『RIDE ON THE EDGE』で理解する
GRANRODEOの正確性と親しみやすさ
コンポーザーとしての確かな手腕
しかも、親しみやすさだけではなく、そこに叙情性があるというか、愁いを秘めた旋律が隠れているように思う。個人的に注目したのはM4「未完成のGUILTY “style GR”」、M11「LAST SMILE “style GR”」辺り。サビは共にキャッチーで耳に残ることを前提として──M4はイントロからマイナー調でありコードも繊細な感じで、とりわけ1番のサビで言えば《巡る心遠くもがき続ける ああ、夢の中で》《未完成な罪が鼓動を砕く 刻まれるこのGuilty》辺りに、アッパーなだけではない、独特のエモーションが宿っているようである。M11はミドルテンポなこともあってか、さらに強めに叙情性を感じるところがあろうか。Bメロもいいが、やはりサビが秀逸。とりわけ後半の《抱き締めてもう一度だけ あの日のように あの頃のように》、もっと言えば《もう一度だけ》でファルセットになるところに感情の揺れを感じるところである。オルゴール風のイントロ、Aメロでのピアノと、そこに辿り着くまでのサウンド的演出もいいと思う。M4、M11以外では、M8「紫炎」のメロディもなかなかおもしろく感じた。サウンドはグイグイと迫るアプローチでサビも高音と、一聴した感じは突き抜けていくような様子ではあるものの、開放的かと言えばそうでもないところにGRANRODEOらしさを見た思いである。e-ZUKAが優れたメロディメーカーであることは間違いないけれど、職業作家的な側面だけでなく、楽曲にしっかりと個性を残しているのは、優れたアーティストの証左と言える。
やや蛇足になるが、そのサウンドについても少し触れておこう。GRANRODEOのサウンドは、重く激しいエレキギターを鳴らすハードロックが基本だ。本作においては、ほとんどそこを徹底していると言っていいだろう。M6「Go For It! “style EDGE”」はパンク~ラウドロックであったり、M7「059/21」はブギーであったりするが、ハードロック的なアプローチから大きく外れることはない。ほとんどの楽曲で間奏ではギターソロが披露されていて、結構な速弾きも少なくない。だが、そうは言っても、あまりマニアックな印象がないことは、おそらくGRANRODEOのアドバンテージだろう。マニアックに聴こえないのには様々な背景があって、件のメロディのキャッチーさがその最大の要因だろうが、加えて、彼らのデビューが2000年代半ばであったことの影響も少なくなかろう。X JAPANが再結成を発表したのが2007年と、本作『RIDE ON THE EDGE』リリースと同年だ。LUNA SEA、JUN SKY WALKER(S)、SIAM SHADE、YMOなどもこの年に復活している。ウィキペディアによれば、1990年代後から凡そ10年ほどの月日が経ったことで再結成が続いたという分析だが、この時期、日本のロックシーンがある種の成熟を見たという受け取り方もできよう。ロックフェスが根付いたのも2000年代だ。エレキギターサウンドがアングラでも何でもないどころか、アニメやゲームのテーマ曲となっても不思議ではない土壌は整っていた。ハードロックサウンドを武器にしたGRANRODEOがデビューするにあたって、進むべき道は充分に開けていたのだ。
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