臼井孝のヒット曲探検隊
~アーティスト別 ベストヒット20
Vol.2 コブクロ
総合1位は「蕾」
(2007年発売 14thシングル)
前年に発売された2枚組ベスト『ALL SINGLES BEST』が2007年初には200万枚を超えてノリに乗っていたことに加え、フジテレビの月9ドラマ『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』(主演:速水もこみち=研音所属)の主題歌に抜擢され、リリー・フランキーの原作の評判もあって、ドラマのヒットも高初動を大きく牽引した。
しかし、ドラマ終了後も長くロングヒットとなり、さらに日本レコード大賞受賞にも不平不満が挙がらないほどのその年の代表作となったのは、やはり彼らの泣きの要素がギュッと凝縮されたようなサビの歌詞、メロディー、歌声があってのことではないだろうか。実際、この部分は、その後も芸人が歌うモノマネ番組でも歌われる機会が多く、その度に翌日の配信チャートは大きく再浮上するほどだった。ちなみに、この黒田の泣きのボーカル部分のモノマネが最も上手いのは、他ならぬ小渕で、ライブやTV番組のトークでもネタになっているほど。
1つ目のピークは発売直後。通常、春先に発売されることの多い桜ソングとは3か月以上早い2005年11月に発売することで、“夢を咲かせる”という意味がよりクローズアップされた。彼らがインディーズ時代に発表していた楽曲というのも、より歌詞の内容をリアルにしたであろう。
2つ目のピークは年が明けてフジテレビ系ドラマ『N’sあおい』の主題歌に起用され、ドラマ開始と共に再浮上したこと。通常、ドラマタイアップ曲のCD発売は放送開始から1か月前後経過した時期なのだが、本作の場合はその頃(2006年2月)に冬の桜が満開になるという粋なジャケット違い&DVD収録シングルを発売したこともロングヒットを助長した。
そして、3つ目のピークは、春になって桜ソング特集が組まれることで、三度注目を浴びることに。03年の森山直太朗「さくら(独唱)」。04年の河口恭吾の「桜」、そして05年のケツメイシの「さくら」に次いで、06年の本命ソングとして紹介され、累計21週間におよぶTOP20入りを果たした。
個人的には、コブクロのヒットは故・吉田敬氏(2010年に逝去)の貢献も多大だったように思う。氏はソニーにて平井堅やCHMISTRYなど数々のヒットを手がけていたところに、2003年にワーナーミュージック・ジャパンの社長に抜擢、その後、当時、ニューカマーが少なかった同社の邦楽部門からコブクロ、絢香、BONNIE PINK、Superflyなどを次々とブレイクさせた。
コブクロの「桜」についても、まだ発売前の段階から「新幹線の中で聴いて号泣して、これはシングルにすべきだと思う」と、とあるインタビューで答えていたのが印象的だった。それだけ彼らの再起を信じていたのだろう。