Hilcrhyme

Hilcrhyme

【Hilcrhyme インタビュー】
Hilcrhymeに関する本当に大きな
ひと区切りが2017年末だった

2017年での
“タラレバ”はまったくない!
“これは人生だな”と本当に納得した

この『-Success & Conflict-』を順に聴いていきますと、「恋の炎」「Magic Time」「涙の種、幸せの花」に辿り着くわけですが、「恋の炎」「Magic Time」辺りも、その南国的なトラックと開放的な世界観がとてもいいんですよ。

これね、当時の相方のやりたい音楽で、マジであの人のすっげぇ好きな部分がトラックに超詰まっていて。で、そのあとに「涙の種、幸せの花」を出しているんですけど、これはもう完全にHilcrhymeとして狙いに行っているトラックで。要はビジネスとしてヒットを狙ったトラックですね。もう間違いなく。

私はアコースティックギターやピアノといった生音を使うのがHilcrhyme王道のトラックだと思うんですけど、「涙の種、幸せの花」はまさにそれだし、メロディーはすごく堂々としたものだと感じます。確かにおっしゃっていることはよく分かりますが、これをリリースして数日後でしたよね? 元相方の不祥事は。まさに好事魔多しとはこのことで。

好事魔多し! 間違いない。でもね、“あのままバーって行ってたらどうなっていたんだろうな?”っていう“タラレバ”は俺の中にはまったくないんですよ。2014年とか2015年の“タラレバ”はめっちゃあるんだけど。なぜかと言うと、“これが人生だな”と本当に納得したから。ヒットの兆しみたいなのが見えた時って、別に“やっとこの時代が来たか!”とか、そういう感触はないんですね。とにかく必死だったんで。だから、デビュータイミングと似ていて、必死に毎日のスケジュールをこなしていた。結果はあとからついてくるもんだから、たまたま兆しがあったっていう。でも“最近すごくいい感じだな”っていうのは感じていて、それがあとから見たらヒットの兆しであって、“あのまま行ってたら結構行ったかも”と思うけど、当時はそんな感覚はなかったんです。でも、振り返って年表的に見てみると、上り調子の時にああいう出来事が起きるのは、これはもう必然ですね。だから、その時、その出来事って自分にも責任があると思ったんですね。距離を空けたからこそ気づかなかったとか。あとは、さっき言ったように2014年辺りには彼を疎外しようとした自分がいて、トラックメイカーを別に入れたりとか…それはクリエイティブな理由があったかもしんないけど、向こうにとってはそこで心の距離はできただろうなと。“あぁ、俺じゃねえんだ”みたいな。つまり、自分にそうした報いっていうか。そういう意味合いもあって、自分の責任のほうがでかいくらい、“やっちまったな、俺ら”みたいな。目が行き届いていなかったこともそうだし、ケアもそうだし。人生ってドラマだと思えますね。

本当にそうだと思います。この『-Success & Conflict-』は当時のHilcrhymeの状況、心情を加味しながら聴いていくと、一本の映画を観ているようなんですよね。「涙の種、幸せの花」がエンディングであって、そこで幕は閉じるんだけど、そのあとに決定的なことが起こるという。とても悲哀を感じるんですよ。

ドラマですね。まったく“タラレバ”が思いつかないくらい納得の結末。“人生はそんなにうまくいかないよね”っていう(苦笑)。でも、それを否定的には受け止めていなくて、そこで袂を分かつかたちになったけど、それが運命だし、すんなり受け入れられているかな? “定め”って言ったらカッコ良いけど、Hilcrhymeの歴史の1ページだと。ふたりでのHilcrhymeをそこで終わらせるかどうか話し合って、そこで“俺は抜けるから、おまえはやれ”という話になって、Hilcrhymeが続くことになったんで、ここで本当にひと区切りですね。Hilcrhymeに関する本当に大きなひと区切りが2017年末だった。

分かりました。では、『-Success & Conflict-』の1曲目に収録されている新曲「Killer Bars」の話をしましょう。ここまでHilcrhymeは常にアグレッシブに挑戦してきたという話をしてきたと思うんですが、この「Killer Bars」にもそれは感じるところです。アニメのタイアップではあるので、作品と重ねた部分も多いと思いますが、その中にちゃんと“らしさ”も盛り込んでいますよね。

