『RIDE ON THE EDGE』で理解する
GRANRODEOの正確性と親しみやすさ

コンポーザーとしての確かな手腕

まずは概ね外形的に分析できることを挙げてGRANRODEOの特徴を軽く分析してみた。この辺りだけで見ても、優れたアニソンユニットであることが分かるだろう。だが、彼らの特徴、魅力はそこだけに留まらない。飯塚昌明の職人的仕事っぷりとして、シングル曲はA、B、サビと所謂Jポップの公式に沿っていると指摘したが、シングル曲以外でも巧みにメロディメイクをする人である。どの曲をとってもサビが実にキャッチーだ。キャッチーなものしか選んでないのかと思うほど、キャッチーなものしかない。アルバムだとl曲くらいはメロディを重視しない楽曲があってもよさそうなものだが、本作に限ってはそんなことはない(M1「RIDE ON…」とM9「EDGE OF…」のインスト曲、M13「Vanessa」の寸劇(?)がそれに当たるかもしれないが…)。これは確かな才能と言えるだろう。狙ってやったとしても、インスト、寸劇を除いた14曲でメロの立ったものを揃えるのは至難の業と言える。

しかも、親しみやすさだけではなく、そこに叙情性があるというか、愁いを秘めた旋律が隠れているように思う。個人的に注目したのはM4「未完成のGUILTY “style GR”」、M11「LAST SMILE “style GR”」辺り。サビは共にキャッチーで耳に残ることを前提として──M4はイントロからマイナー調でありコードも繊細な感じで、とりわけ1番のサビで言えば《巡る心遠くもがき続ける ああ、夢の中で》《未完成な罪が鼓動を砕く 刻まれるこのGuilty》辺りに、アッパーなだけではない、独特のエモーションが宿っているようである。M11はミドルテンポなこともあってか、さらに強めに叙情性を感じるところがあろうか。Bメロもいいが、やはりサビが秀逸。とりわけ後半の《抱き締めてもう一度だけ あの日のように あの頃のように》、もっと言えば《もう一度だけ》でファルセットになるところに感情の揺れを感じるところである。オルゴール風のイントロ、Aメロでのピアノと、そこに辿り着くまでのサウンド的演出もいいと思う。M4、M11以外では、M8「紫炎」のメロディもなかなかおもしろく感じた。サウンドはグイグイと迫るアプローチでサビも高音と、一聴した感じは突き抜けていくような様子ではあるものの、開放的かと言えばそうでもないところにGRANRODEOらしさを見た思いである。e-ZUKAが優れたメロディメーカーであることは間違いないけれど、職業作家的な側面だけでなく、楽曲にしっかりと個性を残しているのは、優れたアーティストの証左と言える。

やや蛇足になるが、そのサウンドについても少し触れておこう。GRANRODEOのサウンドは、重く激しいエレキギターを鳴らすハードロックが基本だ。本作においては、ほとんどそこを徹底していると言っていいだろう。M6「Go For It! “style EDGE”」はパンク~ラウドロックであったり、M7「059/21」はブギーであったりするが、ハードロック的なアプローチから大きく外れることはない。ほとんどの楽曲で間奏ではギターソロが披露されていて、結構な速弾きも少なくない。だが、そうは言っても、あまりマニアックな印象がないことは、おそらくGRANRODEOのアドバンテージだろう。マニアックに聴こえないのには様々な背景があって、件のメロディのキャッチーさがその最大の要因だろうが、加えて、彼らのデビューが2000年代半ばであったことの影響も少なくなかろう。X JAPANが再結成を発表したのが2007年と、本作『RIDE ON THE EDGE』リリースと同年だ。LUNA SEA、JUN SKY WALKER(S)、SIAM SHADE、YMOなどもこの年に復活している。ウィキペディアによれば、1990年代後から凡そ10年ほどの月日が経ったことで再結成が続いたという分析だが、この時期、日本のロックシーンがある種の成熟を見たという受け取り方もできよう。ロックフェスが根付いたのも2000年代だ。エレキギターサウンドがアングラでも何でもないどころか、アニメやゲームのテーマ曲となっても不思議ではない土壌は整っていた。ハードロックサウンドを武器にしたGRANRODEOがデビューするにあたって、進むべき道は充分に開けていたのだ。

OKMusic編集部

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