LUNA SEAが創る
サウンドの臨界点の、
さらなる先を顕した大傑作『STYLE』

揺るぎなき5人のアンサンブル

『STYLE』はそれまでの“LUNA SEAメソッド”あり、実験性を増したナンバーありと、バンドのキャパシティが広がったことを示したアルバムである。それはそれで間違いがないところだと思う。だが、忘れてはいけないのは、LUNA SEAのベーシックは各メンバーが司る5つの音が折り重なって出来上がっているということであろう。前作以上に奔放になったサウンドメイキングにしても、決して他のメンバーをスポイルしていない。そこは本作の大きなポイントだと見る。M10「IN SILENCE」が分かりやすい。タイトルを直訳すれば“沈黙の中”、あるいは“静けさの中”だろう。イントロからアコギのストロークとクリアトーンのエレキのアルペジオが重なっていく。その音色はまさに静謐と言ってもいいと思う。《風は 笑う様に 砂を巻き上げた》《耳を澄ましても 波の音だけ》という歌詞にもマッチしている。しかしながら、バンドサウンドはそこだけに終始しない。1サビからリズム隊がドラマチックに入ってくる。ベースは他の楽曲に比べてかなり低音をキープしており、突出した感じはないものの、ジャングルビートと言ってもいいドラムが響き続ける。沈黙、静けさとは対極にあると言っていい躍動感がある。喧噪と言ってもいいかもしれない。タイトルだけから考えたら、ここまでドラムが強調される必要はなかろう。もしソロ作品であったらばこうはならなかったかもしれない。そう邪推したくなるほどに個性的ではある。だが、このドラミングがあることで、M10の世界観はさらに立体的に広がっていると思う。蛇足ながら、勝手に筆者が思うところを述べるならば、《憎んだ あの頃は》《目を凝らしても 答えなどない》から想像できる焦燥感、あるいは《そっと oh my heart 見つけたい》で垣間見えるわずかな前向きさを、ドラミングが後押ししているように感じられる。ひとつの情景だけで語ることができないものが、バンドサウンドであるからこそ表現されている。そんな気がしてならないのだ。

こうしたバンドアンサンブルの妙は、改めてそこに注目すると、全編にしっかりと宿っていることが確認出来る。シンプルな構成であるM2「G.」やM3「HURT」は当たり前のようにそれを感じるところだが(特にM3は初心者がコピーしたくなるような、ストレートなカッコ良さがある)、長尺のミッドチューン、M6「FOREVER & EVER」やM11「SELVES」でも、あくまでも5つの音があってLUNA SEAになるというかたちが如何なく発揮されているように思う。ともに外音──M6はストリングス、M11では鐘の音や逆再生サウンドが配されているものの、どちらもそこは変に強調されていない。そればかりか、バンドサウンドも抑制が効いているというか、変にテンションを上げることなく、緊張感を持続させているところが聴きどころであろう。何と言うか、どちらも“はい、バラードですよ!”みたいな下世話さがまるでないのだ。この辺りからは、バンドが成熟期に入っていたことを伺わせる。今になって思えば、この『STYLE』のあとで充電期間が必要だったというのも、これらのサウンドが証明していたのだろう。

TEXT:帆苅智之

アルバム『STYLE』1995年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.WITH LOVE
    • 2.G.
    • 3.HURT
    • 4.RA-SE-N
    • 5.LUV U
    • 6.FOREVER & EVER
    • 7.1999
    • 8.END OF SORROW
    • 9.DESIRE
    • 10.IN SILENCE
    • 11.SELVES
『STYLE』('95)/LUNA SEA

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着