『外道』はロックファン必聴の
日本を代表するアルバムである

秀でたギターと絶妙なグルーブ

M4「ロックンロールバカ?」はChuck Berryの「Johnny B. Goode」的…というか、そこから派生して古今東西あらゆるロックに引用されている3コードのロックンロール。ここでも《ドザクサ まぎれ Rock'n Roll/下手な英語で 銭もうけ》という歌詞が痛烈で、サウンドと併せて考えると間違いなくシニカルな楽曲だとは思う。ここではギターのカッティングにも注目したい。イントロはそれこそ例のベーシックなメロディでありつつも、歌が入るとその背後でのストロークはかなり細かい。鋭いと言った方がいいだろう。M4をオールドスクールなロックンロールで終わらせていないのはギターサウンドだし、これも外道の特徴であると思う。

M5「ダンスダンスダンス」ではそれがさらに発揮されている。ファンキーなダンスナンバー。曲調が曲調だからだろう。加納のギターが冴えわたっている。比べるわけではないけれど、個人的には、のちのBOØWYの「BAD FEELING」での布袋寅泰を思い出す軽快さだと思うし、高速での弦の刻み方はTMGEのアベフトシを想起した。また、M5は《外道のリズムに/踊り狂おう Dance Dance》と歌われ、イントロ前では加納から手拍子のリクエストがあり、中盤では観客とのコール&レスポンスも収められている。そこでの三三七拍子は外道のライヴの定番だったようだ。外道は暴走族に支持されたということで物騒なバンドというイメージもあろうが、この辺からは、バンド自体は大衆的というか、ロック的なフレンドリーさがあったこともうかがえる。

M6「ビュンビュン」からはLPのB面。《いかした皮ジャン リーゼント/ビュン・ビュン・ビュン・ビュン/俺の自慢のスピード マシン/可愛い スケを 後に 乗せて/OK! Baby go go go》という歌詞からは、フレンドリーなバンドではあったとはいえ、彼らも暴走族を意識していたことが分かる。ノイジーで疾走感のあるギターサウンドは確かに暴走を連想させるものではあろう。理解はできる。

その一方で、M7「いつもの所で」ではミドルテンポのブルースを聴かせているのだから、勢い粗暴なバンドとだけで片づけられない。ここでは、やはりギターが素晴らしい。テクニックだけではなく、フィーリングもしっかりある。中盤からラストまで楽曲の半分がギターソロとなっていて、そう聞くと冗長だと思われるかもしれないが、聴く者を惹きつけるメロディー展開は、個人的にはもっと聴いていたいと思うほどだ。リズム隊がボトムをがっちりと支えることで絶妙なグルーブを生み出しているのも、魅力的に聴こえる要因だろう。圧倒的に聴いていて気持ちのいいナンバーだ。

続くM8「腐った命」、M9「完了」では再び疾走感のあるロックチューンを展開。ともに印象的なギターリフが楽曲全体を引っ張る様子はまさしくロックそのもので、本稿冒頭でいくつか日本のロックバンドを実名で挙げたけれども、それらが好きな人にとってM8、M9のリフとその耳触りは大好物ではないかと思う。M8では前述したカッティングも聴けるし、《目を覚ませ 奴隷達/墓場の中から 這い上がれ》《お前の命の輝きを/目にもの 目にもの 見せてやれ》といった歌詞もポジティブで、ストレートにロック的と言える。M9はとにかく演奏が圧巻。M7は楽曲の半分がギターソロと紹介したが、M9はさらに長い。楽曲のタイムは7分半程度で、後半30秒くらいは観客の歓声と拍手なので、演奏はおおよそ7分といったところ。『敦盛』の一節を引用した歌は1分30秒くらいまでで、残り、つまり5分半程度は全て演奏で占められている。8ビートを刻むドラム、生真面目とも思えるほどに延々とリフレインされるベースに乗せて、暴れる続けるギター。ギターは間違いなくアドリブだろうが、厭味のないフレーズが鳴らされているからだろうか、緊張感が持続していく。5分30秒頃にはリズム隊も変化し、それまで以上にグルーブが際立ってくる。ライヴのクライマックスに相応しい熱演である。演奏後の観客の反応には感嘆符“!”が混じっているように思えるのは筆者だけではあるまい。

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

新着