『音楽旅団』は宝石の原石のような
BEGINの確かな才能を
感じることができる逸品

『音楽旅団』(’90)/BEGIN

『音楽旅団』(’90)/BEGIN

昨年12月にはアルバム『PotLuck Songs』を発表したことも記憶に新しいBEGINだが、その収録曲である「君の歌はワルツ」が2月22日からロードショー公開される映画『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』の主題歌に。現在、『第23回 BEGINコンサートツアー 2019』の真っ最中で、2月24日の東京・中野サンプラザ公演の他、3月の愛媛、大阪もソールドアウトと、結成30周年を経てもなお人気の衰えない沖縄県石垣市出身の3人組である(東京公演は4月に追加公演が決定!)。今週はそんな彼らのここまでの足跡とともに、デビュー作品である『音楽旅団』にスポットを当ててみる。

セールス面に左右されない強さ

BEGINの足跡にさほど詳しいわけではないので、まずはそのプロフィールを調べることから始める。さすがに結成30周年、並びにデビュー25周年を超えたバンドなだけに、多作であることに目を惹かれた。シングルは2018年8月に配信された「飛んで火に入る腹の虫」が45作目。アルバムは2018年12月に発表した『Potluck Songs』が40作目。まぁ、シングルは再発を含めての数字で、アルバムはベスト盤やBOXセット、ライヴ盤等を含めての数字なので、その作品数はびっくりするほどのものではないのかもしれないが、そのチャートリアクションには少し驚いた。若干ご無礼な物言いが含まれると思うので、メンバー、関係者、ファンへは先に謝罪しておくけれども──何と言うか、結構渋い印象だ。鈍いと言ったほうがいいかもしれない。

Wikipediaによれば、シングルではデビュー作の「恋しくて」の4位が最高。その他で目立つのは35th「笑顔のまんま」(2009年発表・BEGIN with アホナスターズ名義)の12位くらいで、ベスト10入りはおろか、50位台も案外少ない。所謂アルバムアーティストであるならそういう傾向もあるだろう。そう思ってアルバムのほうを見ると、こちらも似たような感じで、最高が『BEGIN シングル大全集』(2005年発売)の5位。あとのベスト10入りは2作ほどで、ざっと見た感じでは50位前後が多い感じではある。そうは言っても出典がWikipediaだしなぁ…と思い、オリコンのwebサイトも見てみる。だが、こちらは彼らのシングル、アルバムそれぞれのランキングであって、その全作品の過去最高位が示されているわけでもなかったので、結局のところ、Wikipedia以上の情報を引き出せなかった(と言っても、オリコンのランキングが不完全だとか悪いとか言いたいのではない。念のため)。一次資料が入手できなかったので正確なところではないだろうが、BEGINが大きくチャートを賑わしてきたアーティストではないことを何となく認識したところである。

誤解のないようにお願いしたいが、かと言って別にBEGINを腐したいわけでも、ディスりたいわけでもない。むしろ逆だ。アーティスト、バンドにとってマネジメント会社もレコード会社も終身雇用の就職先ではない。それどころか、プロスポーツの選手同様、複数年契約で結果が出なければ契約を更新できないことが当たり前の世界である。全てがその限りではないのだが、概ねそうだと言っていい。3年間で3枚アルバムを制作して、その後については双方で協議とか、たぶんそんな感じだ。コンスタントに結果が出ていてもレーベルを変わることはあるが、その逆のケースはほとんどないだろう。レーベルが何度か変わってもマネジメント会社は変更しないことは多いが、それにしても売上や動員が芳しくなければ果ては契約解除というのが常ではなかろうか。これもまた、全てがその限りではないだろうが、大きく間違ってはいないと思う。

もう一度、BEGINのチャートリアクションの話に戻る。シングルで言えば、1st「恋しくて」→2nd「Blue Snow」→3rd「YOU/これがはじまりだから」が4位→25位→82位と新作が出る度に順位を下げている。アルバムも1st『音楽旅団』→2nd『GLIDER』→3rd『どこかで夢が口笛を吹く夜』で7位→不明→27位と最高順位を落としている上に、レーベル移籍第一弾であった4th『THE ROOTS』はさらに順位を下げ、74位という結果であった。この数字の推移だけ見ると、その数年後に姿を消すようなバンド…とは言わないまでも、25年後にメジャーで活動しているとは思えない結果ではある。

しかしながら、ご存知の通り、BEGINは今もメジャーフィールドにいる。そればかりか、メジャー進出以降、一度もマネジメント会社を離れたこともなく、レーベルは数度チェンジしているものの、いずれも所謂インディーズではないし、レーベルと契約しない期間が長く空いたりしたこともない。これには、もちろんマネジメント会社が大手でいろんな意味で余裕があるところもあるのだろうし、もしかするとBEGINの3人が条件面で細かいことをまったく言わない人たちなのかもしれないとか(真面目な話、そこに交渉があるのは当然だろうけど…)、セールス面だけに左右されない何かがBEGINに備わっているからであることは間違いない。その何かのうち、最も大きな要因はと言えば、これはもう、このバンドの音楽性に他ならないであろう。今回、BEGINのデビューアルバム『音楽旅団』を改めて聴いたが、未加工でもその価値が高いことが分かる宝石の原石のような、彼らのポテンシャルが詰まった作品であることを再確認させられた。この才能を簡単に手放す馬鹿な事務所、メーカーは、今も昔もいないだろう。

OKMusic編集部

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