割礼の『PARADAISE・K』に触れ、
そのロックバンドの姿勢を想う
公表されている情報が少なく謎多し
バンドのバイオグラフィがよく分からないので余計に不思議に感じるところもある。『PARADAISE・K』が割礼の1stであることは、オフィシャルサイトのディスコグラフィにもそう書いてあるので、これは間違いないだろう。制作は1986年、リリースは1987年のようである。2ndアルバムは『LIVE'88』。タイトル通り、1988年の制作・発売とのことである。以降、3rd『ネイルフラン』(1989年)、4th『ゆれつづける』(1990年)がメジャーでの作品であり、ライヴ盤の5th『LIVE9091』(1991年)はインディーズ作品である。この辺りまでのリリースタームはわりとあるケースというか、1年に1枚というのはかなり順調だったと言っていい。そこまではいい。興味深く感じたのはこのあとで、5thのあとは『is it a half-moon or a full moon?』をリリースしているのだが、オフィシャルサイトのバイオグラフィに“1998年発売。多人数時代の未発表ライヴ音源。大阪ファンダンゴでの録音”とある。この“多人数時代”というのがよく分からない。Wikipediaを頼ると、旧メンバーの項目にパーカッションやシンセサイザーのみならず、チェロ、コントラバス、ヴァイオリンを担当していたメンバーの名前を見出すことができるので、その辺が“多人数時代”に当たるのだろう。そんな想像はできる。その辺りは5thまでの音源を聴けば分かりそうだし、レコードのインサートなどを見れば事の真相ははっきりするのだろうが、現状ではそれもなかなか困難だ。
さらにディスコグラフィを調べていくと、2000年以降のバンド単独作品としては、『空中のチョコレート工場』(2000年)、『セカイノマヒル』(2003年)、『星を見る』(2010年)、『のれないR&R』(2019年)を発表している。“バンド単独作品としては”と付け加えたのは、この間にもオムニバスへの参加やスプリット作品を発表していたからである。それを加味すれば、1980年代に比べれば作品発表の間隔は空いたものの、きょうび、リリースインターバルはこんなものだろう。驚くほどに空いたとも思えない。それよりも、オフィシャルサイトを見て不思議に思ったのは、『星を見る』と『のれないR&R』との紹介コメントである。『星を見る』では“2003年リリースの「セカイノマヒル」以来7年ぶりの6thアルバム。15分間におよぶ「リボンの騎士」を収録したサイケデリックロック超大作”とあり、『のれないR&R』には“前作「星を見る」以来およそ9年ぶり2019年作品。いよいよ凄みを増してきたスローロックの極致的作品”とある。この2作だけがやけに説明的なのが、不思議というか、ちょっと面白い。音源がリリースされた時に販売元が付けた惹句をそのまま持ってきた──たぶんそんなところだろう。そう考えると、メンバー自身、自らの音楽性を明文化できてないのかもしれない。いや、あえて自分たちからはそれを明文化していないのだろうか。そんな想像もできる。割礼というバンドがどういうバンドなのか情報が少ないのもその辺りも関係しているのではなかろうか。やはり、謎が多い不思議なバンドである。