『スナックJUJU
〜夜のRequest〜』に見る
JUJUらしい上品なアレンジと
日本音楽史
彼女が影響を受けた昭和の名曲たち
1.「六本木心中」
【原曲】アン・ルイスの24thシングル(1984年)
当時の録音技術もあってか案外音の奥行きがなかったオリジナルに比べ、ハードロック的な楽器を減らしながらも、ダイナミックな楽曲に仕上げているJUJU版。ある意味、下世話さが薄くなっているのは議論が分かれるところかもしれないが、アンほどにはパンチ力のないヴォーカルが歌詞の世界観をよりリアルにしている気もする。
2.「ロンリーチャップリン with 鈴木雅之」
【原曲】鈴木聖美 with Rats&Starの2ndシングル(1987年)
オリジナルのシンガーが参加している点では珍しいカバーと言えるだろう。それゆえに歌に大きく変わった印象はないと思いきや、プレーンなJUJUの歌声が名曲に新たなニュアンスを加えている。ベースラインは原曲のままでありながら、跳ねたギター、エレピが実にいい感じ。豪華なブラス、ストリングスはマーチンへのおもてなしだろうか。
3.「夏をあきらめて」
【原曲】サザンオールスターズの5thアルバム『NUDE MAN』収録(1982年)、研ナオコの29thシングル(1982年)
サザン版とも研ナオコ版とも異なるボサノヴァタッチに仕上げている。サビではドラムを抑えたり、バイオリンのピチカートっぽい奏法など、大幅にリアレンジしている箇所もあるにはあるが、歌はもちろんのことテンポも変えていないからか、劇的な変化に思えない。これは原曲へのリスペクトの表れと受け取るべきだろう。
4.「まちぶせ」
【原曲】三木聖子の1stシングル(1976年)、石川ひとみの11thシングル(1981年)、荒井由実の28thシングル(1996年)
荒井由実から三木聖子へ提供された楽曲を、のちに石川ひとみがカバーし、その後、ユーミンがセルフカバーした昭和の名曲。そう思うと、歌唱はどことなくユーミンっぽ気がしないでもない。ユーミン版のスカほどには大胆にリアレンジしていないが、三木版、石川版で目立ったチェンバロを抑えめにして、ラテンっぽさを濃くしている。
5.「桃色吐息」
【原曲】髙橋真梨子の10thシングル(1984年)
オリジナルは1980年代らしく、エレキギターを始めバンドサウンドが案外鋭角的だが、こちらはリズムの圧を抑えて、なおかつ、ピアノやフルートが全体をマイルドにしている印象。流れるようなストリングスも上品だ。間奏で聴こえて来るスパニッシュなギターがJUJU版の新要素だが、それにしても自己主張し過ぎていないのが面白い。
6.「駅」
【原曲】中森明菜の10thアルバム『CRIMSON』収録(1986年)、竹内まりやの16thシングル(1987年)
一般的には竹内まりや版が有名だろうが、元は竹内から明菜への提供曲。このJUJU版はピアノで始まるジャジーな雰囲気で、サウンドの空気感は明らかに明菜版に近い。しかしながら、間奏でのドラマチックなストリングスや、2番からリズムがやや喰い気味になるところなど、JUJU版ならでの聴きどころも多い。