SILENT SIRENの足跡は
邦楽シーンの成熟の証し。
1stアルバム『サイサイ』に
成長の萌芽を垣間見る
のちの成長に繋がる前向きな姿勢
以下に抜粋した「フジヤマディスコ」の歌詞を掲載しておく。その歌詞からはこの時期のSILENT SIRENがさらならステップアップを目指さんとしている姿勢が垣間見える。アグレッシブな精神があふれているような内容だが、こうしたスタンスもまた『サイサイ』収録曲から感じられるところだ。彼女たちのバンドとしてのスピリットが感じられる歌詞を、「フジヤマディスコ」に続いてピックアップする。
《他の誰かと同じじゃ/気が済まないのに/誰かと違うと心細い/そんな呪縛を解いて》《誰もまだ 見たことない景色を/誰もまだ 踏み込んでいない場所を/この手で この目で 自分で 確かめたい》(12thシングル「フジヤマディスコ」)。
《後悔なんか したくないや、嫌!!/何かが弾けて 溶け出して/そうよ、ほら 駆け出して/立ち止まってなんかいらんない愛ah~♪》(M1「ランジェリー」)。
《いつだってそうなの 歌い、奏で、君に想いを伝えてゆくの/不器用なあたしは もっともっと上手くすべてをこなしたいのに/悲しい歌なんかじゃないのに/あふれてこぼれ落ちた涙/君との全てを音にのせて/あたしは伝えるの強く強く、歌うよ》(M3「キミハテンキ」)。
《今叫ぶの 今走り出すの/このメロディーは消えることなく/まだ輝くの みんな同じリズムで All Right》《ひとつひとつ 光が集まって/大きな力になるの/もっと今 輝くの みんな同じリズム刻んでくの/今この場所から All Right》(M7「All Right 〜“今”を懸ける〜」)。
アルバム『サイサイ』リリース後、その年の11月にSILENT SIRENメジャーデビュー。2013年4月にはメジャー1stアルバム『Start→』を発表。2015年には、冒頭で述べた通り、“史上最速での日本武道館でのワンマンライヴ”を実現させるなど、着実にステップアップしてきた。その間、寒川が黒坂優香子(Key)にメンバーチェンジした他、2021年に梅村が脱退するなど、決して順風満帆な道程だったとは言えないだろうが、バンドとしても確実に成長を遂げてきたことは、こうして音源を振り返るとよく分かる。2021年12月15日にリリースされた『SILENT』と『SIREN』はオールタイムベストアルバムなので、こちらを聴いてもらえれば、さらに彼女たちの足跡が感じられるのではないかと思う。活動休止に至るにはいろいろあったのだろうし、そこは察するしかないけれども、何年か後に再び結集する機会があればいいなと思う。再結集の折にはこれまでとは違った成長した姿を見ることができるのではないかと想像する。また、SILENT SIRENが10-FEETの「RIVER」をきっかけに結成されたように、彼女たちの楽曲で意気投合したファンがバンドを組んで、メジャー進出することになったら面白いし、結構真面目に願うところでもある。そんなことがあれば、日本のロックシーンはまた面白くなる。
TEXT:帆苅智之