【阿部真央 インタビュー】
“自由にやってみよう”という
スタンスとしての原点回帰
5・6・7曲目、特に5・6の2曲
その流れが大好きなんです
楽曲制作について具体的にうかがっていきたいと思います。今作はサウンドスタイルやアレンジなど、新しいアレンジャーさんとの組み合わせも多いですし。
今回はディレクターさんが変わって、松岡モトキさんとYANAGIMANさんはその方の推薦で、そのお話に乗った感じです。もちろん、名前は存じ上げていたので。で、おふたりとの作業は“わー、楽しー!”で終わった感じです(笑)。でも、個人的に一番思い入れがあるのは、やっぱり岡崎体育さん。大ファンなので。あと、私がデビューした時からずっと私のステージの上手でギターを弾いていて、過去にも何曲かアレンジをしてもらった和田建一郎さんも。
岡崎体育さんはちょっと意外ではありました。でも、全編打ち込みのエレクトロニカとの化学反応は楽しいですね。
もともと「immorality」は4つ打ちの打ち込みサウンドにしたいと思っていて、私は岡崎さんの音が好きなので…特にキック、ビートの音が。あの独特なビートの音が欲しいと思ってオファーしたら快諾していただけて、ひとつ夢が叶ったくらい嬉しかったですね。
何かリクエストはしました? アレンジの方向性とか。
しました。混沌とした感じとか。歌詞で表現したいことを伝えたり、ビートは4つ打ちでコードはあまり変えないとか細かく。でも、私の想像とは全然違うものになりましたね。逆にそれが面白かったんですけど。1サビが終わったあとにズーンと沈むところがあるんですけど、そこは私はドーン!って突っ切っていくイメージだったんです。だから、“おっ、緩急を付けてきた!”と思って。カッコ良い曲になったと思います。
この「immorality」から和田さんアレンジの「傘」につながっていく、5曲目から6曲目への流れは素晴らしいですね。
そうなの! 嬉しい!! 私もこの流れが大好きなんですよ。5・6・7曲目の3曲の流れ、特に5・6曲目の2曲は。“私、上手いこと作ったなー。こんなにつながるなんて!”と思っていて…曲調も音の感じも歌詞の世界観も。実は「傘」は今回のアルバムの中で一番好きな歌なんです。
この曲の歌唱法も今までとは違う気がします。
あ、そうなんですよ。ちょっと語尾が裏返る感じ。最後のほうに力を抜くっていう歌唱法でいきたくて。
7曲目の「その心には残れない」のアレンジはYANAGIMANさんですね。もともとジャズ畑の方ですけど、このアーバンな感じは今の年齢の真央さんに似合うなと。
この楽曲は16ビートで歌自体も揺れてる感じだったので、ディレクターさんがYANAGIMANさんを推薦したのかな。大人な感じですよね。
アルバムって中盤で中だるみしたりすることもあるのですが、そこにこの3曲を持ってくることで…
そう! そうでしょ!!(笑) この3曲を待っているような感じなんですよね、私的には。4曲目の「蔑ろな夜」でちょっと変わるので、1・2・3曲目までの3曲はこのための大きな序章ですね。
その序盤の楽曲のakkinさんのアレンジ…特にイントロは“聴かずにはおれん”マジックがあるので、それが導入部というか、序章として存在して中盤に誘われるという流れもあるわけですね。
でも、そういう楽曲たちをこの期間に書けていたわけで。
他人事のように(笑)。
いや、でもね、最近思うんですよ。よく“降りてきた”とか言うじゃないですか。楽曲を作る人はパイプでしかないんだと思う。5・6・7曲目はフィクションなんですけど、でもよく分かるっていう気持ちで書けているんです。誰かに何かを投影していたりとか、いろんなところにチャンネルを合わせてアクセスして、ふっと浮かんだものを出している感じなので。“私が書きました!”っていう感覚からはどんどん離れている。だから、さっきの原点回帰と違うのは、前は“私が書いたのよ”っていう想いが強かったけど、それがだんだんなくなってきているところですね。
より楽曲本位に。でも、そのフィクションのものがアルバムの肝になっているのは、また新しい。
かつ、それを自分が気に入っているっていうのは非常に良い方向に行けていると思います。
で、そこから「喝采」へ。こういうテイスト、1曲は欲しい。
ファンの人は好きですねー。これは山本 彩ちゃんに書き下ろした楽曲のセルフカバーなんですけど…ありますよね、私の中にこういう赤茶黒いところ。必ずあるんだよね、やだー(笑)。でも、逆に安心したりも。多感な時期でこういう感情は終わっちゃうのかと思っていたけど、そうでもなかった(笑)。
