DAIGO☆STARDUST
『The space toy』に
あふれるロック愛!
DAI語的に言えば
“DYH=DAIGO、やっぱり半端ない”

J-ROCKのひとつの側面、
ビートロックの王道

こうして見てみると、もはや大成功者のDAIGOであるけれど、彼とて最初から順風満帆というわけでなかった。DAIGO がBREAKERZ を結成する前、DAIGO☆STARDUSTという芸名だったメジャー初期の頃がまさにそれで、ずっと活躍することがないことを“鳴かず飛ばず”と言うが、その見本のような感じではあった。Wikipedia先生にも[デビュー当時、ドラマやCMに出演するなど期待されていたが売れず]と、ずばり書かれている([]はWikipediaからの引用)。そのはっきりした物言いはやや残酷にも思えるが、売上チャートを振り返ればそれも止むなしであることが分かる。1stシングル「MARIA」が64位。氷室京介作曲という破格と言っていい好待遇のデビューのわりには寂しい結果であったことは否めないけれど、まぁ、新人はこんなものだろう。

酷いのはそれ以降である。散々であった。2nd「永遠のスペースカウボーイ」70位→3rd「ROCK THE PLANET」83位→4th「デイジー/SUMMER ROSE」84位→5th「SCAPEGOAT」174位→6th「SUPERJOY」130位といったありさまである。アルバムも1st『The space toy』160位→2nd『HELLO CRAZY GENTLEMAN』258位で、いずれにしても右肩下がり…どころか、右肩急降下であった。BREAKERZがブレイクしたあとで発売されたベスト盤『DAIGO☆STARDUST BEST』(2009年)は56位と、かつてのチャートリアクションに比べれば健闘したと言えるかもしれないが、“昨年一気にブレイクしたDAIGOのDAIGO☆STARDUST時代の初のベストアルバム待望のリリース! 本人選曲&監修による、シングル全曲を含む全17曲収録”という惹句ほどには待ち望まれていなかったようであった。

そんな状況を鑑みると“こりゃあ、さぞかし酷い作品だったんだろうなー”と覚悟しつつ、アルバム『The space toy』を聴いてみた。結論から言えば、悪くない。いや、悪くないどころか、結構カッコ良いし、よく出来たアルバムでもある。正直言って、最高位160位だったというのは過小評価も過小評価だろう。チャートが即ち作品の評価であるとは思わないけれど、これは低く見積もりすぎであることは間違いないと思う。BOOWYで顕在化し、ビートロックとも言われ、そののち多くのビジュアル系アーティストにも好まれたJ-ROCKのひとつの側面、その王道とも言えるサウンドを堂々と鳴らしている。個人的にはそう感じた。ちょっと語弊のある言い方だが、少なくとも2000年代前半まではこういう音楽はわりとあったし、一時期、邦楽の主流でもあったように思う。今も脈々と受け継がれているはずだ。『The space toy』はその路線からまったく外れていないし、突飛なところは何もないと言っていい。そういうアルバムである。収録曲をザッと見ていこう。

M1「The space toy」。ゆったりとしたギターにマーチングビート、そこにストリングスが重なってくる様子はどう聴いても壮大だし、そこからドカン!とバンドサウンドが打ち鳴らされるに至っては、アルバムのオープニングに相応しいというか、オープニング曲でしかあり得ないスケール感である。本作は殊更にコンセプトアルバムと謳っていたわけではなかったようだが、冒頭からしてそんな作りではあろう。曲間を空けずにM2「STARS」へつながるのもそれっぽい。そのM2は冒頭こそフワフワとした印象だが、頭サビが終わると、疾走感のあるパンクチューンという本性を表す。まさにビートロックと呼ぶに相応しい容姿である。ギターもリズム隊もその教科書のような演奏を見せつつ、開放感あるサビに向かっていく。ファルセットで重ねているコーラスはおそらく本人ではなかろうか(違ったらすみません)。それも含めて確かな歌唱力をうかがうこともできる。簡単に言えば、歌が上手い。件のビジュアル系アーティストの中には個性的なヴォーカリゼーションで迫る歌い手も少なくなかったけれど、彼の歌い方にはそういう癖、えぐみのようなものはほとんど感じられない。その意味で聴き手を選ばなかったとは言える。また、M2は歌詞にも注目したい。DAIGO☆STARDUSTという芸名はDavid Bowieの『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』から拝借したことを公言しているが、歌詞からもBowieに対する敬愛がうかがえる。

《トレモロのHeroes なりきりのCrazy/現実(いま)からのSuicide ここはそう君のSTARS》(M2「STARS」)。

OKMusic編集部

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