【保志総一朗 インタビュー】
ミニアルバムだけど、
ある意味で今の自分の集大成感も出た
『最遊記』（孫悟空役）、『機動戦士ガンダム SEED DESTINY』（キラ・ヤマト役）、『アイドリッシュセブン』（百役）など数々の人気キャラクターの声を担当する保志総一朗が、声優活動30周年を記念してミニアルバム『Restart journey』をリリースした。俊龍や酒井ミキオらクリエイターが保志の30周年に寄せた楽曲について、30年の想いとともに語ってもらった。
ファンの人たちの声は
僕の大きな力になる
30周年、おめでとうございます。このミニアルバムを聴いて、ずっと戦ってきた30年だったのだなと感じました。
ずっと戦ってきたような気はしますね。30年間、がむしゃらに。いきなり最初からバリバリと戦っていたわけではなく、徐々にだったと思いますけど。声優という職業だからこそ、いろんなキャラクターだったり、作品だったり、作品に携わる方だったり、出会いの数が多いですし、アニメ作品やキャラクターを通していろんな人生の疑似体験もたくさんさせていただいて、それはとても不思議な気持ちです。自分が担当してきたキャラクターはある意味で自分の分身なので、そのキャラクターの人生を任されて、物語の中でどういう生き様を見せるかなど、きっとすごいエネルギーが出ちゃっていると思います。ひと口に30年と言えども、キャラクターの人生も生きてきたことを考えると、30年ではとても収まりきらない経験をさせていただいてきたと思いますし。そう考えると“やっぱり戦ってきたな”っていう実感が湧きますね。ひとりの人間の30年とは違った重みも実感して、単純に“すげえな！”って（笑）。
30年を経た今の気持ちを“Restart journey”という言葉で表現されていますが、これは“再出発の旅”という意味でいいのでしょうか？
はい。再出発だけど、“やり直し”という意味ではありません。がむしゃらに戦っていた自分は卒業して、新たなステージに向けて、また違った意味でのスタートというか。もうまったく戦わないわけではないけど、余裕を持って戦うというか、“楽しんで戦う”というステージに向かおうかなと。そういう意味での新たなフェーズの始まりを意味しています。
声優としての30年を旅に例えたわけですが、それは荷物ひとつでいろんな国を旅するようなバックパッカーのような旅だったのでしょうか？
わりとそういう旅だったと思います。行き当たりばったりのところもあって、目的地が決まっていない旅でした。その時々で、そこで出会った人たちと時間をともにする旅でもあったと思うし。ある意味で刹那的な旅の積み重ねではあったけど、そこから受けた刺激など、いろんなものを受け取って、それが財産になって今の自分が作られているイメージです。そういう感じの旅を、ずっと続けてきたなって。でも、ここからは、目的地がないのは変わらないけど、もっと広く大きな意味での旅路が始まります。今まではいろんな不安と戦いながら、どうなるか分からないといった不安をも楽しんできた旅だったわけですけど、ここから先はどうなってもいいようにどっしり構えて、長くゆったりと楽しみたいという気持ちです。そういう意味では、楽しみしか待っていない。かと言って、隠居生活するわけでもなく、声優としては現役バリバリでやっていきますけど。
目的地のない旅ではあるけど、その時々で道しるべとなるのは、きっとファンの存在なのだろうというのも、このミニアルバムを聴いて感じました。
ファンの人たちの声は僕にとって、とても大きな力になります。今回リリースを決めた一番の理由も、応援してくれるファンのみなさんに喜んでもらいたいからなので。CDリリース以外にもイベント開催などいろいろ考えられたわけですけど、みなさんの気持ちを考えた時こういうかたちが一番いいんじゃないかと思ったんです。
今作のクリエイターには保志さんのユニットであるIsla･laのメンバーや酒井ミキオさんなど、お馴染みの方も参加されていますね。
はい。今回は僕とゆかりのある人たちと作ることもコンセプトのひとつでした。今までの僕のことも知っている人たちが、今の僕をイメージして作ったらどういう曲ができるのかと。それにプラスして新たな作家さんとして岡島俊治さんにも作っていただいています。
作家さん方にオファーした際に“僕をイメージして作ってください”と？
基本的には“旅立ち”とか“30周年”といった大きなテーマを伝えて、その上で今の僕をイメージして作ってもらうという感じでした。でも、ミキオさんにはもう少し具体的に“こういう感じ”と伝えていたり、Elements Gardenさんには丸投げで“今まで僕がやったことのない感じにしてほしい”と無茶振りしたりと、作家さんによって多少オーダーの仕方の違いはありました。でも、ほぼ作家さんにお任せしたので、何が出てくるのか分からないという楽しみがありましたね。
