藤井フミヤのデビュー作
『エンジェル』に
ソロシンガーとしての
ビギニングを見出す

『エンジェル』(’94)/藤井フミヤ

『エンジェル』(’94)/藤井フミヤ

7月にアルバム『絶対チェッカーズ!!』を取り上げたばかりだが、11月2日(土)の仙台PIT公演を皮切りに、ソロになってからは初めてだというライヴハウスツアーが開催されるとあって、今回は藤井フミヤのデビューアルバムを取り上げたい。ライヴハウスはほとんどのライヴミュージシャンにとっての原点と言える場所であろうが、デビュー作品というのもアーティストにとっては原点であることは間違いない。今週はそんなお話。

デビュー作にはすべてがある

“デビュー作にはそのアーティストの全てがある”とはよく聞く話で、アルバム毎に音楽性を変化させたと指摘されるThe BeatlesにしてもDavid Bowieにしてもそれは当てはまるようだ。The Beatlesの『Please Please Me』は当時彼らが傾倒していたR&Bの要素を巧みに入れ込んでいる様子が分かる他、すでにメンバー4人がメインヴォーカルを務めた楽曲が収録されているなど、中期~後期の片鱗を見ることができる。David Bowieのデビュー作、その名も『David Bowie』は、当時セールスが芳しくなく、ファン以外には話題にも上がらない地味なアルバムと言われているが、歌詞の持つコンセプチュアルな世界観は、『Space Oddity』や『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』といったのちの名盤と通底する。邦楽ではRCサクセションの例が分かりやすいだろうか。当時のメンバーは忌野清志郎、小林和生、破廉ケンチの3人で、外野からはフォークトリオ的なの見られ方をしていたと思われるが、そのデビュー盤『初期のRCサクセション』(タイトルが秀逸!)にはソウル要素もしっかりあるし、清志郎らしい反骨心は楽曲タイトルにも溢れ出ている。

バンドから離れてソロ活動に転じた時のデビューアルバムとなると、さらにそのアーティストの方向性が明確に出ると思う。それもまたThe Beatlesを例に取るのが分かりやすいだろう。John Lennonは自らの人間性を露呈し、Paul McCartneyはメロディーメーカーとしての職人的資質を推し進めたと言われている。日本ではCAROL解散後の矢沢永吉に同様の現象を見ることができる。矢沢はバンド解散と同年の1975年に1stアルバム『I LOVE YOU,OK』を発表しているが、[キャロルを否定するような曲構成にファーストツアーでの評判は散々で、"キャロルの矢沢"を期待するファンが一気に離れた]という([]はWikipediaからの引用)。だが──そこは矢沢自身の大いなる努力があって現在のポジションを確立してきたからではあろうが──今、一般的な矢沢永吉のイメージは、CAROLよりも「I LOVE YOU,OK」の方に近いはずだ。元BOØWYの氷室京介と布袋寅泰とのソロデビュー作品も同じことが言えると思う。氷室の『FLOWERS for ALGERNON』、布袋の『GUITARHYTHM』は、各々バンドとは異なるサウンドを示したところでその方向性には近いものを見出せるものの、両アルバムのシリアスさとポップさとのバランスは明らかに異なっており、今思っても現在のふたりのアーティスト性を暗示していたように感じる。

藤井フミヤの場合も同じである。彼が所属していたバンド、チェッカーズはメンバー自身がアイドルバンドであったことを否定していなかったので、そもそもバンドとソロとでは明らかに方向性が異なってはいるのだが、チェッカーズ解散後のソロデビューアルバム『エンジェル』にはアーティスト、藤井フミヤの意志がしっかりと貫かれているように思う。以下、いくつかの側面からその点を探ってみた。

OKMusic編集部

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