白田一秀をはじめ、
HR/HMシーンの強者たちが集った
GRAND SLAMの
『RHYTHMIC NOISE』のインパクト
日本HR/HMシーンのドリームチーム
ただ、上記の前身バンドのことを多くの人たちがレジェンドと認識している(と思しき)一方で、GRAND SLAMがそれらを凌駕するほどのインパクトをシーンに残しているかと問われたら、はっきり“そうだ”と言い切れる人は、GRAND SLAMのファンの中にも決して多くはないのではなかろうか。もっとも、前身バンドが日本のヘヴィメタルの先駆けと言われ、今や日本のロック史において語られるバンドであることと比べたら、それ以後のある程度シーンが形成されてから出てきたバンドは、GRAND SLAMに限らず、どうしても印象が弱いと言わざるを得ない。そうした側面は音楽だけでなくありがちなことではないかと思う。あとから来た方はどうしても割を食ってしまうのだ。
また、前身バンドたちが世に出た1980年代のシーンと、GRAND SLAMが活動していた1990年代のそれとでは、状況もかなり異なる。こう言ってしまうと双方に失礼であることを承知で述べるが、前身バンドには比較対象が少なかったのに対して、GRAND SLAMのデビュー時はバンドブームの真っ只中。バンドの数も多かったし、スタイルも多岐に及んでいた。具体名は上げないが、あの頃はイロモノ的なバンドもそれなりにいた。イロモノはイロモノなりにシーンに塗れないよう、懸命に努力していたのだから、それを悪いとも思わないし、むしろ理解はできる。逆に言えば、当時のバンドシーンは生き馬の目を抜くようだったのである。GRAND SLAMに話を戻せば、そんな中で、彼らが1980年代ほどにはインパクトを残せなかったとて、それも止む無しだったとは言える。
しかし、だ。だからと言って、GRAND SLAMの音楽が取るに足らないものだったのか、聴くに値しないものかと言われたら、それにははっきりと“否”を突き付けたい。無類にカッコ良いロックバンドであった。そこはしっかりと強調しておかなければならないだろう。そう断言できるいくつかの理由をこれから『RHYTHMIC NOISE』で検証していきたいと思うが、まず何と言っても、“This is Rock!”としか形容できない、そのサウンドの清々しさを推したい。基本的にそのほとんどが4人の音で構成されている。オーバーダビングもあるし、コーラスもある。SE的なM1「RHYTHMIC NOISE」はおそらくディスクトップにて制作されたものであろう。
だが、それ以外はヴォーカル、ギター、ベース、ドラムで構成されている。さすがに当時“ドリームチーム”と目されていたメンバーが集っているだけあって、グイグイと迫るドライヴ感が実に素晴らしい。豊川のドラミングがいい意味で走っているところにその秘密(?)があると思う。音符的に言えば、シンコペーションを多用している…ということになるのだろうが、スネア、シンバルの位置が(正式な楽譜があるとしたらそれよりも)微妙に前なのである。リズムが喰い気味と言い換えてもいい。でも、それが絶妙にいいのだ。アッパーなナンバーで言えば、M5「I WANNA TOUCH YOU」やM8「NO!NO!NO!~SHOCK YOU~」、本作中最速のM10「COOKIES」でもその妙味を聴くことができるけれども、ドラムの白眉はM2「HERE WE GO」。終始リズムが走り気味で、それが楽曲全体を前へ前へと推進している。M2が実質的にアルバム1曲目であるから、『RHYTHMIC NOISE』自体に勢いを与えているという見方もできるし、これは見事なテイクと言わざるを得ない。それに続く、M2ほどにテンポが速くないM3「SPEND THE NIGHT」でも、Bメロや2番のAメロでその喰い気味のドラミングを披露。勢いを持続させている。かと思えば、ファンキーなM7「LOOKIN’ FOR LOVE」ではそこまで走ることなく、しっかりとリズムをキープしている。ドラムはバンドの要とよく言うが、まさに要に相応しい仕事っぷりである。