「喝采」の次にピアノ1本で歌う「Angel」というのも、すごいコントラストの妙といいますか。
ここしかないなと思って。TD前のラフミックスでは歌声にリバーブが効いていて「アメイジング・グレイス」感が結構あったんですけど(笑)、エンジニアさんがグッと反対に持っていってくれて。超生々しい歌声と、ピアノは遠くの何点しか鳴っていないみたいな感じになりました。
今回のアルバム、大人の恋愛の歌がいい流れで聴けるわけなんですが、それをあなたはどうして最後で落とす!っていう(笑)。
あはははは! 待ってた、その言葉(笑)。この「27歳の私と出がらし男」ができた時に“絶対にこれは最後に入れよう!”と思って。何だろうね…捻くれているんだよね(笑)。“やっぱり阿部真央だった”って思ってほしいし、ファンの人をクスッとさせたいんですよ。このアルバムは序盤で恋愛が始まって、それが終わっていくまでの流れになっているので、ちょうど恋が終わった歌だからラストにはまりましたね。
普通ならさめざめと泣くところを…
(笑)。でも、女性だったら分かるでしょ? そういう恋愛だったのよね、清々しさが先にくるような別れ。
《5,000円》が気になります。昔、“3万円”(5thアルバム『貴方を好きな私』収録の「返して」)もあったけど。
ははははは! お金のことばっかり(笑)。ま、ひとつ言いたいのは、“私はただの5,000円じゃ怒りません。これはされどの5,000円なんですよ”っていう。それは相手の方にこの曲を聴いて一生後悔してもらえれば(笑)。
それにしても“出がらし男”という表現はすごい!(笑)
浮かんできちゃって(笑)。母の前でふざけて歌ってたんですよ、“出がらしおっとっこ”って。そしたらすごい笑っていたので、これはイケるかも!と。本当は出がらしなんて思ってないんですけど、なんか出てきちゃって。
こんな素敵なアルバムなのにね(笑)。
(笑)。でも、このアルバムはいっぱいの人に聴いてほしい。私も今までのアルバムの中で一番好きですし。“YOU”っていうタイトルにも表れているように、全曲ひとりの人からインスピレーションを受けて書いたものなので、ひとつのコンセプトとしても成り立ってますけど、それぞれ自分の中の“YOU”を投影してくれたら嬉しいですね。
語弊があるかもしれないですが、このアルバムは誰の作品であっても“いいアルバム”と感じられそう。“いいな、カッコ良いな”が先にきて、“ところで誰の?”って。
それ、理想的ですね。名曲って誰が歌っているとか関係なく、いい曲ですし。望むところです。あ、その“ところで誰の?”っていうのは、まさにデビューした時の感じですよね。そういう意味でも原点回帰というか。
取材:竹内美保
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アルバム『YOU』2018年3月7日発売
PONY CANYON
- 【初回限定盤(DVD付)】
- PCCA-04627 ¥3,500(税込)
- 【通常盤】
- PCCA-04628 ¥3,000(税込)
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『阿部真央ライブハウスツアー2018“Closer”』
4/06(金) 東京・新木場STUDIO COAST
4/13(金) 宮城・仙台Rensa
4/15(日) 北海道・札幌PENNY LANE24
4/20(金) 福岡・DRUM LOGOS
4/22(日) 広島・CLUB QUATTRO
4/27(金) 愛知・名古屋ダイヤモンドホール
4/30(月) 大阪・Zepp Osaka Bayside
アベマオ:1990年1月24日生まれ、大分県出身。06年、高校2年生の時に『YAMAHA TEENS' MUSIC FESTIVAL』の全国大会で奨励賞を受賞。09年1月にアルバム『ふりぃ』でデビュー。感情的なアコギで押し出す、等身大でリアルな歌詞、表現力豊かなヴォーカル、バラエティーに富んだ楽曲、同世代の女性を中心に、幅広い層から注目と共感を集める。14年10月にデビュー5周年を記念して初の日本武道館公演を開催。16年5月、産休明け第一弾シングル「Don’t let me down」で完全復活を果たし、デビュー10周年となる19年1月にはベストアルバム『阿部真央ベスト』を発表し、2度目の日本武道館公演を成功させた。阿部真央 オフィシャルHP