【ライヴアルバム傑作選 Vol.6】
NUMBER GIRLらしさが
如何なく貫かれた
『シブヤROCKTRANSFORMED状態』
ライヴ盤ならではの狂気の音像
そもそも『シブヤROCKTRANSFORMED状態』の音像は、粗いというか、ライヴ録音ならでは…と言うべき音像だ。“籠っている”という言い方は少し違うかもしれないけれど、オリジナルアルバムなどでは各パートの音が個別かつ直線的に鳴っているのに対して、本作ではバンドの音がより一塊になっているように思う。例えば、M7「Young Girl 17 Sexually Knowing」。途中、《空の色はUFOを見た》のあと、歌に重なる田渕ひさ子の単音弾きのリフレインは、『SCHOOL GIRL~』版のほうがほんのわずか後ろにあるように感じる。それは、『SCHOOL GIRL~』版での左から聴こえる向井秀徳のギターの音のクリアさにも関係しているのかもしれないけれど、音が散漫…とまでは行かないまでも、少しばかり離れているような気もする。その点では、本作のM7のほうがより音がまとまっているように思う。特に《赤の中へずっと》以降のバンドサウンドの密集具合はカオティックさに拍車をかけているようでもある。
その点では、M9「狂って候」も相当にいい。イントロはギターのアルペジオで始まるものの、アヒト・イナザワの“鋭角!”のカウントから始まるバンドサウンドがそれを引き裂く。そこから聴いているこちら側にも息継ぎをさせないような演奏が続いていく。構成、展開自体はM9も『SCHOOL GIRL~』版もそう変わらないが、テンションはまるで違うように感じる。本作を聴いたあととなっては、(こう言っちゃ失礼かもしれないが)後者はややお行儀がいい印象すら受ける。一方でM9はまさにタイトル通り。アヒトのドラミングがかかり気味にグイグイと進み、他のメンバーは誰ひとりそれに置いていかれぬように弦楽器をかき鳴らす。そのアンサンブルに当てられたかのように、端から『SCHOOL GIRL~』版以上の暴れっぷりを見せている向井秀徳のボーカルはもはや狂気の沙汰と言っていいだろう。素晴らしいテイクである。