので、その辺がお気に召さない人もいるのかなぁと思ったりもしたが──その辺りは後述するが、その声質がREACTION、少なくともこの時点での楽曲にはマッチしている気がして、むしろ好感が持てた。もう少し突っ込んで解説すれば、加藤はREACTION脱退後に結成したバンド、GRAND SLAMが彼のメンタル面においても本領発揮の場だったこともあって、『INSANE』の時点では過渡期だったと言えると思うのだが、それにしても楽器隊に引けを取らない歌い手ではあったと思う。

OKMusic編集部

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