木村カエラが数多のアーティスト、
ミュージシャンから
寵愛を受け続ける理由を
アルバム『Scratch』から探る
それでも彼女のカラーは埋没しない
《君のステキなところも/ボクはわからなくなってた/1番うばってはいけないもの/気に入らないことに/ハラを立てて/君を食べた》《だからね/いつも頭の上に止まる/小鳥を見上げて笑う/君に重ねて/思い出してる/たくさん話をして/言葉を聞いて/こんなボクなら/生かしてあげれるかな》(M4「ワニと小鳥」)。
おとぎ話にも似たファンタジーな語り口でありながらも、実に生々しくも残酷な現実をメタファーとしている。また、残酷だからこそ、柔らかさと優しさが際立っているとも言える。こんな筆致はポップミュージックではそうあるものではない。これだけでもアーティストとして相当な才能の持ち主であることがよく分かる。ベテラン、同世代、洋邦を問わず、木村カエラが愛されるのも同然である。
TEXT:帆苅智之