とてもいい曲ができたと思っています。何が一番いいって、ライヴで盛り上がる。そういう曲が欲しいし、それがリードであれば、ライヴやフェスでは武器になる。あと、タイアップがあって、メディアミックスでこういう曲を通せたっていうのは時代背景を引っくるめて、すごく自由な時代になった感覚があって、それが結構自分にとっては追い風になると思っているんです。アニメタイアップって今期のクールを見たら、ほとんど若手なんですよ。俺よりも年齢もキャリアも下の人たちがやっている。その中に混ざっているんですけど、自分なりの立ち位置と自分なりの楽曲でメディアミックスへのアプローチがしっかりとできていて、結果もついてきているし、余裕を持ってできているからすごく楽しいし、ちょっと誇らしい。Hilcrhymeに対して誇らしい気持ちがありますね。

さわやかさすら感じるサビの後半の《Oh…》のところは、確かにライヴでの盛り上がりは必至という感じはしますね。

でも、ラップはめちゃくちゃ難しいですから。日本語ラップが難しいって、海外の人が聴いても分かんないじゃないですか。日本アニメってどう考えても海外に放っているものだから、そういう意味で自由度もあるし、何が起きるか分からないっていうことも引っくるめて楽しいですね。

個人的には、サビ頭で始まり、バースがあってもう一度フックが来るところまでで1分27秒。あれはお見事ですね。当然テレビのサイズに合わせたということなんでしょうけど、プロの仕事だと思いますよ。

もちろん尺のことを考えて、BPMを変えたり、90秒に落とすんですけど、やっぱり楽曲として成立しないと意味がないし、すごく良くできたと思います。

まさにそこだと思います。あと、リリックでは《右倣えじゃ意味なさねぇ》とか《俺は俺を超えるため再挑戦》とか、申し訳ないことに私はアニメを観ていないのではっきりとは分からないですけど、この辺はHilcrhymeのことだろうと。

そういうことです。メディアミックスでの書き下ろしってどっちの意味にも共通していないとダメだと思うんです。“こういうテーマで書いてください”って素材をもらって書くわけなんですけど、「Killer Bars」で言ったら“最強”で…要は“最強”というテーマで書くと決めて書けば、自ずとどっちにも共通するものになるから、いい距離感では作れていると思いますね。

“貫禄”という言葉を使うと“どっしりとした”みたいなイメージに取られるでしょうけど、「Killer Bars」はアッパーで陽気な感じですが貫禄を感じますね。

めちゃくちゃ嬉しいです。それは15年間に培ったもので、ラッパーとしてもそうだし、ヴォーカリストもそうだけど、歳を重ねれば重なるほど、どうしてもキーは下がるんだけど、でも厚みは絶対に増していくし、輪郭も帯びていくっていうか…それは本当に思いますね。70代のシンガーの人とかを見ていると、10代や20代には絶対に出せないものがあるし、アスリートとはちょっと違っていて、いつまでも表現できて、変化を楽しんでいける最高の仕事ですね(笑)。本当に超幸せです。

そうですか。今日も長々と、そして、ずけずけといろいろなことを訊いてしまって…

結構しんどいインタビューでした(笑)。正直言うと思い出したくない時代ではあるから…でも、15年目ですからね。こういうのもいいんじゃないですか。

では、最後にメジャーデビュー15周年記念公演『リサイタル 2024』が6月に日比谷野外大音楽堂で開催されます。今日の取材の最後は、このライヴの話をうかがいましょう。

HIKAKINがゲストに出てくれます。彼だけなんですよ、ここまでの周年の記念公演全てに出てくれているのは。周年公演では必ずゲストを呼ぶんだけど、通じて出てくれているのは世界に誇るYouTuber、HIKAKINだけなんですよね。

内容に関してはどんなことを考えていますか? 

