Hilcrhyme

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【Hilcrhyme インタビュー】
Hilcrhymeに関する本当に大きな
ひと区切りが2017年末だった

音の面で新しいHilcrhymeを
作ろうとしていた

『FIVE ZERO ONE』リリース後、2014年9月6日に日本武道館公演がありましたね。あれはどう考えても、まさにサクセスを象徴するもので、間違いなく大きなポイントであったわけで、葛藤がありつつも達成感はもちろんあったでしょう。武道館ワンマンは今どう振り返りますか?

実は武道館の頃にはかなりストレスがなくなっていて、そのあとからはそんなにふたりの葛藤みたいなのはないかな? 武道館のMCで“新潟で始めたルーツ、こうやってサクセスしていった”っていうのを語るパートがあって、“俺はこんなにもイケてるぜ。同じくらいイケてる男と出会ったからこうなっているんだ”みたいなことを言っていて、イチャイチャしてるんですよ。当時の俺は制作とか裏側ではめちゃくちゃダウナーだったけど、表舞台に出るとちゃんと後ろにいる男に対して愛情を持っていたんだなっていうのが、DVDを観返して分かったので良かったなと(笑)。

相方というのはそういうものなんでしょうね。ビジネスパートナーとして本当に嫌だったら一緒にやれないでしょうからね。でね、過去のインタビューから、その武道館公演にまつわる発言を拾ってきたんですが、なかなか興味深いことをおっしゃっています。“動員とかCDのセールスは落ちていないんですけど…かと言って、劇的に上がっているわけでもないし(笑)。なので、そこで恐怖感を覚えた”と。

あははは。それ、何のインタビューですか?

シングル「YUKIDOKE」をリリースした時ですね。ただ、“でも、武道館がやれたんだからすごいってふうに思えるようになったから、それだけ気持ちに余裕が出てきたんでしょうね”と続けています。つまり、恐怖心はあったものの、武道館公演をソールドアウトできたことが自信になったことは間違いないでしょう。

まさに葛藤ですよね。不安になったり、自信をつけたり、矛盾の連続ですね、本当に。まぁ、“後悔がないか?”と訊かれたら、たぶんあるんでしょうね。“もっとこうしとけば良かった”ってのは、小さい部分はあるかな? でも、楽曲作りに関してそれはなくて。強いて言えば、“もっとこうしてあげれば良かった”っていう相方への想いが一番ですね。これは今もあります、正直言うと(苦笑)。

そうですか。話を音源に戻すと、その武道館を終えたあと、具体的に言うとアルバム『REVIVAL』(2015年3月発表のアルバム)。『-Success & Conflict-』に収録されている楽曲では「New Era」「続・押韻見聞録 -未踏-」「FLOWER BLOOM」、「鼓動」ですが、先ほどのインタビューを目にしたので余計にそう感じたのかもしれないですけど、今聴いても精神状態がフラットになったような印象があります。

『FIVE ZERO ONE』を作り終えて、『REVIVAL』でかなりフラットになったと思います。葛藤はほんのちょっとですね。ここでダンサーを起用しての活動も終わったんです。だから、『REVIVAL』のあと、改めてふたりになったって感じかな? そのツアーファイナルでそれまでの体制を終わりにしたから。『SIDE BY SIDE』(2016年12月発表のアルバム)で完全にふたりになった…まぁ、ふたりのHilcrhymeの最後のアルバムになったけど、フラットに戻ったんじゃないかな?

「New Era」のリリックからは若干のイラつきがうかがえなくもないですけど、それでも「続・押韻見聞録 -未踏-」と合わせてすごく自信が漲っている感じはあります。「FLOWER BLOOM」と「鼓動」はとてもいい曲だと思いますし、音楽的にはフラットになったんでしょうね。

「鼓動」はちょっと置いといて、やっぱり葛藤はありましたね。「New Era」もそうだし、「FLOWER BLOOM」も《花は2度咲き誇るだろう》って言っているわけだから。当時の所属事務所の社長に“いつ枯れたんだよ? 枯れてないじゃない?”みたいなこと言われたんですよ(苦笑)。“だから、《2度咲く》なんて表現は本当はいらない”みたいなことを言われたのを覚えていますね。

続くアルバム『SIDE BY SIDE』で先ほどおっしゃられたとおり、完全にフラットになって、さらに自信が表れていることが分かります。具体的に言うと「パラレル・ワールド」「言えない 言えない」「ドレス」「Side By Side」です。この辺からは、真にHilcrhymeらしい楽曲の追及、ファンとの関係、アーティストとしての立ち位置のようなものをより真摯に考えるようになった時期だったことが感じられます。

そうですね。あと、相方が海外へ行ってソングライティングキャンプみたいなものに参加して、向こうのプロデューサーたちから技を習得しきたから、トラックの質が変わって『SIDE BY SIDE』は一気にUS寄りの音になっていますね。

当時のインタビューでも、『SIDE BY SIDE』はUS感のあるオケに日本語ラップとメロディーどう合わせていくかを意識したということをおっしゃっていました。新たに手に入れた武器と今まであるものっていうのを融合させて、さらに新しいHilcrhymeにしていくというテーマがあったんでしょうね。

そこでね、A&Rのスタッフも変わったんです。それまでは年上の人ばっかりだったんですけど、若いA&Rになって、サウンドディレクターも若くて自分と同世代だったから、結構アグレッシブな制作をしていたなと。お金を出してもらって海外へ行ったりとか(笑)、従来の味を大事にしつつ、音の面で新しいHilcrhymeを作ろうとしていたとは思いますね。

『SIDE BY SIDE』で興味深いのはアーティストとしての立ち位置をはっきりさせたところで、“慣れ合うんではなく、お互いに独立した関係でいよう”というスタンスが垣間見える。これは新しかったですね。

辿り着いた結論なんでしょうね。寄り添う…支え合うんじゃなくて、寄り添う。で、走っていくっていう。“そっちはそっちの人生、俺は俺の人生”みたいな。で、“Hilcrhymeで交わればいいじゃん”っていう感覚になったんじゃないかな? それが一番うまくいくと。制作でもプライベートでも。あんまり一緒にすぎるとカップルもシビアになっていくじゃないですか(笑)。それに近いと思う。“ちょっとの距離は必要だよ”みたいな。

ベッタベタにならないというね(笑)。

その距離の取り方が分かんなかったんでしょうね。ずっとふたりでやっていて。だって、一緒に住んだりもしていましたから。近すぎるでしょ? 職場も一緒のBARだったし、四六時中一緒で、何かを決定する時ももちろんふたりで決めていたし。…うん、何かいいですね。今、すごく救われました。ずっと自分は悪者だと思っていたけど、そうでもないんだなと。『SIDE BY SIDE』でそういう結論に至っている。確かにその頃はまったく喧嘩していないんですよ。なおかつ、その『SIDE BY SIDE』を出した2017年には「涙の種、幸せの花」を作って、再ブレイクの兆しが見えたんですね。チャート1位を取れるような曲ができた。たぶん全ての葛藤のあとでお互いに認め合って、いい距離感のまま、お互いにリスペクトし合ってできた曲がそれで、強力なタイアップにも恵まれて、本当に“あっ、これはひさびさにくるわ”っていう兆しが見えた。全てがいい方向に転がり始めた。

そこですよね。そこは今日のインタビューでもっともセンシティブで訊きづらいところではあったんですが(苦笑)。

あははは。

OKMusic編集部

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