DOPING PANDAが
新たな日本のロックを創造せんとした
志しを『DANDYISM』に見る

『DANDYISM』('06)/DOPING PANDA

『DANDYISM』('06)/DOPING PANDA

3月2日、1月末に再結成を正式発表したDOPING PANDAがニューアルバム、その名もずばり『Doping Panda』をドロップ! 昨年水面下で書き下ろされ、レコーディングを行なわれたという新曲10曲を収録しており、ファン垂涎の作品と言って間違いなかろう。この復活劇を祝して、当コラムでもDOPING PANDAを取り上げる。メジャーデビューフルアルバム『DANDYISM』をピックアップしたが、これがバンドの意気込みを見事にパッケージした作品で、今聴いても熱く盛り上がってしまうこと必至の名盤である。

志の高さと高い熱量

某競技で禁止薬物に陽性反応が出た選手がいて、ビン・ドゥンドゥンがマスコットとなった冬季五輪が行なわれた年にDOPING PANDAが再結成するとは驚きである。この上ないタイミング。優秀なアーティストは未来を予見すると言うが、こうなると予見どころじゃなく、限りなく未来予知に近い、人智を超えたものと言っていいだろう。

…と、冗談はさておき、そのバンド名には強いインパクトがあることは間違いない。まず、個人的な思い出話をひとつ。あれは彼らがメジャーデビューする前だったと思うから、少なくとも2005年より以前のことで、もしかすると、彼らが参加したディズニーのトリビュートコンピレーションアルバム『DIVE INTO DISNEY』がリリースされた2002年頃だったかもしれない。いずれにしても、その名があまり巷に知れ渡っていなかった頃だ。ある飲み会でのこと。それは放送局、イベンター、出版などなどいわゆる音楽業界筋の有志が集った宴で、砕けた席ではあって、其処ここで“この間の○○○○のアルバムは良かったね”といった音楽談義を始め、“御社はこの時期にも人事異動があるんですか?”とか“お嬢さんにお子さんが生まれて△△部長さんもおじいちゃんですね”とか、何かざっくばらんにいろんな話をしていたように思う。そんな中、“最近、注目しているアーティストはいますか?”と誰かが話を振った。よくある漠然とした質問だが、間が持たなかったのか何なのか。それでも、そこにいる人たちは“やっぱ■■■■がいいですね”だったり、“最近はあんまり面白いと思うような人がいなくて…”だったり、思うままに話していたように何となく記憶している。はっきりと覚えているのは、そこにいた気鋭の編集者が“DOPING PANDAですね”と答えた時のこと。“ドーピングパンダ!?”と宴がドッと沸いた。“どんな感じなんですか?”といった音楽性の更問ではなく、“何ですか、それ!?”とか“すげぇ名前だな”とか、そのバンド名に対する驚きの反応がほとんどだった。若干、嘲笑も含まれていたようにも思う。彼らに対する情報が行き渡っていなかった頃ゆえにそのリアクションは仕方がなかったことだろう。

何が言いたいかと言えば、当時からやはりこのバンド名には相当のインパクトがあったというだけの思い出話だ。自分は…というと、DOPING PANDAという名前は知っていたので驚きはなかったが、少しは“どんなバンドなんだろう?”と思いつつも、その後、彼らの音源を手に取らなかった。どうしてだったんだろう? 然したる理由はなかったように思う。たぶん怠慢だっただけだ。余談だが、その点、そこにいたイベンターの人は偉かった。前述したようにDOPING PANDAはその頃はインディーズであったはずで、ライヴ制作会社はまだ絡んでなかったと思うが(たぶん)、その宴以後、迅速に動いたのだろう。その後のDOPING PANDAのライヴチケットをしっかり売っていたことも記憶に残っている。そこでビジネスとはかくも迅速に動かなければならないという教訓を得たような気もするが、自分はその教訓を活かすことがなかったので、出世とは無縁になったのだろう。ははは。

さて、DOPING PANDAで思い出した一番古い記憶を辿って冗談半分で綴ってみたが(調子に乗りました。すみません)、今回コラム執筆にあたって彼らのメジャーデビューフルアルバム『DANDYISM』を聴き、あの10数年前の酒の席で“ドーピングパンダ!?”と湧いた人たちはこの音源、引いてはDOPING PANDAの音楽性をどう思ったのか、だいぶ気になった。その時から終ぞここまでアルバムを一枚通して聴くことをしてこなかった自分が言えた義理ではないけれども、思わず“が…外見だけで実力を判断するなといういい見本だ…”というピッコロの台詞を借りたくなる音楽性であることを、恥ずかしながらもようやく認識した。

以下、その音楽性の一端を紐解ければ…と考えるが、最初に言っておくと、何よりも強調したいのは、このバンドの志の高さだ。熱量が高いという言い方で間違いなかろう。“ここから新たな日本のロックを創っていく!”という気持ちがサウンドに溶け込んでいるかのようである。どこまで本質に迫れるか分からないけれども、アルバム収録曲をザっと解説していこう。

OKMusic編集部

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