【近藤晃央】ダークファンタジーのほ
うが人間らしい
ドラマ主題歌「あい」が好評を得た近藤晃央が、「テテ」以来となるアニメタイアップのシングル「ブラックナイトタウン」をリリース。闇と光を一枚のシングルで表現した、独自性あふれる作品になった。
取材:榑林史章
「ブラックナイトタウン」はアニメ『NARUTO- ナルト- 疾風伝』のエンディングテーマですが、アニメのための書き下ろしですか?
2年くらい前に書いたもので、歌詞も当時のままほとんどいじってなくて。ライヴではデビュー前からちょくちょくやっているので、知ってる人は知ってるという感じです。
“ブラックナイトタウン”という架空の街について歌っているのですね。
そうです。簡単に言うと、街が主人公という感じです。まず最初に言葉よりも街の絵が頭に浮かんで、それを聴いてくれるみんなにも想像してもらえるようにと言葉を選んでいきました。この曲で描きたかったことは、孤独…《孤独さえも唱う街がある》とか《孤独の杯交わす》という歌詞が出てくるんですけど、孤独というマイナス同士が寄り添えば、開き直ってそれは孤独ではないのではと。孤独という部分で共鳴し合える場所として、街をテーマにしています。
そういうお話を聞いて、映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の世界観を彷彿しました。
ティム・バートン的な。そういうテイストは僕も大好きなので、間接的に影響を受けているところはあると思います。子供の頃からディズニー映画を観て育ってきて、実家にはビデオが150本以上あるんです。ディズニー映画はどれも悪役が際立っているのがポイントで、僕は子供の頃すごく悪役好きだったんですよ。『アラジン』に出てくるジャファーなんかすごく好きで、今でもフィギュアを持ってます。ディズニー以外でも海賊とか博士とか、そういうキャラクターにすごく惹かれますね。
近藤さんが考えるダークファンタジーの魅力って?
ダークファンタジーって、何であれメッセージ性がすごく閉鎖的なものや、闇の中から物語が始まっていて、闇から光に向かっていく姿が多く描かれているんです。いい意味で人間の悪いところが表現されていて、そういうほうがすごく人間的だと思うし、身近に感じるんです。例えば『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』は、ハロウィンが全てと思ってる世界の住人のお話ですが、要は比べるものがなければそれが全てだと思い込んでしまうということ。これは「ブラックナイトタウン」で描いていることとすごく通じているものがありますね。
楽曲のアレンジはどんなふうに作っていったのでしょうか?
まず「ブラックナイトタウン」は、イントロの♪ジャッジャッジャッというのが最初にできて。自分の中で思い描くファンタジーを上手く音にできた!という気持ちでした。アレンジはamazarashiなどを手がけている出羽良彰さんで、最初に入る楽器はチェロだとか、後ろでザックザックと何かを掘ってるような音が入るとか、そういうのは出羽さんのイメージで入れてくれました。ピアノのフレージングなんかは僕が歌って説明したけど、実は世界観についての話はほとんどしなかったんです。でも、出来上がった音を聴いたら、すごくイメージに合ってて。ダークファンタジーをテーマにしてタイトルが“ブラックナイトタウン”ですから、曲を聴くだけでみんな似たようなものを想像するんだな〜って思いました。
そして、カップリングの「わたしはサンタクロース」ですが。クリスマスソングは世の中に数々ありますが、そんな中で自分はどんなクリスマスソングにしようと?
普通のクリスマスソングなら、僕が作る必要はないなと思いました。だから、クリスマスに起こるストーリーというよりも、サンタクロースの視点に立とうと。もともと僕は季節を限定した曲を作ることはほぼないので、もしサンタクロースの視点がアイデアとして浮かばなかったら、この曲も作ってなかったと思います。それで、サンタクロースはプレゼントをくれる人ではなく、届けてくれる人なんだ、送り主が他にいるんだよということを歌っています。世の中にはサンタクロースに預けられない贈り物もたくさんあって…それはサンタクロースに贈り物を預ける勇気がなかった人の存在や、贈り物というかたちにできなかった気持ちもあるかもしれないし、そういう全部を含めて、世の中には贈り物がたくさんあって。サンタクロースは、それを届けている人なんだよって。
そういうサンタクロースの視点を想像するきっかけになった、クリスマスの経験があるのですか?
デビュー前にカフェでアルバイトをしていた時、クリスマスはすごく忙しかったんです。でも、店内の飾り付けを観ながら“きれいだね”って言ってくれているカップルや、“美味しいね”って楽しそうに食事をしてるカップルなんかを観た時、それを自分たちが提供しているんだと思ったらすごく嬉しかったですね。幸せそうな人を見ると、こっちも幸せな気持ちになりますよね。きっとそういう経験かなと。
こういう視点のクリスマスソングは新しいですね。
定番ソングとか望んでいないので(笑)。
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