タイトルどおり、1stアルバム『リサイタル』の再現公演で、2024年バージョンの『リサイタル』をやるというのが大枠としてあるんですけど、ゲストのラインナップを見て分かる通り(※註:HIKAKINの他、相川七瀬、仲宗根泉(HY)がゲスト出演する)、全然アルバム『リサイタル』では絡んでいない人たちなわけで、今のHilcrhymeの『リサイタル』に必要なゲストと一緒にやるべきことを見せる。『リサイタル』ってHilcrhymeにとって原点なんです。“ヴォーカルとバイナルのみ。ラップとトラックしかないけど、これだけの演奏ができるんだぜ”っていう、まさにストリートからのもの…というのもそこには含まれていて。あと、地方から発信っていうのもそうだし、これが自分たちの1stスタンス、Hilcrhymeのアティチュードなので、15年経っての厚み、輪郭、そして今の時代にアジャストしたHilcrhymeを見せたいってことですね。ただ、今度はふたりじゃなくて、俺ひとりでの『リサイタル』だから、それも引っくるめてエンターテインメントしたいなと。すごく楽しみです。

取材:帆苅智之

アルバム『BEST 15 2014-2017 -Success & Conflict-』2024年2月28日発売 Universal Connect
    • 【初回限定盤】(CD+DVD)
    • POCE-92160
    • ¥5,500(税込)

ライヴ情報

『Hilcrhyme メジャーデビュー15周年記念公演「リサイタル 2024」』
6/29(土) 東京・日比谷野外大音楽堂
ゲスト:相川七瀬、仲宗根泉(HY)、HIKAKIN

◎詳細はこちら:https://hilcrhyme.com/news/351365

Hilcrhyme プロフィール

ヒルクライム:ラップユニットとして2006年に始動。09年7月15日にシングル「純也と真菜実」でメジャーデビュー。2ndシングル「春夏秋冬」が大ヒットし、日本レコード大賞、有線大賞など各新人賞を受賞。ヒップホップというフォーマットがありながらも、その枠に収まらない音楽性で幅広い支持を集めてきた。また、叩き上げのスキルあるステージングにより動員を増やし続け、14年には初の武道館公演を完売。「大丈夫」「ルーズリーフ」「涙の種、幸せの花」「事実愛 feat. 仲宗根泉 (HY)」などヒットを飛ばし続け、24年7月15日にメジャーデビュー15周年を迎える。ライミングやストーリーテリングなど、ラッパーとしての豊かな表現力をベースに、ラップというヴォーカル形式だからこそ可能な表現を追求。ラップならではの語感の心地良さをポップミュージックのコンテクストの中で巧みに生かす手腕がHilcrhymeの真骨頂である。耳馴染みのいいメロディーと聴き取りやすい歌詞の中に高度な仕掛けを巧みに忍ばせながら、多くの人が共感できるメッセージを等身大の言葉で聴かせる。その音楽性は、2018年にラッパーのTOCのソロプロジェクトとなってからも、決して変わることなく人々を魅了している。Hilcrhyme オフィシャルHP

TOC プロフィール

ティーオーシー:HilcrhymeのMC、自身が主宰するレーベル『DRESS RECORDS』のレーベルヘッド、そして、アイウェアブランド『One Blood』のプロデューサーとして、多角的な活動を展開。Hilcrhymeとしてメジャー進出し、メジャーフィールドにもしっかりと爪痕を残し、スターダムに登っていったが、その活動に飽きたらずソロとしての活動を展開。2013年10月に1stシングル「BirthDay/Atonement」、14年11月にはソロとしての1stアルバム『IN PHASE』をリリースし、ソロとしての活躍の幅を広げていく。その後、ソロMCとしてのTOC、及び『DRESS RECORDS』がユニバーサルJとディールを結び、メジャーとして活動していくことを発表し、16年8月にメジャーデビューシングル「過呼吸」を、18年1月にメジャー第1弾アルバム『SHOWCASE』をドロップ。メジャーフィールドでポップスター/ポップグループとしての存在感とアプローチを形にしたHilcrhyme、Bボーイスタンス/ヒップホップ者としての自意識を強く押しだしたソロ。これまでに培われたふたつの動きがどう展開されていくか興味は尽きない。TOC オフィシャルHP

「BEST 15 2014-2017
-Success & Conflict-」Teaser

「Killer Bars」
〜Hilcrhyme TOUR 2023「走れ」〜

「NEW DAY, NEW WORLD」MV

「Lost love song」MV

「YUKIDOKE」MV

「New Era」MV

「FLOWER BLOOM」MV

「涙の種、幸せの花」MV

「恋の炎」MV

interview at 日比谷野外大音楽堂

OKMusic編集部

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